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THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

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戦意喪失

そして試合終了後。

試合場を取り囲んでいた生徒達を気にする事もないまま、
足早に受付へと歩みを進めた。

「もう一度試合がしたい」

受付で名簿を受け取って、次の生徒を選ぶ。

格上の生徒が残り少ないせいもあってそれほど選択肢は広くないのだが、
今回も名簿の一番下の生徒を選んでおくことにする。

対戦相手として選んだのは生徒番号121番の手原相太(てはらそうた)だ。

いままで通りに最も強い生徒を選んでもよかったのだが、
今後の戦いに備えてルーンの調整を行う為に数をこなす事を選んだ。

まだまだ情報が足りていないからな。

翔子と日比野を斬った事ですでにルーンの大まかな調整は済んでいるのだが、
それでもまだ完成したと言い切るには少し実験が足りないと感じている。

どういった攻撃でどの程度の効果が発揮できるのかがまだはっきりとしていないからな。

かすり傷程度ならどうなるのか?

あるいは足を斬っただけでも魔力は枯渇するのか?

そして、それ以前に魔力が枯渇しない条件とは何なのか?

それらが判明していない状態だ。

まだまだ完成とは言い切れないだろう。

翔子と日比野。

二人の魔力を奪い取った魔剣だが、
このルーンの本当の実力を計るには数をこなすしかない。

ルーンの限界はどこなのか?

魔術を切り裂くことはできるのか?

出来たとしてもどの程度の物まで斬る事が出来るのか?

それらの疑問を解決するために、
少しでも多くの実戦を行って情報を集める必要がある。

そういった情報を集めるために今後の方針を考えながら歩いているとすぐに試合場にたどりついたのだが、
周囲にいる生徒達がこちらの存在に気付いて集まり出して急速に人だかりが生まれ始めた。

今までにないほどの賑わいだ。

会場内の大多数が集まっているのではないだろうか?

少なくとも会場内のほぼ全ての生徒達が集まっているのではないかと思ってしまうほどの大人数だ。

先ほどの試合を見ていた生徒達が寄り集まったことがきっかけのようだが。

妙な騒ぎに興味を持った他の生徒達までが集合し始めて、
周辺には今までにないほど多くの観戦者達が押し寄せてきている。

おそらく彼らの関心は魔剣にあるのだろう。

試合場周辺において魔剣に関しての話題が囁かれる中で、
少し遅れて到着した手原相太が姿を現した。

「やはり君なのか…」

小さく呟き、ため息を吐いている。

どこかで出会った覚えはないが、
向こうは俺の事を知っているようだ。

だとすると。

推測でしかないが、
おそらくは先ほどの試合の観戦者の一人なのだろう。

すでに魔剣を目にしているせいで弱気な態度が見え隠れしている。

「さっきの試合を考えれば勝てるはずもないし、大人しく降伏するべきかな…」

試合前からすでに戦意を失いつつあるらしい。

これでは戦う意味がない。

全力で抵抗してもらわなければ実験が成立しないからな。

戦う意志の見られない落ち込み気味の手原にひとまず話しかけることにした。

「戦う気がないのなら無理をする必要はない。こちらから試合を放棄しよう」

試合放棄の結果としてこれまで積み重ねてきた無敗記録は失われることになるが、
そんな些細な記録にこだわるつもりはない。

今は試合の記録よりも試合の内容が重要だからな。

「戦う気がないのなら他を探す」

他の生徒でもいいと告げた言葉に少し心が動いたのだろうか?

手原は素直に試合を中断しようと思ったようだが、
周囲がその行動を認めなかった。

「逃げるんじゃねー!!」

「戦えー!!」

周囲の生徒達からの批判が相次いで巻き起こったせいで、
手原は棄権を口に出来ない状況に追い込まれてしまう。

「…くっ。人の気も知らないで勝手なことを」

野次馬の発言に苛立っているようだが、
はっきりと言い返す様子は見えない。

気が弱いのかそれとも状況に流されやすいのかは知らないが、
周囲の生徒達の勢いに流されて手原は試合場に足を進めていった。

「こうなったら、出来る限りはなんとか…」

あまり前向きとは言えない発言をしている手原の言動に対して呆れてしまう。

これでも本当に上位なのだろうか?

そんな疑問さえも感じるが、
手原から感じ取れる魔力そのものは決して見下せるものではない。

実際の実力はそれなりにあるだろう。

それでも周囲の状況に流されて自信を喪失しているようだ。

試合場に足を進めるごとに手原の顔色が恐怖に染まっていく様子がはっきりと見て取れる。

「くっ、うぅ」

言葉にならないうめき声を上げて怯える手原に格上の威厳は感じられない。

これでは戦うだけ無駄だ。

早々に切り上げて次を探すべきだろう。

今回の試合は諦めて次の試合に期待を込めることにしよう。

ひとまず試合場で互いに向かい合う二人。

言葉を交わす事もないまま無言の時が流れていく。

そんな静寂の中で静かに試合場に歩みを進める審判員は、
二人の間に立って互いの顔を順番に眺めている。

冷静に構える俺と怯えて戸惑う手原。

二人の表情を見ただけで、
すでに試合の結果は見えているな。

だがそれでも逃げ出さずにこの場に留まる勇気を見せた事だけは称賛に値するかもしれない。

「試合始めっ!」

今回も試合開始と共に駆け出すことにした。

右手に魔力が集まり、
魔剣がその姿を見せようとしている。

「っ!!!」

抵抗する様子さえ見せないまま驚愕の表情を浮かべる手原は動かない。

恐怖が体を硬直させているのだろう。

戦う意志を見せない手原が何らかの行動に出る前に、
情けをかける事なく一思いに剣を振り切った。

一閃。

横凪に払った魔剣の刃が手原の体を突き抜ける。

「っ!?」

手ごたえは先ほどの試合と同様だが、
今回は物理的にも魔力的にも手原を斬った感覚があった。

もちろん手加減は一切していない。

流れ出る鮮血を視点のズレた瞳で眺める手原は、
最初から最後まで何もできないまま意識を失って倒れる結果になってしまう。

ここで試合は終了だ。

逃げる事も戦う事も出来ないまま。

手原は試合場に倒れ込んだ。

すぐに倒れた手原に駆け寄る審判員だが、
今回も予定通り命に別状はないだろう。

「試合終了!!」

今回も勝利したことで難なく生徒番号121番を獲得した。

その結果として再び騒然となる会場だが、
もちろん気にするつもりは一切ない。

周囲の生徒達に目を向ける事もなく、
試合を終えたことでもう一度受付に向かうことにした。
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