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THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

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魔剣

そして翌朝。

目を覚ましてからすぐに時計を確認してみると、
時刻はすでに午前7時を過ぎていた。

自分では気づかなかったが、
少し疲れていたのかもしれない。

いつもより深く眠れた気がする。

そのおかげかどうかはわからないが。

体調はいつもと変わらないはずなのに、
精神的には十分な休息が取れたあとのような心地よさがあった。

とても良い気分だ。

気持ちよく目覚めることができたからな。

これなら試合にも影響はないだろう。

昨日までの疲労は考える必要がないように思える。

体調は万全だ。

この状況なら今後の試合も問題なく戦える。

となれば、ひとまず今日の予定を考えるべきだろう。

天候は良好。

今日も晴れだ。

春の日差しを心地よく感じながら、
何となく窓の傍へと歩み寄ってみる。

窓から見える外の景色はすでに明るい。

特に急ぐこともないままのんびりと寮の周辺を見てみれば、
数多くの男子生徒達が校舎や検定会場に向かっていく姿が見えた。

楽しそうに談笑する生徒達もいれば一人で気合を入れている生徒もいるようだ。

きっと彼らも今日という日にどこかの会場で試合を行っていくのだろう。

もちろん校舎で行われている授業を受けるだけで一日を済ませてしまう生徒もいるとは思うが、
どちらにしても彼らと検定会場で出会うことはおそらくないだろう。

なぜなら感じ取れる魔力の量が遥かに下だからな。

様々な生徒達の姿が見えるものの。

見える範囲内にいる生徒達はどれも格下ばかりのようだ。

…と言っても、もちろん彼らを馬鹿にするつもりはない。

少し前まで俺も彼らと同じ立場だったからな。

二日前まで彼らと同じ場所にいたことを思えば、
あまり偉そうなことは言えないだろう。

それに二日前までは確かに感じていたことがある。

今ここで見下ろしている生徒達にさえ勝てない、と。

確かにそう考えていた時期があった。

それが今では立場が逆転しているのだが。

この結果を成長と呼ぶのかどうかは自分自身でもわからない。

まだまだ満足できるほど強くなったと言い切れる自信がないからな。

上には上がいることを考えれば現状で満足するのは早すぎるだろう。

今はまだ結果に至るための過程の段階でしかない。

もう少し結果を出してから考えるべきことだと思う。

それでも現時点で言えることが一つだけある。

多くの試合を自らの手で勝ち進んできた結果が今の自分だということだ。

運や偶然と呼ぶような結果によって勝ち上がってきたつもりはない。

自らの意思と力によって勝ち上がってきたつもりだからな。

その事実は自信を持って誇るべきだと思う。

だから眼下で行動している生徒達を恐れる理由は何もない。

もちろん、まだ終わったわけではないが、
成績だけを見れば十分に上位と言えるだろう。

ただそれは上位と言えるだけであって、
頂点に上り詰めたわけではない。

今の俺の上にはまだ130人の生徒達がいる。

彼らを乗り越えて学園の頂点に立たない限り戦いは終わらない。

下を見ていても意味はないからな。

上を目指し続けようと思う。

すでに差がついてしまった生徒達を見て優越感に浸ることに価値など感じないし、
そんな無駄な時間を過ごす暇があれば少しでも多くの努力を積み重ねて上を目指すべきだと思う。

その為の一手として。

まずは一度、確認しておくべきだろう。

これから検定会場に向かうつもりではいるものの。

その前に一つだけ確認しておかなければならないことがある。

「体調は万全だ」

一晩休んだことで魔力はそれなりに回復した。

今なら問題なく実験を行えるはずだ。

窓から離れて机の上に用意していた制服に手を伸ばす。

そして一晩着ていた寝間着を脱ぎ捨てる。

数十秒程度で制服に着替え終えたころにはすでに完全に目が覚めていたのだが、
それでも気持ちを集中させる為に何度か深呼吸を繰り返した。

問題ない。

必ず成功する。

自分に言い聞かせるように念じる。

そして両手に魔力を集めてみる。

本来なら失敗した時の事を考えて外で実験すべきなのかもしれない。

周りに迷惑をかけるわけにはいかないからな。

だがすでに心の中では確固とした自信がある。

失敗はしない。

必ず成功する。

そう思えるからこそ、
迷う事なく意識を両手に集中させていく。

ここまでは問題ない。

絶対に上手くいく。

自信はある。

失敗は万に一つもないはずだ。

両手に集まる魔力の光が渦を巻くように動き出す様子を眺めながら大量の魔力を集め続けていると、
やがて魔力が一点に収束し始めた。

あとはこのまま物質化させるだけでいい。

その方法は何となく分かる。

気体を液体に、液体を固体に変質させる要領で魔力を凝縮すればいいはずだ。

両手の間に生まれた光の渦は少しずつ輝きを増しながら密度を高めていき、
着実に結晶化が進んでいく。

ここまでの手順に間違いはないようだ。

目の前の光景をしっかりと眺める。

徐々に形を成していく魔力の動きをただじっと見つめ続ける。


上手くいくと信じて。


必ず成功すると信じて。


両手に集まる魔力を眺め続ける。

あと少し。

今回が初めての実験ということもあって研究所で見た青年のようにすぐに発動する事は出来ずにいるが一度完成さえすればあとは自在に造り出せるようになるだろうと考えている。

