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THE WORLD 作者:SEASONS

4月12日

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危機一髪

「くっ…」

頭上から降る土砂を払いながら姿勢を低く構える真哉。

『ズシンッ…ズシンッ…』と向きを変えて僕達に近付く大猪。

ここからが、本番になる。

「一撃で仕留めてやるぜっ!」

大猪が接近する前に、真哉が全力で飛び出した。

「ボルガノン!!」

炎を帯びるラングリッサーの一撃だけど、
真哉に対して突進する大猪の勢いは凄まじい。

まともにぶつかり合えば間違いなく踏み潰されるだろうね。

一気に駆け出す大猪と槍を構える真哉が激突した。

「ぶっとべっ!!」

「グゴオオオオオッ!!!!!」

炎を纏う真哉の一撃が直撃したことで、
真哉の槍が大猪の眉間に突き立てられた。

激しい激突音を響かせながらの衝突だ。

僕なら間違いなく吹き飛ぶ自信がある。

だけど、激突したと思った次の瞬間に。

「ぐあぁぁっ!?」

攻撃を仕掛けたはずの真哉が、
大猪の勢いに負けて後方に吹き飛んでしまっていた。

「真哉っ!?」

単純な力で真哉が押し負けるなんて、全く予想していなかった。

「真哉ぁぁぁぁっ!!」

援護に向かう余裕さえないまま、
洞窟の壁に激突した真哉の体が崩れ落ちていく。

「くそっ!なんて硬さだっ!!」

確かに。

ラングリッサーの刃を受けても突き刺さらないなんて、
そんなことがありえるんだろうか?

いくら大きいとは言え猪だ。

刃が通らないなんて異常すぎる。

「突進のしすぎで額が硬質化してやがるのかもしれねえな」

ああ、そうだね。

僕もそう思うよ。

そうでなければ納得できないからね。

「大丈夫か?真哉」

「俺はいい。それよりも…」

「ああ、分かってる」

今は真哉を心配してる場合じゃない。

危険なのは僕のほうだからだ。

立ち上がろうとする真哉を無視した大猪は、
額を赤く染めながらもそのままの勢いで僕に突進してきていた。

「くっ!」

大猪との距離はホンの数メートルだ。

慌ててルーンを構えてみるけれど。

大猪の勢いは凄まじくて、
とても魔術を詠唱している余裕はなかった。

「ブオオオオオオオオッ!!!」

間近に迫る大猪を止めるために、
ルーンを一直線に振りぬいてみる。

牽制にしかならないと思いはしたけど、
確かな手応えはあったと思う。

だけど、それだけだった。

「グゴオオオッ!!!???」

鼻を切り裂かれただけの大猪は、
突進の勢いを止めることなく僕に体当たりを仕掛けてきたんだ。

「かはっ…!?」

かつてないほどの衝撃が僕を襲う。

口から飛び出す鮮血がはっきりと見えるほどだった。

そして大猪との激突によって、
僕の体もあっさりと吹き飛んでしまったんだ。

「ぐっ!あああっ!!」

激しく壁に激突してから落下する僕の体から、
急速に力が抜けていく。

全身が痺れて全く動けないんだ。

この状況は危険だと思うけれど。

呼吸さえも満足にできない状況だった。

以前も試合場の結界に激突した経験があるけれど。

今回はその程度の比ではなかったと思う。

激突の勢いが全く違うからね。

まともに立ち上がることさえ出来なかった。

それに。

すでにルーンも手放してしまっている。

手を伸ばしてみても届く距離にはない。

魔術を詠唱する時間はないし、
武器も手元にはないんだ。

新たなルーンを作り上げる余裕もない。

その結果として。

身動き一つ取れずに、ただ大猪を眺めることしか出来なかった。

「グオオオオオオッ!!!!」

動けない僕に狙いを定めた大猪が動きだそうとしている。

まずいっ!?

急いで逃げないと!

焦って動けない体で必死に逃げようとしてみるけれど。

体が痺れていうことをきかなかった。

だったらせめて魔術を!

間に合うとは思えないけれど、
それでもやるしかないと思ったんだ。

「ダンシング…」

フレアと言い切る前に、大猪が僕の眼前に迫ってきた。

死…ぬっ!?

迎撃が間に合わないと思った僕の視界の端で…

「横が、がら空きだぜっ!!!」

不意に真哉が動き出した。

真横からの特攻だ。

真哉の一撃は確実に大猪に突き刺さったと思う。

「ブオオオオオッ!!!!??」

僅かに体勢を崩してよろめいた大猪は、
進行方向を変えて、僕の右側の壁へと激突した。

危機一髪。

真哉のおかげで即死はまぬがれたんだ。
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