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THE WORLD 作者:SEASONS

4月1日

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監視

眼前にそびえ建つのは巨大な校舎だ。

7階建てという高さも荘厳に感じるが各階の規模は文字通り広大だ。

ざっと見た限りでも窓の数が尋常ではないように思える。

上の階に向かうほど小さくなっていくピラミッド構造の校舎なのだが、
1階に見える窓の総数はざっと150以上あるだろう。

各教室に6つあるとして数えても20以上の部屋があることになる。

それほどの横幅を持っていながらも正方形型の校舎であるために奥行に関してもほぼ同等の距離があるはずだ。

実際には廊下や階段などがあるために敷地面積の全てが部屋ではないとしても300以上の部屋数はあるだろう。

2階もほぼ同等の部屋数があるはずで、
少しずつ面積が小さくなっていくとは言え、
3階以降も相当な規模があるように思える。

校舎内の全ての部屋を単純に合計した場合。

1000では数え切れないのかもしれない。

それほど巨大な校舎だからこそ国内最大規模の学園と言われているのだろう。

他の学園のことはあまり詳しく知らないが、
これほど巨大な学園がいくつもあるとは思えない。

それほどの資金力が共和国にあるとは思えないというのが本音ではあるが、
他国の王城にも匹敵する規模の建物が国内の各地に点在するとは考え難いからな。

ここへ来る前から噂では聞いていたものの、
間違いなくここが共和国最大の学園だろう。

周囲を歩き去っていく他の生徒達を気にせずに黙って学園の校舎を見上げてみる。

そんな俺の行動を不思議そうに眺める上級生達が何人かいるようだが他にも同じように校舎を見上げている新入生達が何人かいるからな。

それほどおかしな行動をとっているわけではないだろう。

周りの視線を気にすることなく、
じっくりと校舎を眺めることはできた。

まずはここからだ。

ここから上り詰めようと思う。

今はまだ駆け出しの初心者でしかないが、
いずれは学園の頂点に立つという目的を持って行動するつもりでいる。

最低でもその程度の実力を手に入れなければならない理由があるからだ。

いつか必ず目的を叶えて見せる。

ただそれだけを願い、今まで生きながらえてきた。

全てを失ってからおよそ15年。

学園に入学するための資金を調達するために予定より時間をかけてしまったものの。

それらの苦労など、これからの事を思えば些細な出来事でしかない。

俺の目的は、ただ一つ。

そのたった一つの目的を叶える為にはどうしても強くならなければならない。

不可能を覆せるほどの力を手に入れる必要がある。

そのために俺は共和国を訪れた。

魔術師として成長して強くなる為に。

共和国最大の港町と呼ばれるジェノス魔導学園にやってきた。

そしてついに。

ここに至るまでの苦労の結果として、
今日という日に無事に入学式を終えることができた。

現在は式典の会場を出て一人で学園の敷地内を散策している最中だ。

何よりもまっさきに魔術の勉強を進めたいとは思うものの。

まずは確認からだと考えている。

一人の学生として学園のことを知る必要はあるだろうからな。

何も知らずに、ただ流されているだけでは願いは叶わない。

ここで何を学び、何を得るかを自分自身で考える必要があるだろう。

時間は無限ではない。

学園にとどまれる期間は限られている。

学園が定めている年齢制限という限界が先か手持ちの資金が尽きて学園を放り出されるのが先かは分からないが、
どちらにしても学園にいられる時間は限られている。

俺の場合で言えば、最長で3年だ。

22歳になれば強制的に退学が確定するからな。

そうなる前に卒業したいと思う。

ただ、手持ちの資金では数ヶ月の生活が限界だろう。

どこかで資金を調達する必要性も考えればまともに勉強に費やせる時間はさらに減ってしまうかもしれない。

だからこそ、限り有る時間をできる限り有効に使わなければならないとも思う。

そんなふうに考えながら散策を行っていたのだが、
あてもなく歩き続ける学園内で周囲を見回してみれば、
すれ違う生徒の大半は何故か上級生ばかりのように感じられた。

俺と同じように入学式を終えたばかりの新入生の姿があまり見当たらない気がするからだ。

