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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

378/4820

拉致

《サイド:常盤沙織》

………。

治癒魔術研究室の一画で、私は今日も研究を続けています。

もちろん成美の目を治すための研究です。

新たな理論を組み上げたことで幾つかの仮説が検証出来ればと思い。

ひとまず試作段階に移ろうとしていたのですが…。

実験を始めようとしたその矢先に、
突然入口の扉が『バンッ!』と激しく開かれました。

そして。

「失礼しますっ!!」

勢いよく研究室に飛び込んできた人物のせいで手を止めることになってしまいました。

騒がしいですね。

何をそんなに急いでいるのでしょうか?

扉の開け方が失礼すぎると思います。

もう少し静かに開けられないのでしょうか?

そんな不満を感じながらも、
乱入してきた人物に視線を向けてみると…。

「あら?里沙なの?」

そこにいたのは知り合いでした。

特風の同僚であり、私の補佐官でもある人物です。

ここへ来るのは珍しい…というよりも初めてだと思います。

随分と慌てているようですけど、何かあったのでしょうか?

「どうかし…」

「見つけたわよ、沙織!!」

私に視線を向けた里沙は周りを気にせずに勢いよく駆け寄ってきて、
強引に私の手をつかみとりました。

これでは話を聞く余裕すらありません。

「さあ、行くわよっ!!!」

えっ!?

ちょっ!?

突然、行くと言われても困ります。

「ね、ねえ、ちょっと待って…!」

せめて理由くらい聞かせて欲しいです。

そう思うのですが。

「話してる暇はないのっ!」

容赦なく私の手を引っ張る里沙は、
問答無用という雰囲気で私を引きずって部屋を出ようとしています。

「里沙…っ!?…ちょっ…と、ま…っ…!」

抵抗しようと思っても、里沙の勢いには勝てません。

体力的にはそれほど大きな差はないのですが。

室内で暴れるわけにはいきませんので、
強引に里沙を振りほどくことができなかったのです。

「行くわよ、沙織!早くっ!!」

早くと言われても困ります。

せめて事情を説明して欲しいのですが、
里沙は私の話を聞いてくれそうにありませんでした。

どこへ向かうつもりなのか知りませんが、かなり急いでいるようです。

「は~や~く~っ!!!」

「…で、でも、まだ…っ!」

研究資料が出しっぱなしで、整理すら出来ていない状況なのです。

この状況で出て行くのは、
研究室の一画をお借りしている立場として非常に申し訳なく思ってしまいます。

「…り、里沙っ。お願いだから、片付けだけでも…」

「無理無理無理無理~っ!!時間がないのっ!!いいから急いでっ!!」

「ちょ、里沙、痛いっ」

慌てて部屋を飛び出そうとする里沙は私のささやかな願いさえも聞いてくれませんでした。

こうなったら仕方がありません。

あとでもう一度出直すしかありませんよね。

「あ、あのっ、その、あのっ!神崎さん!すぐに、戻って来ますから、机の上は、そのままで…」

せめて神崎さんにはしっかりと挨拶をしたいと思ったのですが。

結局、最後まで言い切ることもできないまま、
里沙に引っ張られて研究所を出ることになってしまいました。
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