その辺りの検証も行う必要はあるが、
まずは完成させることが先決だ。

大量の魔力を消費しながら実験の成功を願い続ける。

その想いが形となる瞬間こそ完成の瞬間になる。

一段と輝きを増していく光の渦が少しずつ変化していく様子を眺めていると、
やがてはっきりとした何かが感じ取れるようになってきた。

ついに完成する瞬間が来たようだ。

武器としての象徴であり、戦うための力。

望んでいた形は、
やはり『剣』だった。

ただし。

完成した剣は研究所にいた青年のような神々しい光を放つ剣ではない。

俺の手に現れたルーンは暗く妖しい光を放つ『魔剣』だ。

おそらくこれが俺の能力なのだろう。

暗い光を纏う魔剣。

両手に現れた魔剣は俺自身の身長ほどもある長剣だ。

分類するなら間違いなくロングソードと呼ぶべきだろう。

両刃の横幅は20センチほどあり、
刀身の厚みも5センチほどある。

これが鉄製の剣であれば軽く20キロはあるだろう。

それほどの重さがあれば、通常、振り回すのは不可能だ。

片手では持ち上げることさえ難しいように思えてしまう。

だが不思議な事にルーンに重さは感じられない。

元が魔力だからだろうか?

物質化しても金属と言えるほどの重量感がないようだ。

せいぜい木の枝を振り回している程度の重さのように思える。

あまりにも軽すぎて、
素振りをするだけで室内の壁にぶつけてしまいそうなほどだからな。

もしかしたら。

だから、なのかもしれない。

ルーンに重量がないからこそ、
研究所で見た青年は巨大な大剣を自由自在に振り回せていたのだろう。

鋭い切れ味を見せる物理的な武器でありながらも、
重量が存在しないために余分な体力を消耗しない。

それもルーンの特性の一つのようだ。

片手でも軽々と扱えてしまう武器というのは実践では非常に魅力的な特性だからな。

速度と体力に負担がかからないのは大きな利点といえる。

武器として優秀なのは間違いないだろう。

ただ、魔剣の最大の能力は言うまでもなく吸収だ。

斬った相手から問答無用で魔力を奪い取ることができるという力だ。

実際に試してみない事にはどの程度効果があるのか分からないものの。

もしも想像通りであれば、
斬った相手の魔力を根こそぎ奪い取って一撃で戦闘不能に出来るだろう。

攻撃自体に殺傷能力があることも考えれば、
霧の魔術以上に凶悪な武器と言えるかもしれない。

だとすれば予想以上の完成度だと思う。

自分自身が驚くほど理想通りの魔剣だったからだ。

出来たばかりの魔剣を両手で持ちながら、
しっかりと眺めてみる。

分類するなら間違いなく『闇』に属するだろう。

そう思うものの。

不思議なことに邪悪な雰囲気は感じられない。

どちらかといえば『無』だろうか?

光でも闇でもなく。

その狭間にあるような感覚を感じてしまう。

見た目こそ冷たい光を放っているのだが。

何故か暖かい光さえ感じてしまうからだ。

そんなあやふやな不思議さを感じさせる魔剣を見つめていると、
ただそれだけであっという間に時間が過ぎていく気がした。

初めて感じる感覚なのだが、
もしかすると力に魅入られるというのはこういう感じなのかもしれない。

だとしたら少し気を引き締めるべきだろう。

実験が成功したことには満足して一度だけ大きく息を吐いてみる。

色々と思うことはあるが、
考えることはいつでもできるからな。

まずは一度、冷静になるべきだ。

「これが俺のルーンか。悪くはないな」

それが率直な感想だが、
心の中では十分すぎるほど満足している。

これでようやく揃ったからだ。

求めていた力の全てが揃った。

まだまだ成長の余地はあるとしても、
現時点で考えられる全ての準備が整ったと言っていいだろう。

あとは実践で自らの力を証明するだけでいい。

手にした魔剣を握りしめながら、
語りかけるように口を開く。

「名がいるな。」

この剣の名前だ。

瞳を閉じて心の中でルーンと向き合う。

新たに手にした力は攻撃に特化した武器だ。

付けるべき名はすぐに思い浮かんだ。

いや、正確に言うなら最初から決まっていたのかもしれない。

ルーンが実現できたときに、
おそらくこの名を付けるだろうと思っていたことがある。

他に考えられる名前はなかった。

閉じていた目を開き。

自らの意志で魔剣の名を呼ぶ。

その名前は…。
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