全くいないわけではないのだが、
その数は決して多くはない。

はっきり言えば少数だ。

今いる校舎の入り口付近ではある程度見かけることができるのだが、
それ以外の場所ではすれ違うことさえほとんどなかった。

はっきりとは言い切れないが、
どうやら学園内を歩き回っている新入生は少ないらしい。

おそらくほとんどの新入生達は真っ先に学園の寮に向かっているのだろう。

自室の確認と荷物の整理は優先すべき事柄の一つだからな。

今後の学園生活のためにも、
入学式で配られた資料の確認もしておくべきだと思う。

もちろん他にもやるべきことは幾つもある。

本来なら俺もそうするべきなのかもしれないものの、
今はまだ行くつもりはない。

それほど手持ちの荷物が多いわけではないので荷物を持ったままで学園内を散策している。

書類の確認はいつでもできるからな。

寮に向かうのは後でいいだろう。

今は校舎の影に隠れて完全には視認できないものの。

東の方角に視線を向けてみれば複数の男子寮があるのはすぐに確認できた。

校舎からはかなりの距離があるようだ。

時間はあるとはいえ、
往復するだけで30分程度はかかる気がする。

目測でしかないが、
それほどの時間を考えればあとで向かう必要のある場所へわざわざ何度も足を運ぶのは時間の無駄のように思えてしまう。

夜になれば必ず部屋に戻ることになるからな。

無理に今から向かう必要はないだろう。

まずは行動方針の効率を考えながら校舎を離れて寮とは関係のない方角へ歩き始めることにする。

もちろん、特に目的があるわけではない。

どこか行きたい場所があるわけでもない。

それでも学園内部の情報を集めておくことは決して無駄にはならないはずだ。

すれ違う生徒達の様子を眺めることで得られる情報もある。

聞こえてくる会話に耳を傾けることで知ることのできる情報もある。

校舎や他の建物の位置関係を気にしつつ行動する。

徐々に行動範囲を拡大していくことで将来的に役立つ日が来るかもしれない。

…来ない可能性もあるが少なくとも単純に学園内で迷子になるという自体は避けられるだろう。

広大すぎる学園内で道に迷わないためという目的も考慮して行動しているからだ。

他者からみれば初心者が学園内で道に迷っているように見えるかもしれないが周りからどう思われようと気にはしない。

まあ、迷子と思われても仕方がないとは思うのだが確実に一人だけは俺が道に迷っているとは思わない人物がいるはずだ。

現在も俺の後を追っているはずの尾行者だけは、
おそらく舌打ちをしたくなる衝動にかられていると思う。

無理に撒こうとは思わないが、
それ相応の苦労はしてもらうつもりでいるからな。

出来るだけ視界の開けた道を選び、
監視者が隠れにくい方向へと進んでいく。

そして時折すれ違う生徒達の隙間を通り抜けながら不意に道を変えて姿を隠してみる。

そんな俺の行動に慌てた尾行者を急速に接近させて相手の姿を確認しようとしてみる。

…と、同時に。

あえて来た道を戻ってこちらからも接近してみたり、
わざと遠目で見える範囲に姿を現して尾行に気づいていない振りをしておいた。

理由は相手の警戒心を弱めるためだ。

尾行に気づいていないと思わせておかないと今後再び監視の目が強化されかねないからな。

一人くらいならどうでもいいと思うが、
あまり数が増えると面倒だ。

だからこそ、ささやかな悪戯じみたことを繰り返して相手を翻弄しているのだが、
しばらくすると不意に監視の目を感じなくなってしまった。

ついにはぐれたのだろうか?

あるいは尾行に失敗してこちらを見失ったのだろうか?

それとも尾行そのものを諦めたのだろうか?

答えはわからないが先程まで感じていた視線は全く感じられなくなった。

理由はともかくとしていないのであれば気にする必要はないだろう。

監視の目がなくなったことで少し気持ちが楽になったのは事実だと思うからな。

いないのであれば気を使う必要もない。

ここからは自由に行動できるだろう。

今のうちにもう少し進んでおこう。

ようやく一人になれたことで、
人目を気にせずに大きなあくびをしながらさらに遠くへ歩みを進めていく。

そうしてのんびりと学園内の散策を続けている途中で、
学園内に幾つかある休憩所らしき場所へとたどり着いた。
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