挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月14日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

578/4820

時間を稼ぐ方法

「さあ、行くよ、お姉ちゃん!」

「あうう…。」

笑顔で駆け出すピーターとの接近戦を恐れて、
優奈ちゃんは遠距離から光の矢を放ったわ。

風を切り裂きながらピーターに迫る光の矢だけど、
ピーターは横に跳びはねてあっさりと回避してる。

う~ん。

なかなかの運動神経よね。

体が小さい分、的としても狙いにくいし。

動きが早いから狙い打つのは難しそうに見えるわね。

まあ、私なら余裕だけど。

優奈ちゃんの反応速度だと追いつけないでしょうね~。

「危ない、危ない」

焦りを感じさせない言葉を呟きながら、
ピーターは一気に優奈ちゃんへと駆け寄ってく。

「弓だと接近戦は苦手そうだよね」

短剣を振りかざすピーターの動きは速いわ。

真哉のような大ぶりの一撃を狙わずに手数で勝負する感じかも。

こういう攻撃は優奈ちゃんとは相性が悪いでしょうね。

事実として優奈ちゃんは逃げるヒマもないままピーターの攻撃を受けてしまっているわ。

一閃、二閃、三閃。

ピーターの刃が煌く度に、
優奈ちゃんの体が切り裂かれて真っ赤な血が流れ出していくのよ。

「っ!!あぁっ!?」

悲鳴を上げながら後退する優奈ちゃんの両腕がピーターによって切り裂かれていく。

溢れ出る出血が痛々しいけど、
それ以上に気になるのが初めて見る優奈ちゃんの苦痛の表情よ。

魔術を受けて吹き飛んだり転がったりしてかすり傷を負うことはあったけれど、
ここまではっきりと攻撃を受けたのは今回が初めてなんじゃない?

学園での優奈ちゃんの試合はほとんど知らないけれど、
優奈ちゃんが追い込まれる姿は初めて見たわ。

だから私は慌てて総魔に確認することにしたのよ。

「まだ弱点は克服出来てないの!?」

そんな気はしてたけど、
それでも確認してみると総魔は私の疑問を肯定してしまったわ。

「残念だがまだだ。そもそも一晩で解決出来るような問題ではないからな。優奈の欠点は優奈自身が心に抱える問題だ。コンマ一秒でも早く魔力を吸収しようと思う気持ちがなければ決して解決することはない」

「だったらっ!だったら一晩もかけて何をしてたのよ!?」

弱点が克服できないのなら、
優奈ちゃんに教育できることって他にないわよね?

だとしたら一晩中帰ってこなかった理由は何なの?

むしろそっちのほうが気になるんだけど、
どうも総魔は別の方法で優奈ちゃんを鍛えようとしてたみたい。

「吸収に時間がかかるのなら、それまでの時間を稼げば良い。ただそれだけのことだ。そしてそのための技術を優奈には伝えてある。」

時間を稼ぐための技術?

それが何なのかすぐにはわからなかったけれど。

試合場に振り返る私の視線の先で…

優奈ちゃんは『あの魔術』を展開しようとしていたわ。

…って!?

う、うそでしょ?

もしかして、使えちゃうの!?

攻め寄るピーターから逃げ続ける優奈ちゃんは、
手にしている弓でピーターを牽制しながら二つの魔術を発動させてた。

一つは回復魔術ね。

これは驚く程すごい魔術じゃないわ。

私よりマシかな?って思う程度よ。

動きの鈍くなった両手を治療して治そうとする優奈ちゃんは、
ピーターの攻撃を恐れながらも回復魔術の詠唱を終えて負傷した両腕の治療を行っていたわ。

だけど重要なのはその次よ。

次の魔術が至近距離のピーターに襲い掛かるの。

「ホワイト・アウト!!」

『ふわっ…』と空気が流れて、
優奈ちゃんを中心にして霧の結界が発生したのよ。

うそぉぉぉぉぉぉぉっ!?

「優奈ちゃんも使えるようになったのっ!?」

思わず叫んじゃったけど、驚いたのは私だけじゃないみたい。

龍馬も、沙織も、真哉でさえも、
驚きを隠せずに優奈ちゃんをじっと見つめているからよ。

だけど一番驚いたのは私達じゃなくて、きっとピーターでしょうね。

優奈ちゃんに接近していたピーターは霧の結界の影響下にいるからよ。

当然その結果は…地獄よね?

頑張って耐えるとかそういう問題じゃないわ。

結界に触れただけで魔力が急速に奪われていくからよ。

こうなるともう、魔力が尽きる前に逃げるしか方法はないはず。

「うっ?あぁぁぁぁぁぁっ!?」

悲鳴を上げながらも必死に逃げ出したピーターは魔力が尽きる前に脱出できたみたいね。

運がいいと思うわ。

初見で逃げ切れるとは思わなかったからよ。

もしかしたら魔術の効果そのものがまだ低かったのかも?

覚えたての一夜漬けの魔術だし、まだ完成じゃないのかもね。

あるいは予想以上にピーターの魔力が多かった可能性もあるのかな?

どちらが正解なのか私には分からないけれど、
ピーターは全ての魔力を失う前に結界の外へと逃げきったことは事実よ。

「なんで…っ!?」

戸惑うピーターだけど、その気持ちは私達も良く知ってるわ。

総魔と戦った経験のある私達にとって何よりも恐れるべき魔術だからよ。

『魔力の吸収結界』

その内部において行動出来る魔術師なんてそうそういないはず。

龍馬のように力ずくで破壊するか、
真哉のように勢いで突破するか、
どちらにしても自らの魔力を犠牲にして突き進むしかないからよ。

だからピーターの魔力が万全な状況だったなら、
結界を破壊出来る可能性はまだあったかもしれないわね。

だけどすでに魔力の一部を奪われた今のピーターに結界を破壊できる力があるとは思えないわ。

「勝負はついたわね」

「………。」

呟く私の推測を誰も否定しなかったわ。

みんなも同じように考えてるみたい。

だけど優奈ちゃんは霧を維持しようとはせずに、
自らの意思で結界を解除してしまったのよ。

どうかしたのかな?

発動に成功したんだから、
維持ができないということはないと思うんだけど…。

そうも霧の力でピーターを追い詰めるつもりはないようね。

何が起きて何をしようとしているのか理解出来ずに戸惑うピーターから視線を逸らした優奈ちゃんは、
試合を眺めている総魔に話し掛けたわ。

「すみません、総魔さん。私は私の力で勝ちたいです。だから、だからこれでいいですよね?」

自らの意志を示した優奈ちゃんの想いを感じ取ったようで、総魔は楽しそうに微笑んでた。

「ああ、強くなれ。そして俺を越えて見せろ」

総魔の声が優奈ちゃんに届いたかどうかは分からないわ。

だけど優奈ちゃんはしっかりとした意志を込めて頷いてから、
戸惑うピーターに振り返ったのよ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