挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月10日

426/4820

だってそうでしょ?

《サイド:美袋翔子》

さてさて。

特風会についたわ。

なんだかんだでここへ来るのはかなり久しぶりな気がするわね~。

何日来てないのかな?

そんなことさえ思い出せないくらい、長い間、来てない気がするわ。

「今日は誰がいるかな~?」

扉を開けて、龍馬と一緒に中に入ってみると、
室内にはすでに3人の生徒がいたわ。

一人目は生徒番号36番の木戸祐樹(きどゆうき)君。

二人目は生徒番号45番の須玉聡美(すだまさとみ)さん。

そして三人目は私に敗北して降格した長野淳弥ながのあつやよ。

個人的には珍しい組み合わせだと思うけど、淳弥がここにいるのはわりと標準ね。

私の代わりに書類整理とか各種報告をまとめてくれているからよ。

え?

私がやらない理由?

そんなの面倒だからに決まってるじゃない。

事務作業って嫌いなのよ。

地味だし、疲れるし。

何より長時間座ってるのって苦手なのよね~。

おしりも痛くなるし。

字もそんなに綺麗じゃないし。

沙織みたいに何でも完璧になんてできないのよ。

だからこういう仕事は全部淳弥に任せてるの。

その代わりに実働は私が担ってるから仕事はちゃんとしてるわよ。

こういうのを役割分担って言うんじゃない?

間違ってるかな?

よくわかんないけど、私はそう思ってる。

で、3人を見てみると、報告書の束を整理してる最中みたいね。

それなり以上に忙しそうに見えるわ。

まあ、書類整理は管轄外(私がそう思ってるのよ)だから手伝うつもりはないけどね。

とりあえず面倒な仕事は淳弥に任せておくとして。

ひとまず中に入ってみると、3人揃って私と龍馬に視線を向けたわ。

別に仕事をしろっていう意味じゃなくて、誰か来たから視線を向けてみたって感じよ。

ついこの間、試合をした淳弥はともかくとして。

木戸君と須玉さんの二人に会うのって、今月は今日が初めてかもしれないわね。

あ、でも、仕事上の情報交換はしてたわよ。

ぶっちゃけて言うなら総魔の調査に関して書類のやりとりをしてたのよ。

霧とか翼とか、吸収の能力の解析とか色々とお願いしてたの。

まあ、結果から言えば分析不可能っていう回答だったんだけどね。

そこは文句が言えることじゃないから例外としても、
研究者としての実績を持つ二人は特風内では分析班として活躍してくれているわ。

ただ、基本的には桃花が分析班の責任者としてここに顔を出すことが多いから
木戸君と須玉さんはほとんど毎日を研究所で過ごしていてなかなか出会えなかったりするの。

だから、って言うほどでもないんだけど。

私もここには滅多に来ないからあまり関わりがない存在ね。

一応同じ特風に所属しているから全く知らない仲というわけでもないんだけど。

それでも特別仲が良いという関係でもないわ。

当たり障りのない関係ってやつよ。

仕事上の付き合いとも言うわね。

そんなふうに思ってるわ。

で、まあ、無理に関わるつもりがないから気楽に挨拶をすることにしたんだけど。

「おはよう♪」

元気良く挨拶をしてみると、真っ先に淳弥が歩み寄ってきたわ。

「珍しいな。翔子が来るのは久しぶりじゃないか?」

「まあね~」

「まあね~、じゃなくてだな。諜報部の責任者なんだからちゃんと仕事をしてくれないか?翔子が放置してサボってる分を『全部』俺が負担してるんだからな」

「えぇぇ~~~っ!?」

疲れた表情を見せる淳弥に対して、不満の声で応えてあげたわ。

だってそうでしょ?

淳弥の代わりに、ちゃんと実働部隊として働いてるのよ?

これ以上働く必要はないわよね?

「これ以上まだ私に働けって言うの!?さすがに過酷すぎないっ!?」

「いや、ちょっと待て翔子!!何でそんなに不満そうに言えるんだっ!?むしろそれは俺の方が言いたいぐらいだぞっ!?」

「どうしてよ?ったく、ああ言えばこう言うわね。私にどうしろって言うのよ!?」

「仕事をすればいいんだよ!!」

訴える淳弥だけど、私は全力で即答してあげる。

「やだ!!」

「やだじゃねえええええええええええええっ!!!!!!」

全力で叫び声を上げる淳弥だけど、いちいち気にしてられないわ。

「この手の仕事は淳弥の役割でしょ?私に押し付けないでよね」

「ふざけんなっ!!押し付けてるのはお前だって言ってんだろーーがっ!!!!!」

何度も何度も叫ぶ淳弥がうざいわね。

そんなふうに思った瞬間に。

「ははっ」

「ふふっ」

今まで様子を見ていた木戸君と須玉さんの笑い声が聞こえたのよ。

あれ?

