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THE WORLD 作者:SEASONS

4月14日

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互角

「手加減はしないわよ!ホーリー!!!」

掲げた杖から放たれたのは光系最強の広範囲魔術だが、
発動の仕方が通常とは異なっているように思える。

本来なら上空から地面に向かって降り注ぐはずの光の雷なのだが、
マリアの光は杖の先端から沙織に向かって水平に放たれていた。

轟音と共に『真横』に飛ぶ幾筋もの雷光。

マリアの特性によって変型した光が沙織に襲いかかろうとしているのだが、
沙織も即座に魔術を展開している。

「リフレクション!」

沙織の声と共にルーン本体の五紡星が輝き、
小さな光が防壁となって沙織の周囲を包み込んでいた。

その直後にマリアの放った雷光は全て弾かれてしまい。

何本かの雷光がマリア自身へと跳ね返っている。

「邪魔ね。」

魔術を解除したのだろう。

マリアが杖を振るっただけで、
ホーリーによる全ての雷光が消滅したようだ。

「相変わらず迷惑な魔術を使うわね」

不満を口にしながらも次の魔術に意識を切り替えたマリアのルーンから新たな魔術が発動する。

「ダンシング・フレア!!!」

ルーンから放たれる炎は波打ちながら一直線に沙織へと襲い掛かる。

本来なら目的の方向へと無差別にうごめきながら燃え盛るはずの魔術なのだが、
マリアは炎の動きを自由自在に制御できるようだな。

まるで巨大な蛇のように炎を操ってみせた。

「燃えなさいっ」

炎蛇を操って沙織の体を飲み込もうとしているようだが、
炎を見つめる沙織は微動だにせずに迎撃の魔術を放っている。

「ヴァジュラ!!」

放たれたのは光の塊だ。

炎のように揺らめく光がマリアの炎蛇と激突する。

うねり押し合う二人の魔術。

互いの魔術が衝突して相殺しあう。

その攻防は僅か数秒間だっかが、
両方共に消滅する形で終わりを迎えていた。

つまりは互角だ。

二人の魔術は形こそ違えども、
全くの互角の威力をもっているようだった。

だとすれば二人の試合の結末は魔力の総量と互いの駆け引きによって決まるだろう。

「テスタメント!!!」

マリアの魔術が発動する。

莫大な冷気が生まれて沙織に襲い掛かる。

『絶対零度』の極寒の冷気だ。

全てを凍てつかせる魔術だが、
この魔術もマリアの意思によってその形を変えているようだった。

本来は目標を凍り付かせる魔術なのだが、
冷気は沙織自身ではなくてその周囲を渦巻くように停滞しているからな。

瞬く間に試合場を、そして空気を氷へと変える冷気だ。

沙織を閉じ込めるかのように冷気が壁を作り出して、
沙織を氷の壁の内部へと閉じ込めようとしているように思える。

「まだまだこれからよっ!!!エクスカリバー!!!」

マリアの放つ風の刃が、
沙織を取り囲む氷の壁へと襲い掛かった。

ザクザクと次々と突き刺さる風の刃が、
氷の壁を砕きながら沙織にも襲い掛かる。

一見、無駄な手順にも思えるが、
視界を遮られたうえに多方面から降り注ぐ氷の粒と風の刃の複合攻撃は厄介だ。

冷気を帯びた風の刃は通常よりもさらに威力を増しているはずだからな。

姿の見えない沙織に襲い掛かる冷気と風の刃はまさしく凶器と言えるだろう。

二種の極大魔術による相乗効果を狙った攻撃が止まったあとは、
静寂だけが試合場を支配していた。

「終わったかしら?」

様子を見るマリアに、姿の見えない沙織が答える。

「いいえ。まだよ」

「…でしょうね。」

沙織の声が聞こえた瞬間に氷の壁が砕け散り、内部から沙織が姿を現した。

「悪くないと思うわ。だけど私のシールドを突破するにはまだまだ威力が足りてないみたい」

歩みを進める沙織は杖を掲げて力を発動させようとしている。

杖の頂点で輝く五紡星が力強く光を増していた。

「マスター・オブ・エレメント!!!」

沙織に放てる最強の攻撃魔術だ。

五行の全ての力を解放する一撃によって、
白、黒、赤、青、黄の五色の光がマリアに降り注ぐ。

今度は沙織の攻撃のようだな。

並の防御結界では意味をなさないほど高威力の光に対して、
マリアは杖を掲げて応戦した。

「甘く見られたものね。『元素』を極めているのは私なのよ!純属性の私に対して名乗るべき名前じゃないわっ!!」

杖を掲げて発動させるマリアの魔術が、沙織の魔術とぶつかりあう。

「ガーデン・オブ・エレメント!!!」

数十種類もの魔力の光が放たれて、
あらゆる元素を支配する沙織とマリアの魔術が互いに相殺しあっていく。

幾重にも重なる衝突音が響き渡り、
試合場の中央で押し合う二人の魔術。

互いの魔力を込めた最強の攻撃はどちらも同程度の威力があるらしく、
きっこうした魔術はどちらに傾くこともないまま両者の中心で激突を続けている。

そんな総力戦の中で、
マリアは苦しそうな表情で叫んでいた。

「勝つのは私よっ!!」

「負けたくないのは私も同じです!」

必死の想いに沙織も応える。

気力の続く限り攻撃を継続する沙織は、
マリアと同様に全ての魔力を出し尽くす勢いで魔術を放ち続けているようだ。

試合場に轟く爆発音は20や30程度ではないだろう。

優に100を超える魔術が二人の中心で激突を繰り返している。

それは永遠に続くと思うほどの魔術の攻防だ。

とは言え。

実際に無限の攻撃などは起こりえない。

どんな攻防にも必ず終わりがくるからだ。

魔力という限界が二人に必ず訪れる。

それだけは誰にもどうにもできない。

互いに弱まる魔術の威力は目に見えて勢いを失っていく。

その結果として、二人はほぼ同時に魔術を停止したようだ。

魔力が途絶えて消え去る魔術。

沙織もマリアも魔力が底をついたようで、試合場に座り込んでしまっている。

それでも戦えないわけではないはずだ。

二人の手にはまだルーンが残っているからな。

だが。

二人にはもう戦いを続行する気力が残っていないようだった。

「ったく、ここまで頑張った結果が、引き分けなんて…」

マリアは納得できない表情のまま意識を失って崩れ落ちる。

そして。

「すみません。私も、勝てませんでした…」

魔力を使い果たした沙織も意識を失って倒れ込んでいた。

「「「「「「………。」」」」」」

静まり返る試合場。

審判が二人の意識を確認してから首を左右に振る。

「残念ですが…」

立ち上がる審判が試合終了を宣言した。

「二人共試合続行不可能の為。第2試合は引き分けとします!!」

魔力が底をついた二人の試合結果は『引き分け』だった。
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