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THE WORLD 作者:SEASONS

4月3日

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魔術研究所

《サイド:天城総魔》

食堂で翔子と別れてから一時間以上が過ぎたあと。

翔子に教わって地図で示された『研究所』へとたどり着いた。

「ここが魔術研究所か」

建物の入口に大きく魔術研究所と書かれているから間違いはないだろう。

学園の敷地内で北部に位置する研究所なのだが、
地図を見た限りこの近辺に他の施設は一切記されていない。

大規模な実験農場や魔術訓練用の試射場等の広大な敷地が確保されているようだが建築物と呼べるものは一切ないようだ。

学園の北部は基本的に研究所だけなのだろう。

どういう理由で各施設が建てられているのかは知らないが、
学園の北部は研究所が、
学園の東部は男子寮が、
学園の西部には女子寮が、
学園の南部には正門や催事場がある。

そして中央に巨大な校舎が存在し、
校舎を取り囲むように12の検定会場が建てられている。

実際の配列は異なるものの。

時計の文字盤のように並ぶ第1から第12までの検定会場は最初からそうなるように計算されて建てられているのだろう。

そんなふうに各施設が学園の各所に存在するのだが、
各施設間の距離が大きく離れているために何処へ行くにしても相応の時間がかかってしまう。

それでも研究所から最も近い施設を見つけるとすれば、
丁度校舎と研究所の中間付近に位置する最後の第1検定試験会場が最も近い施設と言えるかもしれない。

明日には行くことになる場所だな。

最後の検定会場である第1検定試験会場には生徒番号1番から99番までの生徒が集まっているらしい。

すでに面識のある学園4位の翔子はもちろん。

まだ見ぬ3位以上の生徒達。

さらにはその先にいる第1位の生徒。

それら全てを乗り越えなければ学園の頂点に立つことはできないということになる。

まずはその前の情報収集としてここへ来たわけだが、
思っていた以上に距離が離れていたために中央の校舎からここへたどり着くまでに軽く30分はかかったと思う。

そのせいで予定としていた1時間を大きく過ぎてしまっているだろう。

予定より遅れたものの。

正確な時間が指定されているわけではないからな。

特に時間を気にする必要はないだろう。

改めて研究所の外観を眺めてみる。

見渡すかぎりの真っ白な壁。

汚れ一つ見えない壁には窓すら一つもない。

換気用の空気口が幾つかあるのは分かるのだが、
屋根の上に煙突があるのが見える以外に特徴になりそうなものは一切なかった。

完全に外部と切り離されている感じがする。

おそらく研究の内容が漏洩しないための対策でもあるだろう。

そして外部からの侵入を防止するという意味もあるはずだ。

あるいはそれ以上に内部で起きた何らかの問題を隠蔽するという意味でも窓という利便性よりも単純な強度を重視しているのかもしれない。

そして建物自体も検定会場に比べると半分ほどの大きさしかないように思える。

それでも一般の民家と比べれば数倍の大きさがあるのだが、
窓がない為に何階建てなのかすら分からない造りだ。

結果的に見た目だけで言えば好んで入りたいと思える建物ではないだろう。

内部に関してはまだわからないが用もなく入りたいとは思えない場所だ。

どういう目論見があって構造が考えられているのかは実際に確認してみない限りわからないが、
研究所の内部でどんな実験が行われているのかも今はそれほど興味がない。

現時点での目的はひとつだけだ。

ルーンに関して情報が集められればそれでいい。

他の内容に中途半端に関与するつもりはないからな。

研究所そのものはどうでもいい。

余計なことは気にせずに堂々と入口に向かうことにする。

研究所の扉を開いて薄暗い内部を覗き込んでみると幾つものランプの明かりが建物の内部を照らしているのが見えた。

それでも薄暗いというのが素直な感想か。

窓がないために陽の光が全て遮られているからな。

空調自体は何らかの方法によって整備されているようだが。

研究所の内部はまるで夜のように暗く、
寒気を感じそうなほど静寂に満たされている。

まるで廃墟だな。

きちんと整備されて清掃もされているので決して不快感はないものの。

静かすぎる内部は人の気配がほとんど感じられない。

それでも薄暗い研究所の内部に歩みを進めて受付らしき場所へ向かってみると研究所の職員と思われる人物が話しかけてきた。

「何かご用ですか?」

「ああ、もちろん用があるからここに来た。」

「それはそうでしょうけど、ここは研究所です。基本的に職員を除く部外者の立ち入りは固く禁じられていますので、学園の生徒といえども許可がない限りはこの先へお通しすることができません」

研究所の内部へ進むためには何らかの許可が必要だと言われてしまった。

どうやら自由に出入りできるわけではないようだ。

さて、どうするかだな。

どう答えるべきだろうか?

一瞬だけ悩んだものの。

ひとまず翔子を信じて話を進めてみることにする。

「許可なら出ているはずだ」

具体的にどういう内容の許可なのかは聞かれても答えようがないのだが、
翔子がちゃんと手配していればすでに話は通っているはずだ。

その確認を取ってみようとしたのだが詳しい話を聞く前に職員が小さく頷いた。

「なるほど。先ほど上司から学生が一人でくるはずだと聞いていましたが、あなたのことですか。一応、念の為にお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「天城総魔だ」

「ああ、やはりあなたの事ですか。でしたら通行許可が出ています。目的は『ルーン研究所』ですね?そちらの研究所へは、ここを真っ直ぐ行った先にある下り階段から行けます。ちゃんと道案内が貼られていますので迷うことはないでしょう」

「そうか、それなら大丈夫だな」

「ええ、そうですね。ただ、万が一にも道に迷った場合は無理に周辺の研究室に尋ねるのではなく、こちらへ戻ってきてください。通路の矢印に沿って進めば必ずここへ戻ってこられますので」

