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THE WORLD 作者:SEASONS

4月13日

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努力しないほうがいい

「どうしたの、優奈ちゃん?食べないの?」

「あ、い、いえ、頂きます」

翔子先輩に尋ねられたことで、慌てて手を伸ばしました。

選択肢はあまりありませんので、
まずはパンに干し肉を挟んで食べてみることにします。

本当ならお野菜もほしいのですが、
一通り探してみても何も見つかりませんでした。

冬の間はあったそうなのですが、
今はもう春なので除外されてしまったそうです。

ちょっぴり残念に思いながらも少しだけかじってよく噛んでみたのですが…

予想通り、ほとんど味はありませんね。

ただただ堅いだけのパンです。

干し肉も保存食なので仕方がないのかもしれませんが、
はっきり言えば美味しくはありません。

何もないよりはマシだと思いますが、
好んで食べたいとは思えませんね。

せめて調味料を使うか、
調理して食べやすくするなどの一手間がかけられれば感想も変わってくると思うのですが。

この一食のためだけに調味料を揃えるのは無駄が多い気がしますし、
調理道具を揃えておくというのも余分な荷物になってしまう気がします。

調理をするまではいいとしても、
そのあとの片付けのほうが大変そうですし、
食器の片付けまで考えたら休憩と言う範囲を大きく超えて
昼食のためだけに数時間費やしてしまいそうです。

なので調理ができないのは仕方がありませんし、
余計な手間暇をかけていられないという事情も何となくは理解できます。

ですがそれでも味気ないとは思ってしまいます。

これなら翔子先輩が飽きてしまうのも納得です。

「あの、町を出てから数時間で食事をするのなら、普通のパンでも良いんじゃないですか?」

無理に保存食にこだわらなくても、
ある程度は魔術で何とかなるような気がします。

なので、理事長に聞いてみたのですが、
保存食ではない普通のパンを用意するのは難しいようでした。

「冬の間ならそれでも良いんだけどね。春になると気候が不安定になるでしょ?暖かかったり寒かったり、場合によっては天候が崩れることもあるし。色々と食材に影響が出ちゃうから、なかなか難しいのよ。それに出発自体が早朝でしょ?まともなお店はまだ営業してないし、基本的に準備は前日に整えるから、一晩置いておくことを考えるとどうしても保存食になってしまうのよ」

あぁ~。

なるほど。

言われてみれば確かにそうかもしれません。

学園を出発するのは朝でも、
準備は前日からしておくものです。

実際に私も荷物の準備は前日に済ませておきました。

だから朝市に仕入れに行くのではない限り、
食料に関しては保存食を積んでおくしか方法がありません。

「まあ、でもあれよ。沙織やみんなが食事の準備をしてくれるっていうのなら、次回からはお弁当持参っていう感じにしてもいいわよ」

「それなら良いんですか?」

「まあ、安全にさえ気をつけてもらえるのなら、っていう条件付きだけどね」

ですよね。

せっかくのお弁当でお腹が痛くなって試合に参加できないということになってしまうと、
なんのためのお弁当なのか分からなくなってしまいます。

「だけど無理はしないほうがいいわよ。というか、間違いなく無理があるから、努力しないほうがいいと言うべきかしらね?」

「それはどういう意味ですか?」

「私が説明するよりも、直接見たほうが早いと思うわよ」

説明を後回しにした理事長さんは、こっそり北条先輩を指差しました。

どういうことでしょうか?

北条先輩を見てみます。

そしてすぐに気づきました。

うわ~。

北条先輩の手の届く範囲の食料がものすごい勢いで減っているんです。

私ではどう考えても持ち上げられないほど大きな木箱に収められていたはずの保存食の山が
北条先輩一人の食事で激減しているんです。

その勢いを見たことで、
理事長さんの言いたいことが理解できてしまいました。

「…ということよ。理解できた?」

「は、はい。何となく…」

理事長の言いたいことは分かります。

私や沙織先輩や翔子先輩がどれだけ頑張ってお弁当を用意したとしても、
北条先輩一人のお腹を満足させることさえ難しいということです。

それでも努力しようとするなら、
それはもう徹夜覚悟で用意し続けなければ全く足りないと思います。

「お弁当を用意するのは難しそうですね」

「でしょう?私はもう諦めたわ」

理事長さんも以前は私と同じ考えだったようですね。

ですが、北条先輩の食欲を考慮した結果として質よりも量という結論に達したようでした。

「まあ、北条君一人の問題というわけでもないけどね。そもそもの前提として出発前に調達する時間がないというのが最大の理由よ。」

買い出しに行く時間がないという理由で
保存食を食べる以外に選択肢がないようです。

「そういうことなら仕方がないですね」

ちゃんとした理由があるのなら、ここでわがままは言えません。

というか。

食べさせて頂けるだけで十分です。

不満なんて言えませんよね。

私はそう考えたのですが、
総魔さんだけは最後まで食事を始めようとはしませんでした。
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