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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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第3回戦、第1試合

《サイド:天城総魔》

ようやく試合が始まるようだな。

「それでは第3回戦、準々決勝を始めたいと思います!!」

随分と待たされた気がするが、
係員の宣言と共に沸き起こる歓声の勢いに乗って進行が進んでいく。

「1試合目は優勝候補であるジェノス魔導学園から美袋翔子選手!対するカリーナ女学園からは文塚乃絵瑠ふみつかのえる選手です!!」

すでに試合場にいる二人に歩み寄る審判は、
二人の気迫を察したのか即座に試合開始を宣言していた。

「試合、始めっ!!!」

試合開始の合図によって、
翔子と乃絵瑠がルーンを構える。

翔子の手には『扇』があり、
乃絵瑠の手には『弓』がある。

以前は二人とも弓の使い手だったようだが、
今の翔子は弓ではなく扇を手にしていることで
乃絵瑠は物珍しそうな視線を翔子に向けている。

「噂では聞いてたけど、それが翔子の新しいルーンなのね」

「ええ、そうよ。これが私の新しい力。機能性(見た目)重視の新ルーン。言っておくけど、以前の私と同じだと思ってるとかなり痛い思いをするわよ?」

「ふ~ん。なら見せてもらうわ。以前と何が違うのかを、ね」

弓を構える乃絵瑠の手元は以前の翔子のルーンと同じく金色の光を放っている。

魔力の質や量を考慮すれば、
翔子のパルティアと同程度の能力があるかもしれない。

だが、乃絵瑠の弓は翔子ほど大きくはないようだ。

1メートルにも満たない長さだからな。

分類するなら短弓とでも呼ぶべきだろうか。

おそらく威力よりも速射性を重視した武器だと思われる。

乃絵瑠の弓は翔子とは違い、
威力よりも速度を重視しているように感じられた。

「手加減はしないわよ!」

宣言する乃絵瑠が翔子に向けて光の矢を放つ。

「ソーラー・レイ!!!」

放たれたのは一筋の光だ。

だが、光の矢は放たれた直後に分散して、
幾筋もの光に分かれて翔子へと襲いかかっていく。

拡散する光の矢そのものは優奈の攻撃に近いだろう。

能力は全くの別物だが、
高速射撃としては上位に位置する攻撃に思える。

並の魔術師なら回避不可能だろうな。

俺や優奈なら回避するまでもないが、
翔子や沙織なら十分に対処できる範囲内か?

「無駄よっ!!」

扇を広げて、ルーンから発する魔術が乃絵瑠の光を遮る。

「ダーク・アウト!!!」

翔子の影から闇が溢れ出して、乃絵瑠の光を遮っていた。

「えぇぇっ?うそぉぉっ?」

無音でぶつかり合う無数の光と影。

互いに一歩も引かずに激突しあう両者だが、
翔子の魔術を見た乃絵瑠の表情には焦りの色が浮かんでいるようだった。

「対極の闇を操ってるの!?」

驚く乃絵瑠が動きを止めてしまった隙に、
翔子は新たな魔術を発動させている。

「操るって言うのはね。こういうことを言うのよっ!グロウヴィル!!!」

魔術が発動すると同時に動き出すのは翔子自身の影だ。

【闇属性】グロウヴィル。

それは沙織が独自に構築した魔術だが、
闇属性に目覚めた翔子は沙織の魔術を発動させることさえも出来るようになっていたようだ。

「今の私の属性は『闇』だから、このくらいのことは出来るのよ!!」

力強く言い放つ翔子の影が乃絵瑠の足元に接近する。

「くっ!!!」

慌てて後退しながらも接近してくる影に向けて光の矢を放つ乃絵瑠だが、
速射性を求めて威力を後回しにした攻撃では動く影を打ち消すことは出来ていなかった。

「しつこいのよっ!!」

接近する影の速度を緩めるのが精一杯のようだな。

その間にも翔子の攻撃は続いていく。

焦りを募らせる乃絵瑠を見つめる翔子が追い撃ちをかけた。

「クエイク!!!」

翔子の魔術が発動した直後に試合場が激しくゆれだす。

グラグラと揺れる試合場。

当然、試合場の周辺も影響を受けて地震が起きてしまう。

どうやら防御結界にも欠点はあるらしい。

魔術そのものによる影響は塞き止められても、
物理的な影響までは押さえ込めないようだ。

「きゃ、あ…っ!?」

体勢を崩して試合場に倒れ込む乃絵瑠が攻撃の手を緩めた瞬間に、
翔子の影が一気に襲い掛かっていく。

「い、いやぁぁぁっ!?」

影に捕われた乃絵瑠が動きを止めてしまった。

すでに弓を構える余裕さえないようだが、
それでも翔子は容赦なく攻め続けるつもりのようだ。

「フレイム・トルネード!!!」

翔子の魔術が発動して、扇から炎が生まれた。

天に向かって激しく渦巻く炎だ。

渦を巻きながら突き進む炎の竜巻は、
影に囚われた乃絵瑠に向かって襲いかかる。

「ち、ちょっとぉ!?」

地震の影響で身動きの取れない乃絵瑠を炎の渦が飲み込んだ。

「い、いやっぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

竜巻に飲み込まれた乃絵瑠の体が空高く上昇していく。

「ああああ……ぁぁ……!!」

影に拘束されたまま炎に飲み込まれた乃絵瑠の悲鳴が不意に途切れた。

どうやら竜巻の頂点にたどり着く前に意識を失ってしまったようだ。

炎の内部の様子は分からないが、
乃絵瑠が抵抗する様子は感じられない。

おそらく炎に飲み込まれた恐怖と竜巻に巻き上げられた回転力で
気絶してしまったのだろう。

魔術が止まって炎が消失したその瞬間に、
乃絵瑠の身体が試合場に向かって落下し始めた。

無抵抗のまま数十メートルの高さから落下する乃絵瑠の身体は
魔術師とは言え強化していない生身の体だからな。

そのまま落ちれば命の保証はないだろう。

乃絵瑠の生死を分かつ数秒の僅かな時間で、
翔子は最後の魔術を放とうとしていた。

「フラワー・パーク!!!」

翔子の扇から生まれるのは無数の魔術の核だ。

それらが乃絵瑠の身体に取り付いた瞬間に『パンッ!!!』と炸裂して、
次々と小さな衝撃波を生み出していく。

風船が割れるような音を響かせながら弾ける色とりどりの魔術の爆発は小さな花火のようにも見える。

続々と炸裂していく魔力の核。

数百回に及ぶ爆発によって乃絵瑠の落下速度が減速し。

試合場に激突する寸前で完全に停止していた。

「これでおっけ~!」

翔子が扇を畳んだ瞬間に、乃絵瑠の身体が試合場に落ちる。

激突を回避して無事に着地した乃絵瑠だが、
意識は失ったままのようだな。

動く気配は一切ない。

完全に戦闘不能に陥っているようだ。

「試合終了!!」

初戦は翔子の圧勝で終わった。

その事実によって、
二人の試合にも決着が着いたようだ。

「これでもう悔いはないわ」

審判の宣言のあとで、翔子は誇らしげに試合場を離れていった。
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