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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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拒絶

《サイド:御堂龍馬》

うぅ~ん。

なんだろう?

この微妙な空気は…。

どうしてかは分からないけど。

尋常じゃないほど居心地が悪い気がするよね?

ものすごく重苦しい雰囲気を翔子から感じてしまうんだ。

どうかしたんだろうか?

何かあったんだろうか?

怒っているようには見えないんだけど。

何故か強烈な威圧感を放っているように感じてしまう。

どうしたのかな?

聞いてみたい気がするけれど。

今は話し掛けることさえも許されないような、そんな異様な圧迫感があった。

近づけない雰囲気っていうのかな?

下手に話し掛けて翔子と視線を合わせようものなら、
命に関わるような危険を感じると思う。

きっとそうなる。

そう思えたんだ。

こういう気配を殺気と言うんだろうか?

実際にどうかは知らないけれど、話しかけるのは止めておこうと思う。

翔子に関してはこのままそっとしておくことにしよう。

まずは彼に話し掛けることにした。

「彼女は本当に吸収の能力を持っているのかい?」

「ああ、間違いない。」

僕の問い掛けに頷いてから、彼は説明を始めてくれた。

「俺もこの目で確認したからな。疑いようはない。吸収の力が働いていたはずだ。ただ…」

一呼吸の間を置いてから、彼は言葉を続けた。

「俺の力と同じだとは言えないだろうな」

ん?

同じじゃない?

彼が宣言した瞬間に。

「えっ!?」

翔子も疑問を感じながら彼に振り返っていた。

「どういうことなの!?」

戸惑う翔子だけど、その気持ちは僕も同じだ。

同じ吸収の力を持っているはずなのに、同じ能力じゃない?

一体、どういう意味なんだろうか?

彼の説明を聞きたくて、言葉の続きを待つことにする。

そんな僕達に彼は理由を教えてくれた。

「俺が扱える吸収の能力は、あくまでも魔術としての属性だ。だが、深海優奈は違う。確認した吸収の能力は特性に近い」

ん?

特性?

彼は属性で彼女は特性?

その違い?

だとすれば余計に分からなくなってしまう。

この違いはどういうことなんだろうか?

「全然、分かんないんだけど?」

悩む翔子に、彼が説明を続けていく。

「俺の吸収の能力は魔術によって起こせる現象でしかない。ホワイト・アウトかルーンを使用しなければ吸収の能力は発動しないからな。だが、深海優奈の吸収には魔術が関与していなかった」

「あ…っ!」

彼の言葉を聞いた瞬間に。

何かを思い出した翔子が深海さんに振り返った。

「確かに優奈ちゃんは魔術を使ってなかったわ。それは断言出来る」

「…あ、はい。すみません」

翔子に見つめられたことで、深海さんが即座に謝っている。

話しかけられるのが苦手なのかな?

それとも翔子が怖いのかな?

うーん。

どうだろう?

あるいはその両方かな?

特に謝る必要はないんだけど、反射的に謝ってしまったようだ。

そんな深海さんを翔子がまじまじと見つめてる。

ただそれだけのことで縮こまってしまう深海さんは、
このまま放っておくと緊張しすぎて倒れてしまうんじゃないかな?

色々と心配になってくるけれど。

初対面だからね。

あまり性格に関しては聞かない方がいいと思う。

それよりも今は彼に話を聞くのが先決だ。

「きみと彼女の違いは何となく理解出来る。だけど、もしも本当に別のものだとしたら、彼女の力は何なんだ?」

尋ねてみたことで、彼は深海さんを眺めながら答えようとしていた。

だけど、はっきりとした答えは出さなかった。

「おそらくは…いや、確証のないことは言わないほうがいいだろう」

答えを避けて口を閉ざしている。

それでも。

今の発言を考慮すれば彼が何らかの仮説を立てていることは間違いないはずだ。

ただその仮説を実証するだけの根拠がないことで、
勝手なことは言えないという考えのようだね。

それはまあいいんだけど。

その結果として。

彼が口を閉ざした為に、話が止まってしまうことになってしまった。

無理に聞き出すことは出来そうにない。

その権限が僕にはないからね。

そもそも誰の指示も受けそうにないけど…。

彼に強制はできないからだ。

だけど今回は僕達が問いかける前に彼が考えを教えてくれた。

「現段階ではまだ確実なことは言えないが、ある程度の実験を重ねれば確証は得られるだろう」

実験、か。

「どうする?」

彼が深海さんに問い掛けている。

「自分の力が何なのか、知りたいと思うか?」

彼からの問い掛けに、深海さんは戸惑いながらも小さく頷いた。

「はい。もしも出来るのなら…」

知りたいと願うようだ。

控えめに願う深海さんの言葉を聞いたことで、彼は静かに立ち上がった。

「良いだろう。その気があるのなら力を貸そう」

「え?本当ですか!?」

期待の眼差しを向ける深海さん。

その直後に。

再び強烈な威圧感が翔子から放たれ始めた。

うわぁ…。

再び訪れた重苦しい雰囲気。

こういう時にどうすればいいのかが分からない。

翔子に話しかけるべきなんだろうか?

