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THE WORLD 作者:SEASONS

4月14日

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2種類のルーン

《サイド:深海優奈》

え~っと…。

こういう時にはどうすればいいのでしょうか?

御堂先輩と向かい合う総魔さんは少し話し掛けにくい雰囲気ですね。

間に入りにくいというか、
邪魔をしてはいけないような、
そんな感じがするんです。

ですが色々と聞きたいことがあるので、
思い切って総魔さんに話し掛けることにしてみました。

「あ、あの…」

「どうした?」

「あ、いえ、その…。新しいルーンなんですけど、あれが研究室で実験していたことなんですか?」

「ああ、そうだ。構呪という特性を最大限に発揮できるルーン。それが第3の剣ジェネシスだ」

私の質問に答えてから、
総魔さんはルーンを発動しました。

光と共に現れる剣。

分類的にはロングソードと言うのでしょうか?

『ジェネシス』は『スペルブレイカー』よりも長くて、
一回り大きくしたような長剣です。

見る角度によってあらゆる色彩を感じさせる不思議な光を放つ刃なのですが、
どこまでも鋭さを追求しているような怖いくらいの力強さを感じさせます。

「以前のルーンとは全く別の物なんですか?」

「スペルブレイカーとの違いか?それは説明するよりも実物を見たほうが早いだろうな」

総魔さんはジェネシスを私に差し出しました。

「えっと、私が持ってもいいんですか?」

「ああ、問題ない」

………。

問題ないのでしょうか?

よくわかりませんが、ジェネシスを受け取ってみます。

そのあとすぐに、総魔さんは別のルーンを発動させました。

光と共に現れるルーンは見覚えのある剣です。

二本目の剣を見たことで、御堂先輩も驚きの声を上げていました。

「スペルブレイカー!?」

「ああ、そうだ」

今度は戸惑う御堂先輩にスペルブレイカーを差し出しています。

「………。」

無言でルーンを受け取る御堂先輩。

私の手には『ジェネシス』があって、
御堂先輩の手には『スペルブレイカー』があります。

総魔さんのルーンを私達が扱うことは出来ませんが、
総魔さんのルーンを預かっていると思うだけで緊張して手が震えそうになりました。

2種類のルーンが私達の目の前にあるんです。

それを見た翔子先輩が総魔さんに問い掛けました。

「これってもしかしてルーンの多重化は可能だったってこと?」

「いや、残念だが理論は完成しなかった。」

多重化?

どういうことでしょうか?

私には何の話かわかりませんが、
驚く御堂先輩と翔子先輩に総魔さんは説明してくれるようです。

「理論上は可能だと思っていたが、どうやらまだ問題があるようだ。」

「問題って何?多重化は出来ないっていうこと?」

「いや、異なる特性毎にルーンが作れるのなら多重化は不可能ではないはずだ。現に今、同時に発動出来ることは証明できた。だが、これではまだ完成とは言えないだろう」

「発動できたのに、まだ完成とは言えないの?」

完成してないと話す総魔さんに、今度は沙織先輩が尋ねていました。

「ああ、まだだ。実際に発動させてみて分かったことがある」

わかったこと?

何でしょうか?

総魔さんの次の言葉に、私達は無言で耳を傾けます。

「ルーンの多重化は可能だ。だが、特性毎の能力の分散化は出来なかった」

「それは、どういうこと?」

「2種類のルーンは作れても個別の能力を持たせることは出来なかったということだ。『形は別物』だが、特性はどちらも『同じ』という結果になってしまった」

「どちらも同じ特性なの?…ということはつまり、ルーンによる武装の理論は不可能ということかしら?」

「『現時点』ではそうだな。2本の剣にそれぞれの役割を与えたところで、単に力を『使い分けている』だけに過ぎない。『本当』の意味で言えばどちらも操作と構呪の特性を持っているからな。そもそも『形を変える』必要さえなかったわけだが、今回はあえて形を変えてみた」

「何か意味があるの?」

今度は翔子先輩が問いかけています。

その質問に答えるために、
総魔さんは『原始の瞳』を取り出しました。

手の平の上で微かに光り輝く水晶玉。

色のない光を放つ水晶玉に視線を向けながら、
総魔さんは翔子先輩の質問に答えるようです。

「形を変えた理由は構呪という特性を完全に使いこなす為だと思えば良い。翔子が弓から扇を選んだように、俺も別の形で表しているにすぎない。【吸収】【操作】【構呪】それらの力が全て統一された時に『真の能力』が目覚めるだろう。指輪の封印を解くと同時に覚醒する特性。全てはその為の準備だと思っている」

真の能力?