意外ね。

超が付くくらい真面目な生徒だと思っていたけど、
思っていたよりも全然普通に笑えるみたい。

だとしたら、もう少し笑わせてみたい気がするけど…って、違うわね。

そんな馬鹿なことを考えてないで、
私は私でやるべきことをしなくちゃいけないのよ。

「悪いけど、急いでるからあとにしてくれる?」

あっさりと淳弥との会話を打ち切ってやったわ。

それでもまだ不満があるみたい。

「あのな…。」

まだ何か言いたそうだったけど、気にしないわ。

淳弥と遊んでいられるほど暇じゃないからよ。

「暴れてる暇があるならちゃんと仕事をしなさいよね~」

「いやいや、それはおかしいだろ?」

まだ文句を言ってくるけど。

きりがないからひとまず無視して本棚に歩み寄ることにしたわ。

「とりあえず~」

適当な本を選び取ろうとして本棚を眺めてみると。

「ったく、何を探してるんだ?」

すぐ後ろについてきてた淳弥がまたまた話しかけてきたのよ。

ったく~。

文句を言ってる暇があるのなら仕事をすればいいのに…。

「特に何ってこともないけどね。一応、ルーンの一覧かな?」

何となく答えてみると、淳弥は本棚から一冊の本を取り出して、私に差し出してくれたわ。

「そう言うだろうと思っていたからな。辞典はすでに探しておいた。この本には観測された全てのルーンが記載されているから、何か見つかるんじゃないか?」

淳弥が用意してくれていた辞典は、以前、総魔も手にしていた本よ。

『ルーン一覧』って、題名の書かれた本には最強のルーンであるラグナロクについても記載されているわ。

「とりあえずはそれでも見てから考えるんだな」

辞典を手渡してくれた淳弥は、あっさりと私から離れて行ったわ。

なんだかんだと文句を言うわりには準備がいいわね。

こういうところは補佐官として優秀だと思う部分なのよ。

まあ、口はうるさいけどね。

だけど仕事はできるのよ。

それに戦闘の実力も私達とそれほど変わらないと思うわ。

前回はアルテマが直撃したから勝てたけど。

本気で戦っていたらアルテマを発動させる前に組み伏せられていたんじゃないかな?

全然本気を見せないやつだけど、実はかなり強いはずなのよ。

それこそ龍馬と互角に戦えるんじゃないかな?って思うくらいにはね。

本人にその気がないからサードで留まってるけど、
たまに実践で見せる戦闘能力は真哉よりも怖かったりするわ。

力がどうこうとかじゃなくて、戦闘技術が危ないのよ。

いわゆる暗殺特化ってやつね。

不意打ち、奇襲、闇討、駆け引き。

そういうのが得意なのよ。

だから正々堂々と戦う試合では実力を発揮できないでしょうけど。

実践なら誰よりも怖い能力者なのよ。

出来ることなら戦いたくないと思うわ。

実際に真哉や龍馬がどう考えてるかは知らないけど、それが私の評価よ。

諜報部の一員としては間違いなく優秀でしょうね。

むしろ私よりも向いてるんじゃないかな?

そう思うけど、本人は目立ちたくないみたいで責任者の立場は私にさせてくれてるわ。

まあ、個人的には立場なんてどうでもいいんだけどね。

沙織と仲がいいから特風にいるだけだし。

責任者でも下っ端でもなんでもいいのよ。

そんなことを思いながら、辞典を手にしたまま自分の席に座ってみる。

だけど今は私を含めて5人しかいないから空席が目立つわね。

14人分の席の半数以上が空いてるからよ。

まあ、全員が揃うことはまずないから、これくらいが標準なんだけどね。

何気なく周囲に視線を向けてみる。

龍馬はすでに仕事を始めていて、
木戸君と須玉さんの二人の意見を聞きながら書類作業に取り掛かっていたわ。

忙しいというほどでもないけど大変そうとは思うかな。

で、皆とは少し離れた場所で報告書をまとめている淳弥もちゃんと仕事をしてるみたい。

たま~に、こっちをちらちら見てくる辺りに不満が感じられるけど。

口出ししてこないだけまだマシだと思うわ。

もちろん何を言われても聞くつもりは一切ないけどね。

ひとまず今はみんなの邪魔にならないように静かに読書をしようと思うだけよ。

ここで調べるべきことはただ一つ。

ルーンの形だけなのよっ!!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