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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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勧誘

「さて、と。ちょっと天城君に話があるんだけど、聞いてもらえるかしら?」

「ああ、問題ない」

今日も素直に頷いてくれたわね。

そんな彼の後ろからは、噂の少女が興味深そうに聞き耳を立てているわ。

う~ん…。

何となく気になるわね。

気にしないようにしようと思うけれど。

どうしても視界に少女の姿が入ってくるのよ。

聞きたいのならはっきり聞けばいいのに。

そんなふうにも思うけれど、その一言さえ言いづらいのよ。

ただでさえ天城君に対して気を遣うのに、
彼女の行動にも配慮しながら話を進めるって言うのは精神的にしんどい部分があるわね。

でもまあ、気になるけど気にしないふりをしつつ。

今は天城君との話を進めることにしたわ。

「話したいのは今後のことなんだけど。幾つか質問しても良いかしら?」

「ああ」

迷うことなく即答してくれる彼に、さっそく質問を始めてみることにしたわ。

「とりあえずは、そうね。御堂君から試合について何か聞いてるかしら?」

「いや、今はまだ何も聞いていないな」

あら、そう。

じゃあ、そこから説明を始める必要があるわね。

「御堂君にはすでに伝えてあるんだけど、現在この学園ではあなた達の試合が認められない状況にあるのよ。その理由は防御結界が崩壊するほどの実力を持つあなた達の試合を許可すればまた会場が潰れかねないからなんだけど。学園の総意として、あなた達の試合は許可出来ない状況になってしまっているの」

「なるほどな。それで何が言いたい?」

「まあ、結論から言えば学園では出来ないけれど、他なら問題ないわけ。で、ここからが本題なんだけど…」

頭脳を全力で回転させて、彼の説得を試みることにしたわ。

「来週末に『とある大会』が開催されるんだけど、その大会にあなたも参加してくれないかしら?」

「大会?」

「ええ、そうよ。毎月一度行われる『魔術大会』。その大会にあなたも参加してほしくてお願いに来たわけよ」

「魔術大会か。興味はあるな。内容を聞きたい」

うんうん。

そう言ってもらえると私としても説得のしがいがあるわね。

「国中の学園、総勢32校によって行われるトーナメント方式の対抗戦よ。各学園の主力が集まって5対5の試合を行うんだけど、その内の一人として、あなたに協力してほしくてお願いに来たの。どう?参加を考えてみてくれないかしら?」

この相談こそが、わざわざ天城君に会いに来た最大の理由なんだけどね。

魔術大会への参加をお願いしてみると、
彼は少しだけ考えてから問い返してきたわ。

「残りの4人は誰だ?」

「当然決まっているわ。御堂龍馬、北条真哉、常盤沙織、美袋翔子。この4人は確定よ。」

彼等は過去の大会で学園を優勝に導いてきた表彰すべき生徒達だから外せないわ。

一応前回までは1位から5位の生徒と、
補欠として6位の生徒を選出していたんだけどね。

さすがに今回はその方法だと戦力的に不安があるのよ。

北条真哉と常盤沙織は確定だけど。

あとの戦力では御堂龍馬と美袋翔子の代わりにはなれないからよ。

そこまで説明してから大きくため息を吐いてみる。

「だからね。今回は番号を気にせずに実力だけを考慮してあなたを呼びに来たの。指輪の影響を考慮したとしても、あなたがいればまだまだ優勝の可能性は残るわ」

「他の生徒では不安だと言うことか?」

「まあ、はっきり言うならそういうことね。」

主軸である御堂君が脱落した今。

それを補える生徒がいないことは事実なのよ。

「でもね?御堂君とあなたがいるのなら、私はまだ希望を持てるの」

『大会での優勝』はね。

私の目的の一つでもあるのよ。

「前回で10ヶ月連続優勝を記録してるこの学園があっさりと敗北なんて笑えないし。何より、今月と来月の試合に勝てれば、いまだかつてどの学園も成し得なかった『年間制覇』も見えて来るのよ」

魔術大会の年間制覇。

それこそが私の最大の目的なの。

そのための戦力として御堂龍馬、北条真哉、常盤沙織、美袋翔子等の主力となる生徒達を卒業させずに引き止めているんだから。

ここまできて優勝を逃すわけにはいかないわ。

現状では全体の実力が低下しているとは言え。

ここに天城総魔が参加すれば大会での優勝が見えて来るのよ。

だからこそ何としてでも彼の協力が欲しいの。

「どうかしら?」

問いかけてみると。

「いいだろう。協力しよう」

彼は驚くほど素直に頷いてくれたわ。

「え?ホントに!?いいの?」

「ああ、問題ない」

驚くほどあっさりと参加を認めてくれたのよ。

予想ならもっと渋ると思っていたのに。

どういう心境の変化なのかしらね?

「その大会には各学園の主力が集まるんだな?」

驚く私に、彼は淡々と尋ねてきたわ。

「え、ええ、そうよ。それがどうかしたの?」

「いや、それなら他にも戦い甲斐のある魔術師に会えるかもしれないと思っただけだ」

ああ、なるほどね。

他の魔術師という言葉を聞いて理解したわ。

彼が驚くほどあっさりと参加を受け入れた理由。

それは『他の学園への興味』ということでしょうね。

すでにこの学園を制覇している彼が他の学園に挑むことに興味を持ったとしても、
決して不思議なことじゃないわ。

むしろ更なる高みを目指すために次の舞台として魔術大会を選ぶことが自然なことなのかも知れないわね。

まあ、何にしても参加してくれるのなら話が早いのよ。

「一応、今後の説明をしておくけど、大会の会場でなら御堂君と戦うことも可能よ。あの会場の防御結界は検定試験会場の数倍の効力があるから、そうそう簡単に破壊されることはないわ。その分、魔力の消費が大きすぎて月に一回の大会でしか使用されないんだけどね。だからまあ、ひとまずは優勝を目指してもらうことになるけれど、そのあとでなら自由にしてもらっていいわ」

「つまり、大会終了後に御堂と戦えと言うことだな?」

「命令はしないけどね。そこでしか許可は出来ないわ。もちろん町の外でなんて問題外よ。危険極まりないうえに、被害がでないとは言い切れないもの。だから大会会場での試合を強く薦めるわ。まあ、長期的な考えで待ってくれるのなら検定試験会場の防御結界を向上させて、学園でも試合ができるように手配はさせてもらうけど、その場合はいつになるのかはっきりとしたことは何も言えないわね」

「そうか」

「ええ、そういうことよ」

そこまで話し終えてから。

私はもう一度、天城君の後ろに隠れている少女に視線を向けてみたわ。
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