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THE WORLD 作者:SEASONS

4月8日

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王手

試合場はCー5。

たどり着いた試合場に立って対戦相手と向き合ってみる。

今回の対戦相手は生徒番号14268番の羽鳥奈津江(はとりなつえ)さんよ。

本当はもっと上の生徒と戦いたいところだけど。

お互いの実力を考慮すれば、
彼女しか実験出来そうな生徒がいなかったのよ。

『相性』という点でね。

他に選択肢がなかったの。

私がまともに使える魔術は『炎』と『風』のたった2種類だけ。

それも基本的な魔術しか使えないわ。

そう考えると同じ魔術を使う生徒に勝てる可能性は限りなく低いと思うのよね。

バースト・フレアを誘爆させる作戦はあるけれど。

失敗したらそこまでだし。

何度も上手くいくとは思えないわ。

だからこそ。

私に出来る作戦を考える必要があるの。

そして唯一実現できそうな方法があるとすれば…

それは『反撃』の一点だけだと思う。

昨日の試合で雷の球を跳ね返したように他の魔術を跳ね返すこと。

それしか方法が思い付かなかったのよ。

だから相手の実力を考慮して彼女を選んだの。

あまり『拡散系』を得意とせずに『単発系』を得意とする彼女が相手なら、
上手く行けば魔術を跳ね返して勝てるかもしれないからよ。

そう考えたの。

上手く行くかどうかは分からないけれど、他に方法がないことも事実だから。

私は私に出来る魔術で勝ち上がるしかないの。

考えられる攻撃手段はたった二つ。

小さな炎と一瞬の突風だけだけど。

それでも私は勝ち上がってみせるわ!

ひたすら気合いを込めて羽鳥さんを見つめてみる。

だけど…。

羽鳥さんはどこか少し、困ったような表情を浮かべてるわね。

明らかに格下の私に挑まれて、どうして良いか分からないようなそんな感じだったわ。

それでも鎌田のような馬鹿とは違って、
礼儀を心得ているように見えるだけでもいい人なのかもしれないわね。

だから私はそっと頭を下げたわ。

「よろしくお願いします」

喧嘩がしたいわけじゃないから挨拶くらいはちゃんとするわよ。

大人しく頭を下げる私を見て若干心に隙が出来たのかな?

羽鳥さんは微かな微笑みを浮かべてた。

「よろしくね」

とても綺麗な透き通った声。

その声を聞いただけで心が癒されるようなそんな感じがするわ。

うん。

優しいお姉さんっていう感じ?

初対面だけど、すごく好感が持てる人だったわ。

再び向かい合った私達の間に審判員が歩み出て、試合場の中央に立つ。

「それでは、準備はよろしいですね?」

念を押すような確認。

私も羽鳥さんも無言で頷く。

「では…試合、開始っ!!」

すかさず魔術の詠唱を始める。

そんな私をじっと見つめる羽鳥さん…って。

いやいや。

魔術を使ってくれないと勝てないんですけど…?

そんなふうに思っている間に私の魔術は完成してしまったわ。

うあ~。

ここで魔術を発動させるのは簡単なんだけど、それだと意味がないわよね?

単に魔術を放つだけでは勝てないからよ。

どうにかして反撃したいの。

だけど羽鳥さんは私の姿を見つめてるだけなのよね…。

うぅ~。

どうしよう?

ここから魔術を使っても回避されるはず。

なら…?

決心して一気に駆け出したわ。

もちろん羽鳥さんに向かってよ。

私が走りだしたことで、僅かに表情が変わったわね。

もしかしたらばれたかな?

そう思ったけど今更止まれないわ。

羽鳥さんへ接近した私は魔術を込めた手を伸ばした。

「ファイアー・ボール!!!」

至近距離で生み出す炎の球。

「っ!?」

急いで回避しようとする羽鳥さんの進行方向を見定めてから炎を放った。

「し、しまっ…!」

驚愕に表情を染める羽鳥さんだけど。

一瞬の油断が敗北に繋がるものなのよ。

攻撃を仕掛けた私は即座に後方に飛びのいた。

自爆を避けるためよ。

私という目標を見失ったことで、
目の前で放たれた炎を回避する為に全力で試合場を転がる羽鳥さん。

さすがに格上だけあって一撃で勝利とはいかないわね~。

外れた炎が地面に着弾して意味もなく燃え上がったわ。

でもね?

予想とは少し違うけれど、試合の流れは私にあるのよ。

慌てて起き上がろうとする羽鳥さんの頭に、私はそっと手を置いたわ。

王手ってやつよ。

この距離でなら絶対に外さないし。

簡単な魔術でも確実に羽鳥さんを倒せるわ。

「降参するなら見逃します」

宣告する私に、羽鳥さんは無言のまま静かに頷いてくれたのよ。

「試合終了!勝者、近藤悠理!」

予定とは違うけれど、結果的に試合には勝てたみたい。

もしかするとこういう戦い方もありなのかも知れないわね。

そんなふうにも思いながらも、
誰かに試合を挑まれるのを回避する為に早々に検定会場を離れることにしたわ。
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