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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

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総動員

《サイド:米倉美由紀》

予想していたよりも、事態が進むのは早くなかったわね。

というよりも。

むしろ予想よりも遅かったわ。

そんなふうに思う自分がいる。

勝手な予想だったけど。

本来ならもっと早くに連絡が来ると思っていたのよ。

だけど現実はそうはならなかったわ。

時計に視線を向けてみる。

時刻は午前11時。

検定試験会場が開かれてからすでに3時間が経過しているわね。

ここまで遅くなるなんて思ってなかったんだけど。

この時間になってからようやく私は検定会場に到着したわ。

予想なら9時頃と考えていたんだけどね。

だけど彼は…天城総魔は何故か時間を遅らせていたのよ。

何か意味があるのかもしれないけど。

思い当たることは何もないわね。

現段階で受けている報告は美袋翔子が128番まで勝ち進んでいることと、
潜在能力に覚醒した可能性があるということ。

それと御堂龍馬が急速に成績を伸ばしながら現在サード・ステージまで勝ち進んでいることと、
完全に潜在能力に覚醒したということだけね。

その二人のことくらいなのよ。

だから天城総魔に関してははっきりとした情報が掴めていないわ。

彼に課した条件。

試合の『事前告知』と『選択権』

朝8時に会場入りしたという報告を受けた時。

1時間後の9時頃には召集が来ると考えていたんだけど、
実際に天城総魔が指定した時間は午前11時だったわ。

この3時間の間に何がしたかったのか知らないけれど。

彼はこの時間を選択して、
私達は結界の準備の為に検定会場に集合したのよ。

「結界の準備はどう?」

尋ねる私に大悟は自信を持って頷いてくれる。

「順調だ。いつ始めて構わない」

「そう。ならいいけれど…」

確認だけして、作戦の流れを整理し直してみる。

やるべきことは簡単よ。

天城君の試合限定で、結界魔術の使える魔術師を総動員して結界を展開すること。

ただそれだけだからよ。

絶対防御魔術『シールド』

天城総魔自身も得意とする魔術だけど。

全力で戦う彼の攻撃の全てを完全に抑えるには、
こちら側は『総動員』の準備を行ってでも対応する必要があると思ってる。

絶対防御魔術でも、彼の魔法は防ぎきれないからよ。

その根本的な問題を解決する方法はただ一つ。

天城総魔の魔法を防ぎ切れるだけの『数』を揃えること。

質よりも量ってことよ。

物量という最も簡単な方法で試合場を防護して、
会場への被害を最小限に抑えること。

それが学園の下した決断なのよ。

その為に集まった魔術師は私を含めて総勢60余名。

ここまでする必要はないかもしれないけれど。

これでもまだ不安は消えないわね。

少なくとも天城総魔と御堂龍馬の試合は
これだけの頭数を揃えても許可できることではないのよ。

それほどの要注意人物なの。

それが天城総魔。

今回の試合で、彼が指名した対戦相手は学園4位と5位の二人の生徒だったわ。

その両方と戦うのか、それとも一人ずつと戦うのかそこまでは誰も知らないけどね。

ただ指名された生徒を呼び出して、来るのを待つだけなのよ。

これからどんな戦いが始まるのか分からないけれど。

私達の結界がちゃんと通用するのかどうかを計る為にも程よい人選だとは思うわ。

いきなり北条君と試合をされて結界が崩壊した挙げ句に、
会場もまた『全壊』では私の責任問題にも繋がりかねないしね。

私達の練習と実験という意味も含めて、この試合は都合のいい展開なのよ。

「そろそろ始まるかしら?」

「ふむ。どうせなら試合前に挨拶でもしておきたいところだな」

「別にいいけど作戦の指揮は大悟に任せてるんだから、調子にのって間近で観戦とかしないでよ?」

「ああ分かってる。任せておけ」

「…不安ね」

小さく呟いてみた私の声に同調するかのように西園寺さんが静かに頷いていたわ。

「所長に何かを任せること以上に心配なことは他にありません」

ん~。

刺のある言葉ね。

だけど西園寺さんの言葉に無言で頷く研究所の職員達。

彼女達の言動によって、大悟が一筋の汗を流していたわ。

「お前等は…」

ため息を吐きながらも大悟は歩みを進ていく。

「もういい。好きに言え」

天城総魔に挨拶をする為に、大悟は私達から離れて行ったのよ。
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