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THE WORLD 作者:SEASONS

4月11日

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ありえない

校舎の階段を上り続けて、屋上に向かう。

そして会議室の扉を開けて中に入ってみた。

誰もいないようだね。

見渡す限り人の気配は感じられない。

さすがにこの時間はまだ誰もいないようだった。

…と言うか。

誰かいるほうが珍しい時間帯かもしれない。

さすがの僕も6時台にここに来ることはほとんどないし。

普段ならまだ寮を出て食堂に向かっている途中かな?

ああ…。

そういえば朝食がまだだったね。

それ以前に、昨日は夕食を食べることさえできていない。

よくよく考えてみれば、
先に食堂に向かうべきだったかもしれないね。

だけど校舎内の医務室で目覚めたことで、
自然とここに向かっていたんだ。

日々の習慣って、こういう部分で出てしまうんだろうね。

校舎内を移動する=特風会に向かう、という思考が無意識のうちに出てしまったらしい。

「まあ、いいんだけどね」

食事くらいはあとでも出来る。

それよりもせっかく来たんだから、確認だけはしておこうと思う。

昨日の仕事がまだ残っているはずなんだ。

別れ際に翔子に肩代わりしてもらったけれど…。

あの翔子のことだからね。

全部終わらせたとは思えない。

おそらくは出来て半分…。

いや、2割程度で飽きて投げ出すんじゃないかな?

そう思うから、まだ残っているはずだと考えて自分の席に向かってみる。

だけど…。

あれ?

机の上にはあるはずのものが一枚もない。

書類はどこだろう?

首を傾げながら周囲の机も見回してみる。

けれど、どこにも見当たらない。

昨日はあれほど山積みにされていた書類なのに、
今はどこにも存在していなかった。

どういうことだろうか?

もしかして、全部終わったのかな?

いや、そんなはずはない…と思う。

あれだけの書類の山となれば、僕でも相当な時間がかかるからだ。

絶対に翔子一人で片付けられるとは思えない。

絶対に、ね。

「どこか別の場所にあるのかな?」

ここで仕事をするのが嫌になって寮に持って帰った…とは考えにくいだろうね。

翔子は宿題を抱えるのを嫌がる性格だから、
わざわざ自室で作業をするとは思えない。

…と、なると。

どこか別の場所にあるはず。

再び視線を泳がせて、会議室の中をぐるっと見回してみる。

すると。

部屋の奥にある書類棚の上段の『整理済みの書類』を保管する棚に、
数百枚の書類が山積みにされているのが見えた。

あの場所に昨日は書類なんてなかったはずだ。

少なくとも、僕が置いた覚えはない。

だから僕がいない間に誰かが書類を置いたんだと思う。

もしかして、あれかな?

他にそれらしき物がないことで、奥の棚へと歩み寄ってみる。

そして適当に書類を取り出して内容を確認してみる。

「これは、やっぱり…」

見覚えのある書類が束ねられていたんだ。

間違いない。

ここにある書類は全て、昨日、僕が翔子に依頼した物だ。

「…と言うことは、全部、終わってるのか?」

もう一度、書類をめくって他の内容も確認してみる。

ペラペラと書類をめくる音だけが、会議室に静かに響いてるね。

それでも手を止めずに幾つかの書類を適当に選んで中を確認してみた。

その結果。

どの書類を手にとってみても、完璧に仕上げられているようだった。

「これを…翔子が?」

ありえないと思う。

勉強嫌いの翔子が仕事を終えるなんて考えられないからだ。

だけど何度確認しても中断した雰囲気は感じられない。

何一つとして未処理の書類が存在しないんだ。

ここにある書類は全部終わっているようだった。

「本当に…?」

その事実に関してものすごく疑問を感じてしまったんだけど…。

ん?

幾つかの書類を見ている途中で答えがわかってしまった。

翔子の文字とは別に、筆跡の違うもう一人の人物の文字があったからだ。

この筆跡には見覚えがある。

見間違えることはまずないだろうね。

おそらくこの筆跡は沙織のはずだ。

「だとすると、沙織も手伝ってくれたのかな?」

もしもそうだとすれば全ての書類が片付いている理由が納得できる。

翔子だけでは無理だけれど、
沙織がいたのなら何の疑問も感じないからだ。

「二人で頑張ってくれたんだね」

全ての書類が片付けられていることに感謝したいと思う。

だけど感謝の気持ちと同時に、
翔子と沙織の二人に仕事を押し付けてしまったことに対して、
少なからず申し訳ない気持ちにもなってしまうね。

今度、ご飯でも奢ってあげた方がいいかな?

そんなことを考えながら、
書類を棚に戻して自分の席に向かってみる。

ひとまず現時点でやるべき仕事は何もないようだ。

とは言え。

しばらくすれば『今日』の仕事が届くはず。

「今のうちに着替えてこようかな?」

次の仕事が来る前に、一度寮に帰ることにした。
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