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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

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スキル・アウト

「始めっ!!」

開始の合図を出してからすぐに、里沙は後方に下がってた。

だけど向き合う総魔と沙織は一歩も動かずに同時にルーンを発動させていたわ。

沙織のルーンはマテリアルよ。

見慣れた杖ね。

だけど総魔のルーンは私の知らない形だったわ。

あれが…総魔の新しいルーンなのかな?

試合に注目する私と真哉の視線の先で、二人の戦いが始まってしまう。

総魔と沙織の2回目の試合が始まってしまったのよ。

「ヴァジュラ!!!」

試合開始直後に先に動いたのは沙織だったわ。

炎のようにうごめく光の塊が総魔に襲い掛かってく。

その光の炎に対して、総魔は静かにルーンを構えてた。

そしてルーンの切っ先を光に向けて、迫り来る炎を優しく受け止めてみせたのよ。

ただそれだけの行動で、光の炎は動きを止めてしまったわ。

「そんなっ!?どうしてっ!?」

驚く沙織に、総魔は受け止めた光を反射させてしまう。

「受け取れ」

沙織が放ったはずの光の炎が沙織自身へと襲い掛かったのよ。

「くっ…。グロウヴィル!!!」

急いで迎撃を行う沙織の足元から影が伸びて、光の塊を食い止めてた。

互いに相殺しあう光と影。

たった数秒間の攻防を見ただけで、
二人の実力差は明らかになったわね。

ただルーンを振っただけの総魔と、魔力を消費した沙織。

二人の力の差は歴然だとしか思えないからよ。

「ならっ!!」

マテリアルを天へとかざした沙織は最強の一撃を放ったわ。

「マスター・オブ・エレメント!!!」

白、黒、赤、青、黄。

五色の光が総魔に降り注いだのよ。

だけど。

沙織の最大の攻撃を見つめながらも、総魔は一歩も動かなかったわ。

「無駄だ」

以前の試合では致命的な被害を受けたはずの沙織の魔術を前にしても、
総魔は余裕の表情で立ちはだかっているの。

そして降り注ぐ光にルーンを向けた総魔は何かの力を発動させたわ。

「全ての魔力の流れを『反転』する」

総魔が宣言した直後に。

五色の光が術者である沙織に向かって進行方向を変えたのよ。

その瞬間に巻き起こる爆風。

轟音ごうおんを響かせながら爆発した魔術が沙織の体を飲み込んでいたわ。

「きゃああああああっ!?」

自分自身の魔術を受けて吹き飛ぶ沙織の体。

試合場の端にまで転がった沙織は試合場を包み込む防御結界にぶつかって動きを止めてた。

うああ~。

あれって結構痛いのよね…。

吹き飛んだ距離にもよるけど、
普通に壁に激突するのと同じくらいの衝撃があるからよ。

場合によっては骨が砕けることだってあるしね…。

それくらい痛いの。

それでも何とか立ち上がろうとする沙織だけど。

「く…っ、うぅ…っ。」

沙織の手足は…遠くで見ていてもわかるくらい震えていたわ。

それが痛みによるものなのか、
恐怖によるものなのかは分からないけどね。

だけど沙織の表情には明らかな絶望感が漂っているように見えたわ。

ここまできたらもう打つ手なしよね。

そう考えてるのは私にもわかる。

それでも必死で起き上がろうとする沙織を総魔はただじっと眺めてるだけだったわ。

試合開始からまだ一歩も動いてないのよ。

開始線に立ったままなの。

その行動のせいで、前回とは明らかに違う実力差を感じてしまうわね。

かろうじて勝てたかもしれない前回とは違うのよ。

今回の試合は明らかに沙織が劣勢だったわ。

どう考えても勝ち目がない戦いとしか思えないの。

沙織に放てる最強の攻撃でさえも、
総魔に対して傷一つ負わせることが出来ないどころか、
簡単に跳ね返されてしまったのよ。

だからもう沙織に攻撃手段があるとは思えないわ。

そう思ってしまったから、もうどんな攻撃も総魔に通じる気がしなかったのよ。

負けを認めるしかないって、私は判断したの。

…だけど、ね。

沙織は諦めなかったわ。

「貴方に背中は見せられない。だから最後まで戦うわ」

逃げずに戦う意思を見せる沙織がルーンを構える。

そんな沙織の姿を見ていた総魔は少しだけ微笑みを浮かべていたわ。

う~ん。

その微笑みがどういう意味なのかはわからないわね。

だけどきっと。

沙織の想いを受け止めるつもりなんだって思う。

「良い選択だ。諦めればそこで全てが終わるからな。だが、諦めない限り、可能性は常にある。最後まで戦い抜くこと。そこに確かな意味がある」

沙織の想いを受け止めた総魔はルーンを頭上に掲げたわ。

「力尽きるその時まで戦い抜け。そして、見届けろ。これが俺の新たな力だ」

一気に沙織へと駆け出す総魔の特攻を見つめながら、沙織も迎撃に動き出しす。

「私は諦めません!」

マテリアルを構える沙織は最後まで逃げなかったのよ。

傷ついた体で、とても弱々しい仕種だけどね。

それでも強い意志を示したの。

「全ての魔力を込めて、あなたを止めて見せます!」

「見事、防ぎきってみせろ」

総魔は手にしているルーンを沙織のマテリアルへと突き刺したわ。

そして、何かを行ったの。

「スキル・アウト!!!」

私の知らない魔術よ。

だけど総魔が何かの力を発動させた瞬間に。

突然、沙織のマテリアルが消失したわ。

「…ぇ、っ!?」

戸惑う沙織が動きを止めてしまった次の瞬間に。

「これで終わりだ。」

総魔の剣が沙織の体を貫いてた。

そして再び何かを仕掛けた瞬間に。

「う、ぁぁ…っ!?」

沙織の体から鮮血が吹き出したのよ。

えぇぇぇっ!?

今、なにが起きたの?

数え切れないほどの傷が、沙織の全身を真っ赤に染め上げてる。

「………。」

沙織は声を出すことさえできずに力尽きたようね。

完全に意識を失っているわ。

総魔に向かって倒れ込んだことで、
優しく抱きかかえられているのがちょっぴり羨ましいけれど。

今はそんなことを考えてる場合じゃないわよね。

「試合終了っ!!!」

里沙が試合終了を宣言したことで、
総魔はすぐに回復魔術を展開してた。

微かな光が沙織の体を包み込んで、全ての傷を癒していったのよ。

いつ見ても完璧過ぎる回復魔術よね。

吹き出した出血さえも完全に消え去って、
数え切れないほどあったはずの怪我はもう痕跡さえないみたい。

それほどの奇跡を実現しながらも、
今の総魔に疲れは一切見えなかったのよ。
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