それともそっとしておくべきなんだろうか?

どちらが正解なのかわからないけど。

ひとまず僕は話の流れを変えるために、彼に話し掛けることにした。

「手を貸すと言っても、どうするつもりなんだ?」

「研究所で実験をする。おそらくそれだけで優奈の特性が判明するはずだ」

「きみにはもう、彼女の答えが何なのか分かっているのかい?」

「ああ。今はまだ仮説でしかないが、核心に近いとは思っている」

僕の質問に答えてから、彼は歩きだした。

「行くぞ」

「あっ、はいっ」

彼に呼ばれたことで、
深海さんが慌てて後を追い掛けていく。

そして。

「だったら、私も…っ!」

急いで駆け寄ろうとした翔子だったけど…。

「必要ない」

その前に彼が拒絶してしまった。

「…ぇ…っ!?」

戸惑う翔子の動きが止まる。

そんな翔子に振り返ることさえせずに、彼は言葉を続けた。

「今から行うのは吸収の実験だ。翔子がついて来ても時間の無駄でしかない」

いや…。

それは、どうなのかな?

ついていくくらいは自由じゃないかな?

そもそもの前提としてついていかないことに無駄がないとも言い切れないしね。

僕としてはそう思うんだけど。

まあ、考え方は人それぞれだからね。

僕が口出しすることではないと思う。

「翔子は翔子のやるべきことをすればいい」

「………。」

簡潔に答えた彼の言葉を聞いて、翔子は完全に動きを止めてしまっている。

その後も歩き続ける彼と深海さん。

そんな二人の背中を見送る僕と近藤さん。

この状況で恐れることなんて何もないはずだ。

それなのに。

どうしてだろうか?

何故かさっきよりも強烈な威圧感が、翔子から放たれているような気がしてしまうんだ。

僕の頬を流れ落ちる汗が正体不明の恐怖を物語っているかのように、ね。

「し…翔、子?」

声をかけてみた僕に、翔子がゆっくりと振り返った。

「ん、なにかな?どうしたの?りょうま。」

必要以上に滑舌よく答える翔子の表情には一切の感情が感じられなかった。

そのせいだろうか?

翔子の瞳に恐ろしいほどの『怒り』が込められているような気がしたんだ。

「え、あ、い、いや。なんでもないよ」

あまりの迫力に負けてしまった。

これ以上翔子に話し掛けることが出来なくなってしまったんだ。

翔子を見てこれほどの恐怖を感じたのはこれが初めてかもしれない。

だから、というわけではないけれど。

何気なく視線を逸らしてみると。

やはり怯えた雰囲気で翔子から視線を逸らす近藤さんが見えた。

どうやら翔子が怖いと思うのは僕だけじゃないようだ。

深海優奈さんがいなくなったことで、
一人残されてしまった近藤さんも居心地が悪そうに視線をさ迷わせている。

うーん。

どうしようか?

翔子を放置するわけにもいかないし。

かと言って話し掛けられる雰囲気でもないし。

それに近藤さんをこれ以上この場に留まらせるのも可哀相な気がするよね?

「えーっと。近藤悠理さん、だったかな?深海さんは行ってしまったけど、きみはこれからどうするんだい?」

「ぇ?私?あ、あ~。まあ適当に…」

返事に困る様子で言葉を濁している。

だけどしばらく考えてから僕に話し掛けてきたんだ。

「とりあえず悠理でいいよ。先輩から悠理さんって呼ばれると何だか変な感じがするし」

「ああ、わかったよ。悠理と呼ばせてもらうね。まあそれはそれとして、このあとに予定はあるかい?」

「ううん。別に何も…」

悠理は首を左右に振っていた。

予定はないようだね。

僕としてはここで別れてしまってもいいんだけど。

深海さんが同行しているのなら彼が帰ってくる頃にまた悠理とも合流するような気がするから、
ここで一つ提案をしてみることにした。

「それなら僕達と一緒に会場に戻らないか?彼の実験がいつ終わるのかは分からないけれど、深海さんも一緒にいるのなら、僕達と一緒に入ればあとで合流出来るだろうからね」

「あ~、うん。そうかもね。」

納得してくれたようで、しっかりと頷いてくれた。

「…じゃあ、そうしようかな?」

「ああ、よろしくね」

「こちらこそ、お願いします」

「うん」

こうして残された僕達はひとまず検定会場に戻ることになったんだ。

今もまだ危険な空気を放ち続けている翔子を引き連れながら…ね。
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