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THE WORLD 作者:SEASONS

4月3日

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アルテマ

《サイド:天城総魔》

「ダンシング・フレア!」

大きくうねりながら激しく燃え上がる膨大な炎を放つ。

その強大な炎に直面して、
美弥子ははっきりとした恐怖を感じたようだ。

「むっ、無理ぃっ!?いやああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

立て続けに放たれた魔術によって、
美弥子はわずか一分と持たずに力尽きて倒れてしまった。

その瞬間に、試合は終わった。

「試合終了!勝者、天城総魔!」

審判員の宣言によって俺の勝利が確定した。

「まずはこの程度だな」

順調に試合を終えたことで、
妙に黙り込んでしまった翔子と共に再び受付に向かうことになった。






そして先ほどの申請から10分と立たずに訪れた受付で
次の試合の申請を行うことにする。

「もう一度名簿を見せてもらいたい」

連戦を行う俺の言葉を聞いても、
受付の男性は何も言わずに素直に名簿を差し出してくれた。

「こちらになります」

受け取った名簿に視線を向けるが、
今回見るべきは下ではなく上だ。

「次は手加減の必要がないな」

すでに実験の第一段階は終了している。

「この生徒でいい」

指名した生徒を確認した係員はわずかに眉をひそめたが、
再び翔子に睨まれるのを面倒だと思っているのだろう。

しぶしぶといった表情を浮かべながらも淡々と手続きを進めていく。

「それではCー2の試合場へどうぞ」

こちらを追い払うかのような態度で指示をだす係員だが、
その程度の対応を一々気にするつもりはない。

言われたまま、次の試合場へと向かって歩きだす。

その移動の間。

一言もしゃべらない翔子に対して少なからず疑問を感じたものの。

これはこれで静かでいいと思ったために、
気にかける事もないままさっさと次の試合に向かう事にした。






そして試合場Cー2。

俺と翔子が試合場にたどり着くと、
すでに対戦相手の少年が試合場で待ちかまえていた。

生徒番号131番の立野久雄たてのひさおだ。

彼も先程の対戦相手と同じように、
他の会場での俺の噂を知らないようだ。

だが、マジック・ドレインの噂とは別に先程の試合によって新たな噂が流れているらしい。

俺に視線を向けている周りの生徒達からは圧縮魔術の使い手であると囁きあっている声が聞こえてくる。

それも間違いではないのだが会場を進めるたびに噂話が変わっていくことに呆れそうになる。

とはいえ。

間違っているわけではないので無理に訂正する気にもなれない。

好きにすればいいと思うだけだ。

所詮、噂は噂でしかないからな。

俺の本来の実力は吸収だ。

圧縮魔術の技術は追加要素でしかない。

それでも先ほどの試合では圧縮魔術の精密な情報を得る為に本来の力を使用せずにあえて圧縮魔術のみで戦った。

その結果として先程の試合ではほぼ予想通りの効果と想定内の誤差が確認できている。

そしてすでに誤差の修正も終えている。

これにより二度の圧縮魔術の実験で新理論の構築は完了した。

あとは今回のこの試合で翼の理論を完成させるつもりでいる。

あとは実証するだけだからな。

頭の中で画いた理論が現実に実現出来るのかどうか?

