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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

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また、ここに

「お姉ちゃん!お帰りなさい!」

聞き慣れた成美ちゃんの声。

決して大きくはないから、
油断すれば聞き逃してしまいそうな声だけど、私達ははっきりと聞き取ったわ。

うんうん。

元気そうね。

声が聞こえたことで少し安心できたわ。

そして。

ゆっくりと玄関に近付いて来る成美ちゃんの姿が見えたことで、すごく懐かしく思えたの。

相変わらず危なっかしい足取りだけど。

迷わずに沙織に向かって歩みを進めてく成美ちゃんは今日もすっごく可愛いわね。

可憐っていう言葉が誰よりも似合うと思うわ。

そんな成美ちゃんが、ゆっくりと歩きながら沙織に問いかける。

「ねえ、お姉ちゃん。今日も一人なの?」

少し寂しそうな表情を見せた成美ちゃんが誰を探してるのかはすぐに分かったわ。

ここに来るのは沙織と私だけなんだから。

他に選択肢なんてないわよね?

そう思うんだけど…。

成美ちゃんが私を捜してるって分かっていても、
私は家の前から動けないでいたわ。

何て話し掛ければ良いのかが分からなかったからよ。

どう接すればいいのかが分からなかったの。

今にも泣き出しそうな成美ちゃんを見ているだけで、
思うように最初の一歩が踏み出せなかったのよ。

そんなふうに立ち止まってしまった私にもう一度だけ振り返ってから微笑んだ沙織は、
そっと成美ちゃんの手をとってから玄関の外へと連れ出したわ。

「え?お姉ちゃん?どうしたの?」

突然、家の外に導かれて戸惑う成美ちゃんだけど。

沙織は何も言わずに成美ちゃんを私の前へと誘導してる。

「お姉ちゃん?」

寄り添う沙織に問いかけようとする成美ちゃんだけど、
私の目の前まで来たことで、沙織の目的に気付いたようだったわ。

「あ…れ?この匂いは…」

小さく呟いたあとで。

突然、成美ちゃんの表情に笑顔が戻ったのよ。

「翔子さん!!」

笑顔を浮かべながら私に抱きつこうとする成美ちゃんの手から杖が落ちて、
『カタン…コロコロ…』と小さな音が玄関の前で鳴り響いたわ。

それでも成美ちゃんは止まらなかった。

杖を落としたことさえ気にせずに、
成美ちゃんは私に歩み寄ろうとしてくれたのよ。

「翔子さんっ!!」

もう一度呼び掛けられた時にはもう、
涙が我慢出来なくなっていたわ。

「…成美、ちゃん。」

名前を呼んだ瞬間に、成美ちゃんが嬉しそうに微笑んでくれたの。

ただそれだけで、涙が溢れてこぼれ落ちてた。

「翔子さん、お帰りなさい!」

ぎゅっと私の体を抱きしめてくれる成美ちゃんの体もね。

沙織と同じくらいすごく温かかったわ。

「ただいま、成美ちゃん」

「お帰りなさい!」

たったそれだけの会話。

だけどそれだけの言葉で、私の心の中の不安は一瞬で消え去ったのよ。

「…ごめんね。」

謝ってみる。

だけど成美ちゃんは笑顔を浮かべたまま、首を左右に振ってくれたわ。

「大丈夫です。謝らないで下さい。きっとまた来てくれるって信じてましたから♪」

私を信じてくれる成美ちゃんの言葉がすごく嬉しかった。

勝手に離れて、勝手に戻ってきた私を温かく迎えてくれる成美ちゃんの言葉がすごく嬉しかったのよ。

「ありがとう。成美ちゃん」

涙を拭ってから、成美ちゃんの手を握り締める。

ここから先は沙織に頼ったりしないわ。

ちゃんと私が成美ちゃんを支えてみせるの。

「行こっか?」

「はい♪」

成美ちゃんを誘導するためにゆっくりと歩き始めると、
もう一度、成美ちゃんに名前を呼ばれたわ。

「翔子さん」

「ん?」

呼びかけられたことで視線を向けてみると。

「一緒にご飯食べよう♪」

いつもと変わらない笑顔で食事に誘ってくれたのよ。

「うん!」

成美ちゃんの気持ちが嬉しくて、私はまた泣きそうになっちゃった。

だけど今は泣いてる場合じゃないわ。

成美ちゃんを笑顔にするのが私の役目なの。

だから今は涙を堪えて成美ちゃんと一緒に歩きだすことにしたのよ。

「行くわよ~」

「はいっ」

玄関へと向かう私と成美ちゃん。

そんな私達の背後で、
沙織が成美ちゃんの杖を拾う音が聞こえたわ。

「…翔子…」

沙織の呼び掛けに気づいて振り返る前に…沙織は言葉を続けたわ。

「お帰りなさい、翔子」

うん。

「ただいま。沙織」

私はまた、ここに帰ってきたのよ。
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