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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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全く同じ

「それでは、試合、始めっ!!」

審判員の合図と共に即座に魔術の詠唱を始めてみる。

対する優奈ちゃんはあたふたと慌てながら魔術の詠唱を開始していたわ。

だけど、明らかに遅すぎるわね。

緊張と不安で混乱状態の優奈ちゃんの詠唱は一言で言うと鈍足級?

こっちが頭を抱えたくなるほどとても遅くて、
まだまだ試合で戦える実力じゃないように思えたわ。

だから、手早く終わらせることにしてみる。

「…ごめんね。フレア・アローっ!!」

ちょっぴり申し訳ない気持ちで放つ炎の矢。

数十本の炎の矢が優奈ちゃんの頭上から降り注いだわ。

「…あ…っ! ?」

優奈ちゃんの表情が恐怖に染まっていく。

見た感じ逃げる余裕もなさそうね。

動きを止めてしまった優奈ちゃんに私の魔術を回避する術はないと思う。

だから当然のことのように複数の炎が優奈ちゃんを飲み込んだわ。

「…ぅ、ぁ…っ!?」

次々と降り注ぐ炎の矢。

ほとんどの炎が優奈ちゃんに直撃したはずよ。

衝撃を受けて後方に吹き飛ばされた優奈ちゃんは
試合場に倒れ込んで苦しそうに何度も咳込んでた。

うわ~。

これでもまだやりすぎだったのかな?

手加減しきれなかったことで戸惑う私だけど。

ゆっくりと体を起こす優奈ちゃんの姿を見た瞬間に。

「…え、っ!?」

確かな『恐怖』を感じてしまったわ。

ふらつく足取りで立ち上がる優奈ちゃんの様子がおかしかったからよ。

吹き飛ばされた影響で軽い擦り傷は負ってるみたいだけど。

何故か炎による影響は一切感じられなかったの。

「何で!?」

炎を浴びたはずなのに火傷一つないのよ?

どういうことなの?

戸惑う私に答える余裕すらない優奈ちゃんは精一杯の力を込めて必死に魔術の詠唱を再開してる。

けれど…。

やっぱりその速度は呆れるほど遅いわ。

とても魔術の相殺なんて出来るはずがないのよ。

だから間違いなく断言出来る。

優奈ちゃんは私の魔術の直撃を受けたはずなのよ!

それなのに炎の影響がないみたい。

どういうことなの?

さっぱり意味が分からないわ。

何が起きたのか分からないけれど。

私の放った炎が何の影響も与えなかったのは間違いないでしょうね。

だったら、もう一度!!!

確認の為に次の魔術を発動させてみる。

「ライトニング!!」

優奈ちゃんの魔術が完成する前に私の魔術が襲い掛かる。

私の右手が光を放ち。

放たれた光が一筋の雷撃となって優奈ちゃんを襲ったのよ。

「ぃ、や…ぁっ…!?」

怯える優奈ちゃんの体に雷撃が直撃する。

一瞬の放電。

私の放った魔術は確実に優奈ちゃんに直撃していたわ。

今度こそ間違いないはず!

自信を持って断言できるわ。

だけど雷撃を受けた優奈ちゃんは倒れなかったのよ。

それどころか。

今回は衝撃がそれほどでもなかったのか、吹き飛ぶようなこともなかったわ。

だけどね。

だからこそ、私は再び驚愕してしまったのよ。

「う、うそ、でしょ…っ?」

恐怖に怯える優奈ちゃんからは全く想像も出来ない現象なのよ。

私の放った魔術が全く影響していなかったの。

何でなの!?

驚き戸惑う私が動きを止めている間に、優奈ちゃんの魔術が発動したわ。

「ファイアー!!」

単純な炎の魔術ね。

初心者でも簡単に扱える魔術なのよ。

とても小さな炎が私に迫り来る。

だけど、この程度なら相殺する必要もないわ。

「邪魔よっ!」

理解できない現象に微かに苛立ちながら、
向かい来る炎を叩き落としてから新たな魔術を発動させたわ。

「ダンシング・フレア!!!!」

放ったのは炎系最強の魔術。

踊り狂う膨大な炎が優奈ちゃんの小さな体を飲み込んだのよ。

「ぃ、いやぁ~~~~っ!!!」

うわっ!

しまった!?

やり過ぎたっ!!

優奈ちゃんの叫び声が聞こえた瞬間に理性を取り戻したけれど。

すでに手遅れだったわ。

後悔を感じたことですぐに優奈ちゃんと駆け寄ろうとしたんだけど…。

「そんなっ!!」

僅か数歩だけ踏み出してから私は動きを止めてしまったわ。

自然と唇を噛み締めてしまうわね。

彼女が…優奈ちゃんが無傷のまま炎の中で立っていたからよ。

「なんでっ!?」

戸惑う私と同じように、近くにいる審判員も驚愕の表情を浮かべているわね。

嘘でしょ?

こんな…こんなことってありえるの!?

恐怖に震える体。

そんなはずはないと思いながらも、私の体は『その事実』に気づいて震え出してしまう。

認めたくない!!

そう思う心に反して、体は恐怖を覚えているのよ。

「ありえないわっ!」

必死に思い込もうとしても、体が言うことをきかなかったわ。

体が…心が…魂が…。

その全てが事実を訴えているのよ。

ゆっくりと歩みを進める優奈ちゃん。

恐怖に怯える優奈ちゃんの表情からは想像も出来ない事実を私は知ってる。

彼女の力の『正体』を私は知っているのよ。

ガクガクと震える体。

優奈ちゃんの感じている恐怖以上の絶望が私の心を包み込んでいく。

嘘でしょ…?

まさか…。

まさか…!

まさか…っ!?

他にもいたなんて!!

総魔の他にも、いるなんて…。

絶望を感じたことで怯えながら総魔に視線を向けてみると。

総魔は真剣な眼差しで試合場をみつめていたわ。

だけど、総魔の目は私を見てなかったのよ。

総魔の視線の先にいるのは優奈ちゃん。

予想もしていなかった事実に驚いているのは、
もしかしたら総魔も同じなのかも知れないわね。

そう思って優奈ちゃんに視線を戻してみると。

すでに優奈ちゃんは魔術を完成させていたわ。

「冗談…でしょ…っ?」

完成した魔術は優奈ちゃんの実力で扱えるようなものじゃなかったわ…。

「ダンシング、フレア…?」

恐る恐る魔術を発動させる優奈ちゃんの両手から、
私が放った魔術と『全く同じ』荒れ狂う炎が放たれたのよ。

炎系最強の魔術が私に襲い掛かってきたの。

「う、ぁ、しまっ…た…!」

動きを止めていたせいで回避が間に合わなかったわ。

今から魔術の詠唱をしても、間に合うわけがないでしょうね。

その事実に気づいた私は再挑戦の第1試合目において、
ぶざまな敗北をさらすことになったのよ。

「ああああああ~~~~~っ!!!」

炎にのまれて倒れ込んでしまったわ。

そんな私を優奈ちゃんは戸惑った表情のままで不安げに見つめてる。

くっ…。

うぅ…。

「総、魔ぁ…っ」

助けを求める視線を向ける私を、総魔はただじっと見つめてた。

感情の読めない瞳で、私を見ていたのよ。

「ごめんね…総魔。」

私、負けちゃた。

急速に失われる意識。

全然届かない距離にいる総魔に手を伸ばしたまま。

私はそのまま力尽きて倒れてしまったわ。
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