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THE WORLD 作者:SEASONS

4月10日

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まだマシ

「ごめんね。治療中に邪魔して悪いんだけど、きみが鎌田俊雄かまたとしお君だね?」

「ああ?何だぁ?」

機嫌悪そうに振り返る鎌田君だったけど、
僕の隣にいる真哉を見て一瞬で表情を変化させていた。

「なっ!何の用だっ!?」

怯えた様子の鎌田君は僕達を警戒しているようだね。

その理由はまあ…真哉が冷たい視線を向けているからかな。

だけどね。

ひとまず僕は冷静に鎌田君に話しかけようと思ってる。

「先に言っておくけれど、僕達は風紀委員だ」

最初に立場を表明してから、話を続けることにした。

「今日のきみの行動に関して幾つか質問があるんだ。それと一応、先に言っておくけれど、きみに拒否権はないよ。残念だけど質問に答えない場合は最低でも退学処分になるし、返答次第ではそれ以上も有り得るからよく考えて答えて欲しい」

威圧感を込めて宣告してから、彼に質問を始めることにする。

「現在、きみには二つの罪状が検討されているわけだけど、一つ目は暴行罪だ。嫌がる女性に一方的に手を挙げるのは良くないと思うんだけど、何か反論はあるかい?」

「………。」

問い掛けてはみたものの、鎌田君は答えることなく沈黙している。

反論できないというよりは、
答えるつもりがないという感じだね。

「うーん。沈黙は肯定と受け取るけど、異論はないかな?」

「………。」

再び尋ねてみたけれど。

鎌田君は怯えた表情のままで沈黙を続けてる。

どうあっても答えるつもりはないのかもしれないね。

「次の罪状だけど、これは公務執行妨害だね。真哉の警告を無視して暴れるのは良くないな。これは真哉が風紀委員だと知っていたかどうかに関わらず、きみの行いは目に余るものがあるからね」

「………。」

僕の質問に一言も答えない鎌田君だけど。

怯えた表情を浮かべながらも、
僕達を睨みつける彼の瞳は怒りに満ちているように思える。

おそらく、僕の問いかけに対して不服しか感じていないのかもしれない。

「さて、と。以上を踏まえた上で僕達風紀委員としては、きみに何らかの処分を下さなければいけないわけなんだけど…」

「ちっ!ふざけるなっ!!」

ついに鎌田君が怒り始めた。

「どう見ても被害者は俺の方だろ!?風紀委員だぁ!?だから何だってんだ!?暴力沙汰はお前達の方だろうがっ!!」

はあ…。

困ったね。

本気で言ってるんだろうか?

そもそも彼が起こした問題のはずなのに、
自分がしたことを覚えてないんだろうか?

「無抵抗な女子生徒を殴ったことは事実だよね?」

「どこに証拠があるってんだ!?」

うわ~。

そうくるか…。

まるで子供の喧嘩だね。

だけど証拠があるとかないとか、
そんなことで言い争うつもりはないよ。

現行犯だからね。

「食堂付近に集まっていた多くの生徒達が目撃していることだから、つまらない言い訳は考えないほうがいいよ?」

「はっ!つまらない言いがかりはお前らのほうだろうがっ」

う~ん。

どうあっても反省する気がないようだね。

「もう良いんじゃねえか?」

吠える鎌田君の言葉が気に入らなかったのかな?

真哉は強引に彼の制服につかみ掛かった。

そして力を込めて締め上げる。

「ぐ…っ!?」

襟を締め上げられたことで苦しむ鎌田君だけど。

助けてあげようとは思わないよ。

これは自業自得だからね。

例え試合に敗れたことが悔しかったとしても、
それは試合で汚名を返上すればいいだけであって、
悠理を追い掛け回して傷つけていい理由にはならないんだ。

だからこそ真哉を止めようとは思わない。

今は話を続けることにする。

「もう一度言っておこうか?きみに拒否権はないし、きみの言い分は認められない。」

そもそも鎌田君が起こした問題だからね。

僕達がここに来たのは鎌田君の反省を促すためであって、
鎌田君の意見を聞きに来たわけじゃないんだ。

「だから話し合いが成立するとは思わないほうがいいよ?」

それにね。

こういう状況で言うのもどうかと思うけれど。

「きみが出会ったのが僕達でまだ良かった方だしね」

もしも翔子や彼に出会っていたなら。

今頃、鎌田君は歩くことさえ出来なかっただろうからね。

もしも翔子があの現場にいたら?

