挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

292/4820

2秒

「最初から本気で行くぞっ!!ホーリー!!!」

詠唱を終えて所長さんの両手から放たれた光は、
総魔さんの頭上に集まってから雲のように形を変えました。

…そして…。

一筋の光の雷が総魔さんに落ちたと思った次の瞬間に。

数え切れないほどの光が容赦なく降り注いだのです。

無差別に降り注ぐ光の落雷とでも表現すればいいのでしょうか?。

その全てが総魔さんだけに落ちているわけではないのですが、
確実に直撃している光もあるはずです。

それなのに…。

光の雲の下にいる総魔さんは倒れる様子も傷を負った様子さえもありません。

光の中でただ静かに所長さんへと向けて、右手を突き出していました。

その右手の前方。

総魔さんの手に触れるか触れないかという微妙な位置に現れる別の光。

その光は赤く輝いているように見えます。

魔術を変換しているのでしょうか?

私には理解できませんが。

今もまだ光が降り注いでいる中で、
総魔さんは一切気にした様子も見せずに堂々と光の中で立っていました。

まるで雨に打たれているだけのような、そんな雰囲気です。

ただそれだけのことのように、総魔さんは平然と立っています。

そして冷静に右手に力を込めていた総魔さんは、
実験の成功を訴えるかのように全く異なる魔術を解放しました。

「ダンシング・フレア!」

総魔さんが宣言した直後に。

赤い輝きを放つ光が勢いよく燃え上がって、所長さんへと放たれました。

それは踊り狂う膨大な炎で、私も一度だけ使ったことのある大魔術です。

翔子先輩との試合で覚えた魔術でもあります。

あの時と同じ魔術が所長さんに襲い掛かりました。

「…ちっ!?」

所長さんに迫る炎。

目前に迫り来る炎に対して、
所長さんは次に用意していた魔術を発動させました。

「ファルシオン!!!」

膨大な冷気が発生して、総魔さんの炎を打ち消します。

炎と冷気。

二つの力がぶつかり合って、
目を覆いたくなるほどの蒸気が周囲に広がりました。

そのまま互いに消滅する炎と冷気。

それとほぼ同時に光の雲も消失しました。

蒸気が収まって、視界が広がる実験場。

互いに無傷のまま向かい合う二人。

これだけの大魔術を使える所長さんも凄いとは思いますが、
その大魔術を変換した総魔さんもとんでもない実力の持ち主だと思います。

「すごい…です」

予想以上の出来事を見て驚きました。

そして研究所の皆さんも私と同じように一言も発することなく、二人の姿をじっと眺めています。

…なのに…

互いに向かい合う二人だけはどこか楽しそうな表情に見えました。

「ふむ。実験は成功ということかな?」

呟く所長さんですが。

「だが、一度だけでは実験記録としては物足りないな」

まだ満足してはいないようですね。

所長さんは新たな魔術を詠唱しました。

「これならどうだ?ビッグ・バン!!!」

所長さんが魔術を発動させた瞬間に。

『ヒュンッ』と、とても小さく風を切る音が聞こえました。

そしてその音が聞こえたと思った直後に。

総魔さんを中心として、まるで爆弾が爆発するかのようなとても大きな炸裂音が室内に響き渡りました。

耳が痛くなるほどの爆発音。

傍で見ているだけで怖くなってしまうほどの威力を秘めた風の爆発です。

おそらく風系統最高位の魔術だと思います。

ですが。

不可視の破壊の直撃を受けたはずの総魔さんは破壊の影響の中心にいながらも
全くと言っていいほど影響を受けていないようでした。

それどころか。

そうすることが当たり前のことのように。

風が収まると同時に。

突き出したままの右手から先程とは違う光を生み出したんです。

「『変換』に要する時間が最速でも2秒ほどかかってしまうのが欠点か…」

たった2秒なんですか!?

欠点を呟いた総魔さんですが、その言葉を聞いたことで私は驚きました。

現時点でもすでに凄いことなのに、
それでも総魔さんは満足していないからです。

「やはり高速化の力を封印した影響があるのだろうな」

高速化?

私には聞き慣れない言葉ですが、
同じように総魔さんの言葉を聞いていた所長さんはすぐに理解したようでした。

「なるほどな。時間差は発生するか、ならば…」

所長さんが両手を頭上へと掲げました。

「どこまで耐え切れるのか見せてもらおう」

迷うことなく、全力で魔術を発動させているようです。

「ありったけの『圧縮魔術』を展開するぞ!!」

大声で宣言した所長さんですが、
圧縮魔術というのは何でしょうか?

それも私の知らない言葉です。

ですが。

答えはすぐに分かりました。

「行くぞっ!!」

所長さんの両手から、次々と放たれる魔術。

一切の詠唱もなく。

間隔をおかずに放たれる魔術が次々と総魔さんに襲い掛かっていったのです。

「ふっ。面白い」

微かに笑みを浮かべる総魔さんは、
右手に光を発動させて迫り来る魔術を相殺しながら、
残った左手で次々と所長さんの魔術を掴みとっていきました。

…炎…冷気…風…光…闇…雷…。

ありとあらゆる魔術が総魔さんに襲い掛かるのですが。

総魔さんは臆することなく魔術に向き合って、全ての魔術を奪い取っていきます。

その姿はまるで神様のようです。

誰にも真似できない奇跡を極自然な出来事のように…。

あらゆる魔術を変換していったのです。

そして最後の魔術も掴み取ってから。

総魔さんは所長さんに向けて魔術を発動させました。

「ホーリー!」

一番最初に所長さんが使った魔術を、総魔さんは最後に放ったんです。

「ちっ!さすがに、これは…っ!?」

恐怖に表情を歪める所長さんが残された力を振り絞って魔術の詠唱を始めました。

ですが。

その瞬間にも所長さんの頭上には光の雲が出来上がって行きます。

「間に合えっ!シールドっ!!」

所長さんの魔術が発動すると同時に、
光の雷が所長さんの頭上へと降り注ぎました。

そして最初の光の雷が所長さんへと落ちた次の瞬間に。

容赦なく降り注ぐ光の雷が所長さんへと襲い掛かったんです。

「くっ!?」

守りを固める所長さんは残り僅かなの魔力を結界へと集中させて、全ての光から耐え抜きます。

ですが、その結果として…。

「情けない姿を…晒すか…」

ホーリーが消失すると同時に力尽きた所長さんが実験場へと倒れ込んでしまいました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