その最終実験を行うつもりで試合場にやってきたのだが、
何も知らない立野はあくまでも噂を信じて話しかけてきた。

「あなたが圧縮魔術の使い手ですか?」

立野の質問に対して首を横に振ってから答える。

「それも間違いではないが、圧縮魔術が専門というわけではない」

「他にも力があるという事ですね」

こちらの返答に満足したのかどうかは分からないが、
久雄はそれ以上追求するわけでもないまま堂々と試合場に立ってこちらと向き合った。

「あなたが噂以上の実力を持っていると判断して全力で行きます!」

やる気を見せる立野だが俺は対照的に無言のままで試合開始を待つ。

「………。」

会話のない重い空気。

僅かに険悪な雰囲気が出始めたところで審判員が歩み出て試合開始を宣言する。

「今から試合を行います。準備はいいですか?それでは…始めっ!!」

審判員の合図の直後に圧縮魔術を展開した。

『ホワイト・アウト』

そして

『エンジェル・ウイング』

圧縮魔術によって二つの魔術が解放されて、
俺を守るように霧の結界と天使の翼が発動した。

「何だ?」

対峙する立野は何も知らない。

俺の力を何も知らない立野は恐れる事なく魔術を発動させている。

「テスタメントっ!!」

膨大な冷気の塊が俺を目掛けて放たれたが、
霧の結界に触れると同時に音も立てずにあっさりと消え去った。

「なっ、魔術が消えた!?何故だっ!?」

驚きを隠せずにいる立野だが、
対する俺は何も語らないままただじっと静観している。

これから何が起こるのか?

状況の読めない翔子と立野が俺を見つめる中で、
ゆっくりと口を開く。

「5分間だけ待つ、その間は好きなだけ攻撃すればいい」

こちらからは何もしない意思を示した。

そして俺は立野が動くのを待つ事にした。

「………。」

一方的な宣言によって沈黙の時間が生まれてしまったものの。

考えても答えは出ないと判断したのだろう。

立野は次々と魔術を撃ち始める。

「サンダー・ストーム!!」

立野の魔術が発動して、突き出された両手から複数の雷撃が放たれた。

それらは勢いよく渦を巻いて竜巻となり、
強力な雷を帯びた竜巻が立野の目前に生まれて霧に向かって襲い掛かる。

だがそれでも。

立野の魔術は俺には届かずにあっさりと消滅する。

「くっ!ならっ、ボム・クラッシュ!!」

大きな空気の塊が生まれて爆音とともに勢いよく炸裂した。

だが、爆風を生み出しても霧の結界を吹き飛ばすには至らずに
再び立野は沈黙してしまう。

次はどうするべきか考えているのだろう。

内心で頭を抱える立野に宣告してみる。

「もう終わりか?まだ時間はあるが、諦めるのなら、ここまでだ」

「………」

挑発されてもどうすればいいのか悩んでしまった立野は動けない。

思い浮かぶ限りの攻撃を仕掛けてみるものの。

ことごとくが無効化されてしまうからだ。

そして有効な打開策が思い浮かばないまま、
ただただ時間だけが過ぎていき…やがて5分が経過した。

「…立ち止まっていては、何も掴めはしない」

何もできなくなった立野に向けて右手を掲げると、
その行動につられるかのように自然と立野と翔子の視線が俺の右手に集まる。

これから何が始まるのか?

周囲にいる生徒達も異様な雰囲気にのまれて俺の動きに注目しているようだ。

翔子を含む観客達が様子を見守る中。

次の俺の行動に誰もが驚く事になる。

「破壊魔術『アルテマ』!!」

魔術名を宣言した瞬間。

検定会場から全ての音が消えた。

…いや…。

正確にはかき消されたというべきだろうか。

ほんの一瞬の間に放たれる十数種もの魔術によって発せられた複雑な爆音が人の聴覚の限界を超えたからだ。

単独では決して実行できるはずのない破壊の嵐によって認識できないほどの爆音が会場中に響き渡り、
全ての者達は音が聞こえなくなってしまった。

「………。」

訪れた一瞬の静寂。

その場で目撃していたはずの生徒達でさえ状況を理解できなかっただろう。

もちろん翔子ですら理解出来なかったはずだ。

直接その体で経験したはずの立野でさえも何が起きたのかわからなかったかもしれない。

痛みを感じるよりも先に意識を失ってしまい。

何がおきたのか知ることが出来なかったと思う。

もちろん、間近に立っていた審判員でさえも驚きを隠せずに呆然としているようだ。

そんな不可解な状況の中でただ一人。

俺だけが魔術の結果を見て満足気な笑みを浮かべている。

「…終わりだな?」

審判員に問い掛けるが、
いまだに混乱状態にある審判員は無言のままコクコクとうなずくだけで精一杯のようだ。

だがそれでも俺の勝利に間違いはない。

生徒番号131番、獲得。
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