きっと彼はすでに意識不明の重傷を負って集中治療を受けていたはずだ。

あるいはもしも彼があの現場にいたら?

きっと彼は僕達が仲裁しても攻撃の手を止めようとはしないんじゃないかな。

生かさず殺さず。

鎌田君を地獄の底に突き落としていたんじゃないかな?

「あの場にいたのが僕達だから、きみはまだこの程度で済んでいるんだ」

「はあ?ふざけんなっ!!脅しのつもりかっ!?」

「いや、そういう意味じゃない。」

ただ、真実を告げているだけだからね。

鎌田君がどう思うかは関係ないんだ。

「きみは今。この学園で最も敵に回してはいけない人物を相手にしようとしているんだよ。だから僕達は警告に来たんだ」

「警告だとっ!?この状況でかっ!!」

首を締め上げる真哉をにらみつけている鎌田君からすれば
確かに話し合っているようには見えないかもしれないね。

だけどそれでも、僕は真哉を止めるつもりはないよ。

まだその方がマシだと思うからね。

優奈ちゃんを殴ったなんて、
もしも彼が知ったら間違いなくこの程度では済まないと思う。

それこそ、彼以外の誰にも治療できないくらいの重傷を負って、
死にたくても死ねない苦しみを一生涯味わうことになるんじゃないかな?

あまり考えたくはないけど、彼ならそういうこともできるはずだ。

「とりあえず話は終わったわけだけど、きみに聞きたいことはただ一つ。二度と彼女達に近付かないと約束すること。ただ、それだけだ」

「知るかっ!」

僕の話をまともに聞こうとしない鎌田君は、
真哉に締め上げられながらも一向に態度を改めようとはしないようだ。

「いい加減に放しやがれっ!!」

怒鳴り散らす鎌田君に反省は見られない。

予想はしていたけれど、大人しく身を引いてくれる様子はなかった。

「仕方がないね。どうしても理解してもらえないのなら、僕達も引き下がることが出来ないんだ。学園の治安を守る為に、きみには少し反省してもらうよ」

静かに宣告してから、鎌田君を睨みつける。

「風紀委員の名の下に、きみを処分する!!」

静かに右手を向けたことで、鎌田君は怯えた視線を僕に向けていた。

だけどもう話し合うつもりはないよ。

説得が無理なら実力行使しかないからね。

「しばらく、反省したほうがいい」

通告してから彼の体に容赦なく魔術を叩き込む。

『ズドンッ!』と、爆発音が鳴り響いた直後に鎌田君の口から真っ赤な血が溢れ出した。

「ぐっ…かはっ…!?」

魔術を受けて血を吐いた鎌田君は一撃で意識を失ったようだ。

力尽きたことで真哉へと倒れ込んでいる。

「説得は失敗だったね」

「まあ、いつものことだな」

倒れた鎌田君を担ぎ上げた真哉がようやく口を開いた。

「こいつはいつもの場所でいいんだな?」

「ああ、それでいいよ」

「なら、放り込んでおく。あとは俺一人で良い」

鎌田君を担いだ真哉は、さっさと医務室を出て行った。

問題のある生徒を『あの場所』に届けるためだ。

一人残された僕は、騒ぎを起こしたことを謝罪してから医務室を出た。

これでひとまず鎌田君に関しては解決だ。

彼はもう悠理に会うことはできないからね。

残る問題は通常業務かな?

ため息を吐きたくなるような疲労感を感じつつも、
次の仕事を終えるために特風会に向かうことにした。
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