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THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

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北条真哉

受付についてもう一度試合がしたいと申請した直後。

これまでにない異変が起きた。

「「「「帰ります!!!!」」」」

…と、次々と生徒達が退出の手続きを行っていったからだ。

それはわずか数分の出来事だっただろう。

その数分の間に会場にいたほぼ全ての生徒達が検定会場を逃げ出していった。

そして。

最終的に騒ぎが収まって急激に人が少なくなったころにはすでに検定会場は静寂に包まれていた。

ここまで人が少ない会場は珍しいのではないだろうか?

もちろん逃げ出したくなる気持ちがわからないとは言わない。

誰だって自分がまきこまれるのは嫌だろうからな。

彼らが逃げ出した理由はただ一つ。

試合を観戦していた自分達が次の犠牲になる事態を恐れたこと。

ただそれだけだと思われる。

一時騒然となった受付で再び係員に視線を向けてみた。

「試合はできるのか?」

まだ対戦相手が残っているのかどうかを問いかけてみると、
係員が顔を引きつらせながら名簿を差し出してくれた。

だが、受け取った名簿にはもはや僅か数人の名前しか書かれていないようだ。

「………。」

ゆっくりと会場内を見渡してみる。

さきほどまで100人以上の生徒達がいたにも関わらず、
今は数えられるほどの人数しかいない。

名簿に乗っていない格下の生徒も何人か残っているようだが、
おそらく彼らを足しても10人に満たないだろう。

だが、残った彼等に逃げ出すようなそぶりはない。

むしろこちらからの挑戦を待っているかのようにさえ思える。

そんな彼らの視線を受けながら再び名簿へと視線を戻してみた。

名簿に記されているのは『8人』の名前だ。

119番、秋月美沙子(あきつきみさこ)
116番、吉備順弥(きびじゅんや)
115番、東矢春樹(とうやはるき)
112番、奥野あずみ(おくのあずみ)。
109番、山崎信太(やまざきしんた)
107番、松尾篤(まつおあつし)
104番、宮島京香(みやじまきょうか)
101番、水野園子(みずのそのこ)

どうやら格上の生徒達はほとんど逃げ出さなかったようだな。

さきほどの試合前の名簿一覧とそれほど状況は変わっていないように思える。

とはいえ、このままでは調査が進まない気がする。

相手が抵抗してくれなくては実験が進まないからだ。

ただただ対戦相手を斬るだけの試合ではやる意味がない。

少しでも多くの調査を行うために別の方法を考える必要があるのだが…。

どうするべきだろうか?

思い浮かぶ方法があることはあるものの。

実現できるものなのだろうか?

否定される可能性のほうが高い気はするが、
可能であればやってみるべきだろう。

おそらく無理だとは思うが聞いてみるだけなら問題はないはずだからな。

名簿に記されている8人の名前を見つめながら、
一度、係員に尋ねてみることにした。

「一つ聞きたいんだが、一人一人と戦うのは面倒だから8人全員と戦う事は出来るか?」

こちらが問い掛けた瞬間に係員ははっきりとした不満気な表情を見せた。

「はぁっ!?そんなの無理に決まってるじゃないですか!」

突然の質問に対して驚きの声をあげる係員だが、
そこをもう一度問いかけてみる。

「『出来ない』という決まりはなかったはずだ」

「あ、いや…。その、決まりが有るとか無いとかそういう事ではなくてですね。一応これは個人戦ですので、そういった事は定める必要がない部分でして…」

言いよどむ係員はどう説得するべきか悩んでいるようだ。

そして他の係員達と相談してどう説明しようかと考えている間に別の場所から声が届いた。

「いいんじゃねえか?」

「えっ?」

どう説明するべきか悩んでいた係員達に一人の男子生徒が歩み寄る。

「なっ!?君は…っ!?」

戸惑う係員達の様子を気にせず。

男子生徒は自信たっぷりな態度で話しを進めていく。

「許可なら俺がとる。8対1でやりたいっていってんだ。やらせてみようじゃねえか」

余裕の笑みを浮かべながら係員と話を進める男子生徒だが、
年齢は俺とそう変わらないように見えるな。

ただ身長は明らかに俺よりも上だ。

目測だが2メートルを超えるか超えないか、
その程度の長身があるように思える。

「まあ、とりあえずは特例措置ってことで良いんじゃねえか?」

実際にはそんな特例は存在しないだろう。

だがそれでも笑顔で歩み寄ってきた男子生徒は堂々とした態度で強引に係員の説得を進めていく。

何者なのだろうか?

会場の内外を含め、周囲の女生徒達の視線を集めるほどの色男だ。

だがその顔に似合わず。

男子生徒の体格は魔術師にしては珍しく格闘家と見間違えるほどの筋肉質でもある。

腕の太さだけを見ても俺の倍ほどあるだろう。

単純な腕力なら大人と子供くらいのさがあるかもしれない。

とは言ってもダルマのような体型ではなく、
むしろ引き締まった体つきで運動神経は飛び抜けて良さそうに思える。

…ただ…。

そんな見た目の問題よりも、
一目見てわかる強烈な印象は別格だ。

こちらが驚くほどの魔力の持ち主だからな。

圧倒的なまでの魔力の総量は今の俺の軽く数倍に及ぶだろう。

翔子と比べても大差がないほど魔力がずば抜けている。

ただそれだけで目の前の男子生徒が上位の生徒である事は感じられた。

「まあ、いずれ分かる事だからな。先に自己紹介といこうか」

率先して男子生徒から話しかけてきた。

「この学園の第2位、北条真哉(ほうじょうしんや)だ。ぶっ倒れた翔子に変わって、お前の監視に来たんだが、こそこそ隠れるのは趣味じゃないんでな。やるからには堂々と、それが俺の主義だ。まあ、お前にとっては迷惑な話だとは思うけどな」

ざっくりと説明した北条は俺から視線を逸らして係員との話を進めていく。

「『天城総魔』に関しては『特例』を認める。その通達はしてあるはずだ」

通達?

特例?

俺の知らないところで何らかの動きがあるようだ。

北条の言葉を聞いた直後に係員が即座に試合を承諾していた。

どういう裏事情があるのか知らないが、
俺の希望通りに、
残った生徒全員とまとめて戦う許可が出ることにはなったようだ。

「それでは、試合場Aー1番へ、移動をお願いします」

試合の許可が出たことで北条が微笑んでみせる。

「…と、言う事だ」

翔子に続いて北条真哉。

二人が何の目的で関わってくるのかは不明だが、
問い掛けてみても答えは返って来ないだろう。

今は黙って試合場に向かって歩きだすことにした。
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