それって総魔さんの中で眠っている本当の力ということですよね?

それが何なのか私には分かりませんが、
総魔さんはそれさえもすでに予測して理解しているのでしょうか?

「最終的に覚醒する力が何なのかも、総魔さんは分かってるんですか?」

「ああ、全ての力が示す答えはそれ程難しいことではないからな。すでに予測は立てている。」

もうすでに分かっているようですね。

「答えってなんですか?」

「今はまだ話す段階ではないな」

あう~。

まだ教えていただけないようです。

今までにも似たようなことがありましたが、
おそらく未確定の仮説を説明する気はないということだと思います。

「すごく気になります…。」

「いずれ分かることだ」

最後の能力に関しては伏せたままで、
総魔さんは『原始の瞳』をポケットにしまってしまいました。

はうぅ~。

総魔さんの能力に関しては謎が残ってしまいましたね。

ですがルーンの多重化による武装がまだ出来ないということは分かりました。

それはまだ総魔さんでさえ実現出来ていない理論のようです。

『スペルブレイカー』で魔術を操りながら『ジェネシス』で敵を倒すこと。

それ自体は実現可能でも、
全く逆の扱い方をしても同じ現象が起きるので、
ルーン毎に特性を与えるという理論はまだ完成していないようです。

「ルーンによる武装は不可能と考えるべきかしら?」

問い掛ける沙織先輩に、総魔さんは首を振っていました。

「現段階では判断が難しいな。少なくとも俺の特性である操作と構呪は、どちらも近しい能力を持っているからな。もっと別の明らかな異なる特性を持つ人物がいれば仮説も立てられるとは思うが、現状では実験さえ出来ないとしか言い様がないな」

翔子先輩も御堂先輩にしてもその辺りの判断が出来る程、
異質な特性を持っているわけではないことで調べることさえできないようです。

「う~ん」

総魔さんの話を聞いて考え込む沙織先輩を横目に、
翔子先輩は別の質問を問い掛けていました。

「まあ、難しい話はともかくとして。試合中で見せたルーンの攻撃は一体何だったの?」

ジェリルさんとフェイさんを戦闘不能にさせた総魔さんの攻撃。

その力の秘密を問い掛ける翔子先輩に、
総魔さんは私が持つ『ジェネシス』に視線を向けながら答えました。

「構呪という特性を最大限に発揮して破壊に特化するように追求した一撃だ。全ての終わりである『オメガ』。それは魔術の複合である『アルテマ』とは違って御堂の破壊に近い力になる。」

やっぱり『暴力』という特性の模倣のようですね。

効果そのものは衝撃波を起こすだけの魔術のようですが、
『アルテマ』とは違って速射性を高めて魔力の消費を押さえた魔術だそうです。

「ふ~ん。やっぱりそうなのね~。予想はしてたけど、龍馬の力も総魔は『使いこなせる』のね」

翔子先輩の視線を受けながら、
御堂先輩も総魔さんに話し掛けていました。

「沙織と同様に全ての魔術を使いこなしながら、深海さんの吸収、翔子の融合、僕の暴力までも使いこなして、最後は真哉の突撃でも覚えるつもりかい?」

御堂先輩の問い掛けを聞いた総魔さんは小さく笑っていました。

「必要ならばそうするが、物真似ばかりでは面白くないからな。『俺は俺の力』を求めるつもりだ。御堂、もしもお前が本気で俺を越えようと思うのなら、今ある力の先にあるものが何かを考えることだ」

「力の先?」

戸惑う御堂先輩ですが、
総魔さんはそれ以上何も言いませんでした。
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