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THE WORLD 作者:SEASONS

4月9日

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炎の中で

あうぅぅ~。

私も攻撃しなければいけません。

慌てふためきながらも彼方さんから少し遅れて詠唱を開始したのですが、
簡単な魔術でさえも詠唱の遅い私の魔術が間に合うわけがありません。

今回も当然のように、彼方さんの魔術が先に完成してしまいました。

「メガ・フレア!!!」

彼方さんが魔術を発動した瞬間に。

今まで見たこともないような巨大な炎が彼方さんの手の上に現れたんです。

灼熱に燃え盛る炎の塊です。

翔子先輩が使っていたダンシング・フレアの炎を一箇所に凝縮したような炎でした。

それほどの炎が私に向かって放たれたんです。

「一撃で決めるっ!!」

力強く宣言する彼方さんの手から炎が離れて、
軽く2メートルくらいはありそうな巨大な炎が私へと迫ります。

ですが、私には逃げることさえ出来ません。

魔術の詠唱が遅い上に、運動も苦手なんです。

急いで逃げるとか、そんな器用なことはできません。

なので、私はそのまま炎に飲み込まれてしまいました。

2メートルを超える炎の内部。

それはまるで灼熱しゃくねつです。

他に表現しようのない強烈な炎だと思います。

拡散する広範囲型のダンシング・フレアとは違って、
一点に集中された破壊力は間違いなく炎系最強の威力です。

私は『炎の中で』そんなことを考えていました。

すごい威力ですね。

普通ならこの一撃だけで戦闘不能だと思います。

ですが私は違います。

炎の影響を受けないどころか。

炎そのものを吸収することで魔力が蓄積していくだけだからです。

急速に消え去る魔術の炎。

灼熱の炎が勢いを弱めて消失した瞬間に、
私の姿を確認した彼方さんと芹澤先輩の表情が凍りつきました。

「そんな馬鹿なっ!?直撃したはずなのにっ!?」

驚く彼方さんの気持ちはわかりますが、この状況は今までと同じ展開です。

これまでの全ての試合で似たような状況を経験していますので私としては見慣れた光景なのですが、
彼方さんと芹澤先輩は驚いているようでした。

「これが、吸収なの?」

「ちっ!相変わらず、厄介な能力だな」

戸惑う芹澤先輩と苛立つ彼方さん。

二人の視線を受けながらも、
私は詠唱を続けていた魔術をようやく完成させました。

「シャイニング・アロー!!!」

今までの試合で覚えた中級程度の光魔術です。

無数の『光の矢』が発生して彼方さんへと向かって飛んで行きます。

目に見える光の矢。

その矢から逃れるように走り出す彼方さんでしたが、
幾つかの矢は彼方さんに直撃しています。

見た感じだと軽傷程度ですが、私の魔術は通じたようですね。

「くっ…!」

表情を歪める彼方さんですが、
すぐに回復魔術を使って治療してしまいました。

青い光が現れて、光が消え去ったのとほぼ同時に、
矢の刺さった傷痕が全て治療されてしまったんです。

あぅぅ…。

せっかくの魔術が無駄に終わってしまいました。

急いで次の魔術を詠唱する私を見て、彼方さんも詠唱を始めます。

そしてまた、彼方さんの魔術が先に完成しました。

「これならどうだっ!!!ファルシオン!!!」

彼方さんの両手から生まれるのは圧倒的な冷気の塊です。

おそらく氷系最強の魔術だと思います。

最上級魔術が私へと襲い掛かってきました。

風の音と共に試合場を凍結させながら吹き付ける冷気。

一瞬で凍死してしまいそうな絶望的な威力を秘めた冷気が私の体を包み込みます。

ですが…。

冷気の中で、ただ静かに立ち続ける私に影響はありません。

吸魔の特性が発動して。

冷気という魔術そのものを取り込んで私の力に変換しているからです。

全くの無害。

彼方さんが全力で放つ魔術も、私には通用しません。

吸収されて消滅する冷気。

私は傷一つ負うことなく、彼方さんの魔術を耐えきりました。

「くそっ!これでもダメかっ!」

悔しさを噛み締める彼方さんに向けて、今度は私から魔術を発動させます。

「サンダー・ストーム!!!!」

「しま…っ!?」

私の両手から生まれた小さな竜巻が拡散した瞬間に。

恐怖の表情を浮かべる彼方さんの周囲を取り囲むように雷撃の渦が幾つも生まれて、
彼方さんに向かって放電を開始しました。

「ぐあ…っ!!!」

ぶつかり、はじけあう雷。

最後に渦の中心へと向かって強力な落雷が発生します。

「く、っ…!?」

電撃を浴びて倒れ込む彼方さんは頭を抱え込みながら…どさっ…と、試合場に倒れ込みました。

「試合終了!!!」

即座に芹澤先輩が宣言します。

「勝者、深海優奈っ!!!」

彼方さんが倒れたことで、私の勝利が決定したんです。

生徒番号82番、獲得です。
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