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THE WORLD 作者:SEASONS

4月14日

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壱之太刀

「それでは試合を行います!!」

掲げた右手を振り下ろしながら、試合開始が宣言されました。

「始めっ!!!」

開始の合図のすぐあとに、
御堂先輩とカーターさんはほぼ同時にルーンを発動していました。

御堂先輩の手にあるのは『黒い剣』です。

先輩のルーンを見るのも今日が初めてなのですが、
ルーンから放たれる雰囲気はどことなく嫌な感じがしてしまいます。

何て言えばいいのでしょうか…。

威圧的な雰囲気というのでしょうか?

ただ手に持っているだけなのに、
重苦しい空気が漂ってくるんです。

総魔さんが扱う虹色の剣は見ていて綺麗だと思えたのですが、
御堂先輩の手にある黒い剣は見ているだけで恐怖を感じてしまいます。

ですがその違いは真逆の力というよりも、
総魔さんが万能型だとすれば御堂先輩は攻撃特化型という感じだからかもしれません。

御堂先輩のルーンは何よりも攻撃力を重視しているように思えます。

だから他の誰よりも威圧感があるんだと思います。

そんな御堂先輩に対するカーターさんの手にあるのは『鞭』ですね。

赤と青の二色の光で彩られる長い長い鞭なのですが、
長さはおそらく5メートルほどでしょうか?

距離があるのではっきりとは分かりませんが、
それくらいはあるような気がします。

普通に考えれば扱いにくい武器だと思うのですが、
ルーンである以上は実際の鞭とは使い勝手が全く違うと思います。

魔力で作られたルーンは自分の意思で自由自在に動くはずなので、
どれほど長くても扱いにくいということはないはずです。

その事実を証明するかのように、
カーターさんは5メートルの鞭を片手で器用に操っていました。

一振りしただけで試合場の床が削り取られるほどの威力のようですね。

当たれば痛いという程度では済まないと思います。

私ならきっと、骨が折れるか弾き飛ばされると思います。

ですので、『遠距離から攻撃出来る』という意味では有利な武器ではないでしょうか?

ただ、逆に言うと接近戦だと戦いにくそうな気もしますね。

もちろんそうならないように戦うでしょうし。

そうなっても対応できる何かを隠し持っているような気はするのですが…。

私ではどう戦えばいいのか全く想像さえできません。

御堂先輩はどうやって戦うのでしょうか?

色々と考えてしまいます。

そのまま静かに試合場を見つめていると、
カーターさんよりも先に御堂先輩が動き出しました。

「全力で行くよ!」

駆け出す御堂先輩は黒い剣をカーターさんに向けています。

迎え討つカーターさんは、
勢いよく鞭を振って遠距離からの攻撃を仕掛けていました。

…ですが。

カーターさんの攻撃は御堂先輩に届かないようですね。

「存在を否定する!」

御堂先輩がカーターさんの鞭を切り裂いていたからです。

先端から1メートルほどの長さで二つに別れた鞭の残骸は
最初から存在していなかったかのように綺麗さっぱり消え去りました。

「なっ…?馬鹿なっ!?」

鞭が破壊されたことを驚くカーターさんですが、
御堂先輩は勢いを緩めずに接近していきます。

そして迷わずに剣を振りました。

「残念だけど、きみの出番はここで終わりだ。壱之太刀いちのたち魔狂(まきょう)!」

鞭を切り落としてから一気に距離を詰めた御堂先輩は、
カーターさんの体に刃を突き立てました。

「ぐがっ、あっ…!?」

体を突き抜ける刃。

舞い散る鮮血。

吹き荒れる魔力。

「ああああああああぁぁぁぁっ!!!!」

御堂先輩の一撃を受けたカーターさんは、
痛みに耐えきれずに大きな声で叫び声をあげていました。

ですがそこで終わりではありません。

突き立てた刃から御堂先輩の能力が発動して、
残存する魔力が暴発しているんです。

吹き荒れる魔力がカーターさん自身を切り刻み、
まるで体が爆発したかのように全身から血が吹き出しています。

この攻撃は…

見たことがあるような気がします。

総魔さんの攻撃とよく似ているように思えたんです。

いえ、同じだったのかもしれません。

魔力を暴走させて相手に重傷を負わせる攻撃としては全く同じだと思います。

それに暴走の威力も同程度のように思えました。

だとすれば今の一撃で全てが終わったはずです。

カーターさんは残存していた全ての魔力を失っているはずだからです。

魔力の暴発によって体中が裂傷を起こしてしまい。

全身から血を流すカーターさんは魔力と一緒に意識も失ったようで、
ゆっくりとその場に倒れ込みました。

「………。」

カーターさんはもう何も言いません。

いえ、言えないのだと思います。

意識を失ってしまったことで、苦痛さえも感じていないようですね。

動かなくなったカーターさんを見つめながらルーンを解除する御堂先輩は、
試合開始から僅か数十秒で勝利してしまいました。

「試合終了!!」

審判員さんの合図と共に試合場に駆け寄るデルベスタのみなさんが、
カーターさんを救助してからすぐに試合場を下りて行きます。

ですがフェイさんだけは試合場に残って、
御堂先輩に話し掛けていました。

「恐ろしい力だな。もしも延長戦となれば俺の相手はやはり御堂か…」

「あー、いや、どうかな?まだ試合に参加していない6人目もいるし、僕には分からないよ」

「ふっ。残りの生徒の実力はどうか知らないが。俺に勝てるのは御堂だけだろう?」

他には誰もいないと信じて自信を持つフェイさんですが、
その指摘は間違っていると思います。

フェイさんに勝てる可能性のある人は御堂先輩の他にもいるからです。

「残念だけどそうでもないよ。僕と同等か、あるいはそれ以上に、僕のあとに控える仲間達のほうが僕より強いかもしれないからね」

御堂先輩の発言は私も同じ意見でした。

フェイさんはまだ何も知らないようですが、
ジェノス魔導学園には御堂先輩が認める最強の魔術師である総魔さんがいます。

そしてさらにもう一人の実力者である翔子先輩もすごく強いです。

沙織先輩や北条先輩にも勝った翔子先輩なら、
例え対戦相手がフェイさんであっても負けるとは思えません。

この次の試合でデルベスタから誰が出てくるのか知りませんが、
総魔さんなら絶対に負けないと思いますし、
延長になれば翔子先輩も試合に参加できます。

そうなれば延長戦の相手がフェイさんだとしても
御堂先輩が出なければいけないという理由はありません。

御堂先輩でも翔子先輩でも総魔さんでもいいんです。

さすがに私では勝てる気がしませんが、
すでに負けている北条先輩は別としても、
私と沙織先輩以外なら誰が出ても大丈夫な気がします。

だから、でしょうか。

フェイさんの指摘を否定した御堂先輩は自信を持って試合場を下りていきました。
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