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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

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本当にすごいのは

《サイド:深海優奈》

食堂で夕食を終えたあと。

私と悠理ちゃんは、女子寮に帰ることにしました。

「もうすぐ寮につくね」

「そだね~」

食堂からまっすぐ西側に向かうと女子寮に着くのですが、
その帰り道で悠理ちゃんは幸せそうな表情でお腹をさすっていました。

「さすがにお腹一杯で満足~って感じよね~」

「うん。そうだね」

夕食は大きめのピザだったので、
二人で食べてもお腹一杯になりました。

8等分のピザを4枚ずつ食べたのですが、
最後の一枚はちょっぴり無理をして頑張って食べた感じです。

なので、当分の間、ピザは見たくないと思ってしまいます。

「さすがにもうしばらくピザはいらないって感じよね~」

「あははっ。」

悠理ちゃんも同じ気持ちのようですね。

楽しそうに笑う悠理ちゃんの笑顔を見ているだけで、
私も幸せな気持ちになってしまいました。

ですが、悠理ちゃんの笑顔はすぐに消えてしまいました。

「はぁぁぁ…。」

深々と溜息を吐いているんです。

「どうかしたの?」

「どうっていうかさ~。半日ずっと図書室で過ごすのって結構疲れるわよね~」

あぁ~。

そうですね。

悠理ちゃんの気持ちは私にも十分すぎるほどわかります。

本当に疲れるんです。

「魔道書を読むのって難しいよね。」

「そこなのよ。ただ見るだけじゃ意味がわからないし…。かと言って勉強しないと、いつまで経って魔術が使えるようにならないし…。こういうのって面倒だけど仕方ないのかな~?」

ぐぐっと両手を伸ばして背伸びをする悠理ちゃんの仕種はとても可愛く見えますね。

ですが、疲れるという意見は私も大賛成です。

色々とあって学園での成績は一気に上がりましたが、
私の実力は初心者とほとんど変わりません。

使える魔術の数は本当に数えられるほどしかないんです。

それも丸暗記した詠唱を少しずつ思い出しながら唱えているだけで、
詠唱の意味は全く何も理解していません。

だからこそ、詠唱に余計に時間がかかってしまってどんどん遅くなってしまっているのですが、
改善しようにも何をどうすればいいのかがわからない状態なのです。

私自身、それほど頭がいいわけではありませんし、運動も苦手な劣等生です。

総魔さんや翔子先輩のようにはなれません。

「だけど、魔術が使えるようになったら嬉しいよね?」

私の場合は本当にただ使えるだけで、
使い方を理解してない状態なのですが。

それでも使える魔術が増えると素直に嬉しいと思います。

「少しずつでいいから使える魔術を増やしたいよね」

「まあ、それはそうなんだけどね~」

悠理ちゃんは私に視線を向けながらため息を吐き続けています。

何となくですが、落ち込んでいるように見えますね。

「それにしても優奈ってば、学園3位って凄すぎない?」

はう~。

成績に関しては聞かれると困ってしまいます。

羨ましそうに言われてしまいましたが、私は凄いとは思いません。

数字という見た目に対して、実力という中身が伴っていないからです。

「そんなことないと思うよ?」

確かに番号だけで見れば3位です。

ですが実際に使える魔術は悠理ちゃんとそれほど変わらないと思います。

これまでの経験で幾つかの上級魔術も使えるようにはなりましたが、
ギリギリ発動できるという程度で、総魔さんのように使いこなすことはできません。

だから、ちゃんと使える魔術はほとんど簡単なものばかりです。

ただ…。

そんな簡単な魔術でさえも、詠唱の遅さは『圧倒的』です。

多分、魔術師としての実力だけを見れば私は悠理ちゃんよりも下のはずです。

もしも吸魔という能力がなかったら、間違いなく最下位だったと思います。

たぶん、武藤君と比べてもそれほど変わらないのではないでしょうか?

