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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

306/4820

足りない部分

《サイド:深海優奈》

はぅぅ~。

なんだか緊張してきました。

試合場に立つ私の正面には対戦相手の永瀬友香ながせともかさんがいます。

今朝は美袋先輩から試合を挑まれましたが、
私から試合を挑んだのはこれが初めてです。

初めての挑戦なんです。

恐怖や不安や緊張。

色んなことを考えてしまって、自然と体が震えてしまいます。

あうぅ~。

悠理ちゃん、助けて…。

心細くなって悠理ちゃんに視線を向けてみると、
悠理ちゃんは全力で私を応援してくれていました。

「頑張れ、優奈~っ!!」

応援してもらえるのは嬉しいと思うのですが、それでも恐怖は消えません。

どうしても落ち着かないんです。

そのせいでしょうか?

自然と総魔さんに視線を向けていました。

そして。

総魔さんと目があったと思ったその時に、総魔さんも応援してくれたんです。

「自信を持て」

たった一言でした。

ですが、その一言が私の心に残りました。

自信を持つこと。

それが今の私に欠けていることなのかもしれません。

たぶん。

私に足りていないのはそういう部分なんだと思います。

試合の勝ち負け以上に大切なこと。

そんなふうに自分自身に言い聞かせてみました。

例え勝てなくても全力で戦うこと。

最後まで逃げずに頑張ること。

それが今の私にとって大切なことなんだって思うからです。

だからもう、振り返るのは止めました。

私は…

いえ。

私も前を向いて進もうと思います。

皆と同じ道を進みたいと思うからです。

目を閉じて。

一度だけ深呼吸しました。

次に目を開けた瞬間から、私も歩きだそうと思います。

高みに続く道を…です。

そう思うことで徐々に落ち着く心。

私の中の不安がゆっくりと消えていきました。

そして。

目を開けた私はまっすぐに永瀬さんを見つめます。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ…」

お互いに見つめ合い、ぶつかり合う視線。

それでも視線を逸らすことなく、永瀬さんと向き合い続けました。

もう怖がっている場合ではありません。

ここまで来たら、戦うしかないんです。

そんなふうに考えている間に、審判員さんが進み出てきました。

「準備は良いですか?」

問い掛けられて頷きました。

私と永瀬さんの試合がついに始まるんです。

「それでは、試合開始っ!」

審判員さんが即座に後方に下がりました。

そして私と永瀬さんは、ほぼ同時に魔術の詠唱を始めていました。

ですが…。

自分でも本当にダメだと分かっています。

私は魔術の詠唱が早くないからです。

…というよりも。

とても遅いです。

普通の人の3倍は時間がかかっていると思います。

だから当然、相手の魔術が先に完成してしまうんです。

「詠唱が遅すぎるわよ!サンダー・ストーム!!」

永瀬さんの魔術が発動して、
私の周囲を雷撃の竜巻が包み込みました。

『バチバチッ!!』と、弾ける雷撃。

竜巻が徐々に幅を狭めながら、私を押し潰そうとしてきます。

この竜巻に飲み込まれたら、
どれくらいの痛みに襲われるのでしょうか?

まともに試合をしたことがないのでわかりません。

魔術の直撃を受けたことがないから想像さえできないんです。

だから。

「こ、怖いです…っ。」

再び心の中で膨らむ恐怖。

本当に私の能力が吸収だったら害はないはずなのですが。

もしもそれが違っていたら?

そんな不安を感じながらも、今は懸命に詠唱を続けました。

その間に。

竜巻が私の体を飲み込みます。

「……っ!?」

恐怖を感じて怯えてしまいましたが。

痛みはないまま、雷撃は消失しました。

なんとなくですが。

魔術が私に触れると同時に、
かき消されるかのように消失していったように思えます。

だとしたら。

やっぱりこれが吸収の能力なのでしょうか?

自分でもよくわかりませんが、
少しだけ魔力が増えたようなそんな気はします。

「い、痛くなくて良かったです…。」

痛いのは怖いです。

だから何も起きなくて良かったです。

ひとまず無事だったことで、
完成した魔術を永瀬さんに向けて発動させてみることにしました。

「ダンシング・フレアっ!」

発動の直後に現れるのは巨大な炎です。

美袋先輩から吸収して身につけた魔術でもあります。

荒れ狂う炎が永瀬さんの体を飲み込みました。

「いっ、いや~~~~~~っ!!!」

絶叫というのでしょうか?

私の放った一撃で、
永瀬さんは力尽きて倒れてしまいました。

「試合終了!勝者、深海優奈!」

審判員さんの宣言によって、
私は試合に勝てたようでした。
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