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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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落ちこぼれの意地

《サイド:近藤悠理》

午後7時50分。

会場の閉鎖まであと10分になったわね。

もうすぐ試合ができなくなる時間だけど。

私は一人の生徒に狙いを定めながらずっとこの時を待っていたのよ。

優奈に別れを告げてから。

翔子先輩と天城総魔に置き去りにされたあの時から。

たぶん私の中で何かが変わったんだと思う。

それが意思なのか、気持ちなのか、感情なのかは、自分でも分からないけれど。

確実に何かが変わったと思うわ。

そのことを実感する自分がいたの。

それはたぶん。

落ちこぼれの足手まといだと考える自分と、
それでも皆と一緒にいたいと考える自分がいたからだと思う。

だから、私は一生懸命に考えたの。

皆と一緒にいる方法はただ一つ。

堂々と向き合える実力を手に入れること。

ただそれだけだから。

ただ仲の良い友達としてではなくて、
ちゃんと仲間だと認めてもらえる力が私は欲しかったの。

だから皆と別れたあの瞬間から、私の本当の戦いが始まったって思うのよ。

誰かに助けてもらうんじゃなくて、自分自身の力で勝ち上がること。

それが私にとって必要なことだって感じたから。

だから私は涙を拭って立ち上がったわ。

ただがむしゃらに試合に挑むんじゃなくて。

本当の意味で皆に追い付く為に。

私は私に出来ることを精一杯頑張ろうって思ったの。

限界を突きつけられたあの瞬間から。

私はただの落ちこぼれであることを否定したのよ。

もちろん、たいした実力がないことは分かってるわ。

考え方が変わった程度で試合に勝てるわけじゃないから。

だけど、それでもね。

落ちこぼれにも落ちこぼれの意地があるのよっ!!

私は決して天才じゃないし。

平均以下の凡人だけど。

だとしても諦めるようなことだけは絶対にしたくないの。

例え頂点を目指す戦いに参加出来るだけの力がなくても、
そこを目指す気持ちだけは持ち続けていたいと思うのよ。

そうすればきっと…

いつかはきっと…

胸を張って皆と笑い会える日が来るはずだから。

私はそう信じてる。

だから私は戦い続ける決意をしたわ。

こんなところで最下位争いに参加してる場合じゃないから。

みんなと一緒にいられるように強くなってみせるってね。

心に誓って、試合場に留まり続けていたの。

それでもね。

今の私に出来ることはそう多くはないわ。

誰の力も借りることが出来ないから、回数をこなすような試合は出来ないからよ。

全力で戦う為にはたった一度の試合に全てを賭ける必要があるの。

だから取り残されたあとは、まだ一度も試合をしていないわ。

だけどね?

それは戦えなかったわけじゃないわよ。

私は私の意思で戦わなかっただけ。

全力で戦う為に、少しでも長い休息をとろうと思ったの。

そして確実に勝ち上がる為に、一人でも多くの生徒の観察を心掛けていたのよ。

この数時間の間にも、数え切れないほどの試合が会場内で行われていたわ。

その試合を可能な限り見学して。

一つでも多くの魔術を覚えて。

一つでも多くの戦い方を身につけようと思ったの。

もちろん思った程度で身につくことなんてほとんど何もないけどね。

幸いにも私に挑戦して来る生徒はいなかったから、じっくり観察することが出来たわ。

あらゆる魔術とあらゆる戦闘。

必死の思いで観察を続けて、
何とか自分のものにしようとして決して賢くはない頭を全力で稼動させながら力を求め続けたの。

そんな中で、私は一人の生徒に目を付けたわ。

すでに3度も試合をしておきながら、それほど疲れた様子を見せない生徒。

生徒番号18070番。

名前は桑原良輔(くわはらりょうすけ)

今の私と比べると1500番以上離れた生徒だけど、私はこの生徒に挑むつもりでいるわ。

相手にするには十分すぎる実力だけど。

試合で確実に消耗しているはずの魔力を考えると私の勝率は上がるはずなのよ。

上位の番号を手に入れる為の相手として十分な存在だと思うわ。

まあ、ちょっぴり卑怯な方法だとは思うけど。

これも作戦の一つとして認められているのよ。

会場内にいる限りは試合の意思があると判断されて、
対戦相手の一人として数えられてしまうからよ。

だから弱っている相手を狙うのは当然の作戦なの。

勝ち上がる為にも。

私の実力の底上げの為にも。

彼に試合を挑んで勝利を掴む!

そう心で決めて、受付に向かってみる。

「あの、試合がしたいんですけど…」

受付で頼み込んでみると、
係員はちらりと時計に視線を向けてから、しぶしぶ私に名簿を差し出してくれたわ。

さすがにこの時間だと、この対応も仕方ないのかな?

だけど、何も悪いことはしてないんだし。

もうちょっと愛想よくして欲しい気はするわよね?

そんなふうに思いながらも名簿の中に記されている生徒の一覧から、
見定めていた生徒の名前を探し出して対戦希望を願い出てみる。

「この人でお願いします」

指差す相手はもちろん桑原良輔よ。

かなり番号が離れているせいで、係員は首を傾げながら手続きを始めたわ。

どうせ勝てないのに、ってそう思っていることがはっきりと見て分かるわね。

その態度には不満を感じるけど、今はそう思われても仕方がないとも思うかな。

少なくとも数時間前までは敗北を繰り返していたんだから。

勝てないと思われたって仕方がないのよ。

だけど今回は勝つつもりでいるわ。

誰がどう思うかなんて関係ないのよ!

私は勝ち上がるんだから!

絶対に諦めてなんかあげない!

私は絶対に駆け上がる!!

そして優奈を追いかける!

必死に心に誓いながら、私は試合場へと向かったわ。
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