「ああ、わかった。」

「はい。それではお通りください」

職員は受付のすぐ横にある扉を開いてから、
もといた場所へと戻って本来の業務であろう事務作業を再開し始める。

その様子を少しだけ見ていたものの。

職員は自分の仕事に没頭しているようで話しかけられるような雰囲気ではなかった。

無意味に邪魔はしないほうがいいだろう。

まだこの研究所について幾つか聞きたい事があったものの。

話し掛けられる雰囲気ではないので質問を諦めて扉の奥へと視線を向けることにした。

研究所の奥はさらに暗い。

入口よりもさらに薄暗い通路が遠くまで続いているようだ。

道幅自体はそこそこ広いのだが、
明かりが少ないせいで遠近感が狂ってしまって奥行がかなり分かりにくく感じる。

もう少し明るくすることはできると思うのだが、そのつもりはないらしい。

わざと暗さを演出しているとしか思えない通路のせいで、
扉の向こう側はもうはっきりとは見えないくらいだからな。

それでもただまっすぐに奥へと視線を向けてみれば、
通路の突き当りの辺りに階段のような形が見える気がした。

おそらく、あの階段を降りろということだろう。

途中にいくつもの扉はあるが、
部外者が勝手に中を覗き込むわけにはいかない。

少なくともそれはしてはいけないことだとすでに言われているからな。

たとえ道に迷っても研究室の中を覗くなと言われているために中の様子を知る事は出来ない。

そもそも興味もないけどな。

この研究所がどういった研究を行っているのか?

現時点では何もかも不明だが、
今はルーンについての情報さえもらえればそれでいい。

無理に中を覗き込もうとは思わない。

ひとまず、このままここにいても仕方がないな。

ここで立ち止まっていてもどうしようもない。

今は先に進むべきだと判断して、
職員に言われた通りに地下へと続くはずの階段に向かって歩きだす。

ただ真っ直ぐに受付から伸びる通路を歩いて行く。

まあ、薄暗いとは言え迷うことはないだろう。

窓のない研究所は薄暗くて点在するランプの明かりだけが通路を照らしているのだが直進するだけなので道に迷う心配はない。

ただただ真っ直ぐに進んで通路の奥にあるはずの階段へと向かうだけだ。

その間に通り過ぎていく通路の左右にある各扉には部屋毎の部署名が書かれているようだ。

蔵書室。
資料室。
実験室A。
実験室B。
実験室C。

化学室。
器材置場。
測量室。
会議室1。
会議室2。

…等々…。

見える範囲内だけでも数が多く、他にも幾つもの部屋がある。

時折ある通路の分岐毎にも左右に通路が伸びていて通路の各所に他の扉も見えたのだが、
薄暗い通路では離れた場所の部署名までは見る事が出来ない。

それでも各部屋の前を通る度に魔術音や話し声などが微かに漏れ聞こえていたので
無人ではなくてちゃんと職員がいるようだ。

それにしても。

建物の規模に反して人の気配が少ない気がするな。

仮にも検定会場の半分程度の規模はあるはずだ。

研究所が何階建てなのか見た目では分からないとは言え、
各階毎に最低でも100名程度の職員がいてもおかしくはないだろう。

それなのに見える範囲内において職員らしき人物の姿がほとんど見られない。

階段までの真っ直ぐな道程。

その途中で何人かの職員には出会ったのだがただそれだけだ。

とても数多くの職員が働いている研究所とは思えない。

何か理由があるのだろうか?

あるいは職員専用通路があるのだろうか?

それらの疑問を尋ねるようとしてもすれ違う職員達はこちらに視線を向けはするものの。

係わり合うつもりはないらしく無言のままで去って行く。

あまり歓迎されていないようだ。

無理に歓迎してもらいたいわけではないが、
あからさまに避けられるとなるとあまりいい気はしないな。

まあ、人のことを言えた立場ではないがな。

無愛想というならそれは自分も同じだ。

普段、翔子に接する態度と俺に対する職員の態度はそれほど変わらない。

そう思えたことで職員の対応を気にする事はやめて一直線に階段を目指すことにした。



…そして…。



受付から歩き始めて数分が過ぎた後に、
ようやく地下への階段にたどり着いた。

さすがに距離があったな。

振り返って見ても受付へ戻る扉は遥か後方にあるためにはっきりとは視認できない。

とは言え、振り返る必要はないな。

今は戻る必要がないからだ。

ただ黙々と階段を降りるしかない。

前だけを見る。

足早に歩みを進めて下り階段を一歩一歩進んでいく。

ただそれだけの行動のはずだったのだが、
降り始めてからすぐに異常に気づいた。

どこまで続いているのだろうか?ということだ。

螺旋階段や『コの字』型の階段ではなく、
斜め下に向かって一直線に伸びる下り階段は終着点が全く見えない。

通常考えうる階段の段差というものを遥かに上回る段差が続いているようだ。

詳細は不明だが、100や200ではないだろう。

どこまでも、どこまでも続く段差だ。

最初こそ数えながら進んでいたのだが、
100段を越える頃にはもう数える気さえ失しなっていた。

一体、どこまで潜らせるつもりなのだろうか?

10段も降りれば軽く1メートルは地下に進んでいることになる。

その数十倍の段差を降りたとなれば、
それはもう地下数メートルなどと言えるほど生易しい距離ではないだろう。

地底と呼ぶべき深度に進んでいると思われる。

おおよその直感だが地表から50メートル程度は降りてきたのではないだろうか?

最終的に15分ほどかけた頃になって、
ようやく下層区域へとたどり着いた。
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