ですので、あまり自信を持って誇れる番号ではありません。

「私よりも悠理ちゃんの方がずっと凄いよ!私は自分の能力に頼ってるだけだけど、悠理ちゃんはちゃんと自分の実力で勝ち取った番号なんだから」

本当にすごいのは悠理ちゃんです。

才能とか能力に頼らずに、
努力だけで成績を上げた悠理ちゃんのほうが私なんかよりもずっとずっとすごいと思うんです。

それなのに。

「あはははっ!優奈ってホントに変わってるわよね~」

悠理ちゃんは私を見つめながら楽しそうに笑い出しました。

「それだけの力があるのに落ち込む人なんてなかなかいないと思うわよ~」

そうでしょうか?

「だから、さ。優奈はもっと自分に自信を持っていいんじゃない?」

「…いいのかな?」

「いいのいいの。どういう事情があるかなんて、別に気にしなくていいと思うわよ。だって結果が全てなんだから、今の自分の番号と実力を信じるべきだと私は思うわよ」

「ん~。そうかな~?」

そういうものなのでしょうか?

「そうそう!そういうものよ」

「う~ん…。」

悠理ちゃんには褒めてもらえましたが、自分ではまだ納得できません。

少なくとも自分自身の実力で、ちゃんと魔術を使えるようになるまでは、
自信を持つことなんて出来ないと思います。

せめて普通に魔術を使えるようになりたいんです。

「もっと勉強しないといけないね」

「まあね~。結局そうなるのよね~。あ~あ~。また明日も図書室かな~?」

「…うん。そうだね」

明日もまた勉強です。

「でもまあ、嫌いじゃないけどね。優奈と一緒なら楽しいし!」

「私も悠理ちゃんといっしょなら楽しいよ」

私と一緒ならと言ってくれた悠理ちゃんの言葉がとても嬉しく思えました。

「明日も頑張ろうね」

そんなふうに話し合っている間に寮の前に着きました。

男子寮と女子寮は学園の真逆に位置していますが、
どちらも12棟ずつ並んでいるそうです。

そして12棟ある女子寮の中で、
私は9番目に、悠理ちゃんは7番目の寮に自室があります。

同じ寮棟ではないので、ここでお別れです。

なので、悠理ちゃんにお別れの挨拶をしてから部屋に帰ろうと思ったのですが…。

「優奈、よかったら今日は私の部屋に泊まりにこない?」

その前に悠理ちゃんからお誘いを受けることになりました。

「え?いいの?」

「お互い狭い部屋だけど、二人ならまあ、大丈夫じゃない?って言っても、ベッドは一つしかないから一緒に寝ることになるけどね」

一緒のベッドで、と言ってくれた悠理ちゃんのお誘いはすごく嬉しく思えました。

こんなふうに誰かのお部屋に行くことなんて始めてだからです。

悠理ちゃんに出会うまで友達と呼べる人は一人もいなかったので、
誰かのお部屋に行くという経験をしたことが今まで一度もありません。

そのせいで少し緊張してしまうのですが、
悠理ちゃんのお部屋なら是非行ってみたいです。

「悠理ちゃんのお部屋に行きたい!」

誘ってくれたことが嬉しくて、即答してしまいました。

「それじゃあどうする?何か準備はいる?」

「ううん。大体、鞄に入ってるから大丈夫だと思う」

色々と準備を整えないと落ち着かない性格ですので、
一通りの荷物は鞄の中に詰め込んであるんです。

と言っても、さすがに着替えまでは用意していませんが、
着替えるだけなら明日でも大丈夫です。

「このままで大丈夫だよ」

「そう?じゃあ、行こっか」

「うん!」

悠理ちゃんと一緒に、悠理ちゃんのお部屋に向かうことになりました。

そのおかげで今日という日はまだまだ終わりそうにありません。

このあともずっと悠理ちゃんと一緒にいられるんです。

きっと、眠るまで楽しい時間を過ごせると思います。

だからでしょうか?

初めて行く悠理ちゃんのお部屋を想像するだけで楽しみになってしまいました。

「こっちよ」

「うん!」

悠理ちゃんに案内してもらって、
今日は悠理ちゃんのお部屋にお泊りすることになりました。
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