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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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何日ぶり?

「………。」

相変わらず不安そうなまま試合場に入る優奈ちゃんの表情ははっきりと分かるくらい怯えてるわね。

大丈夫かな?

本当に試合できるのかな?

って言うか、泣いちゃうんじゃないかな?

色々な意味で不安を感じるんだけど。

優奈ちゃんとしては逃げるつもりがないみたい。

「頑張れ優奈!」

応援してくれる女の子に優奈ちゃんは笑顔を返してた。

「う、うん。頑張るよ、悠理ちゃん」

少しだけ見せた笑顔はとても魅力的な輝きをもっているように思えたわ。

何て言うのかな?

花開くっていうのかな?

とっても可愛く思えたのよ。

まあ、そんなことはどうでもいいんだけど。

試合場で向かい合う私と優奈ちゃんの間にある空気は微妙な感じね。

もうちょっとこう前向きな感じになってくれるとありがたいんだけど。

現状は私が優奈ちゃんを虐めてるような雰囲気になっちゃってるわ。

う~ん。

こういう状況を望んで試合を組んだわけじゃないんだけどね~。

ちょっぴりため息を吐きながら試合開始を待ってみると。

ようやく審判員が試合場の中央に歩みを進めてきたわ。

そして試合が始まるという緊張感の中で、
可哀相なくらい体が硬くなってしまってる優奈ちゃん。

その姿が何故か少し懐かしく思えるわね。

私にもこういう時期があったのよ。

今ではもう覚えていないけどね。

誰だって初めてなら緊張して当然なのよ。

優奈ちゃんだけを責めることは出来ないわ。

だから一度だけ深く深呼吸してから優奈ちゃんをまっすぐに見つめてみる。

気持ちを切り替えて真剣に試合に挑むためよ。

…って言っても。

もちろん全くの初心者相手に全力を出すつもりはないわよ?

彼女には悪いけれど。

限界まで手加減して軽く勝利するつもりでいるわ。

ただ、ね。

こうして総魔以外の生徒と試合をするのは何日ぶりだっけ?

なんてね。

何気なくそんなことも考えちゃったわ。

だけど今は優奈ちゃんを泣かせないことが優先よ。

決して負けるはずのない試合。

一瞬で試合を終わらせるつもりでいるわ。

「準備はいいですか?」

審判員の質問に私は黙って頷くだけなんだけど。

「…あ、は、はい。大丈夫、です」

優奈ちゃんはオドオドとしながら小さく返事をしていたわ。

かすれるような声ね。

成美ちゃんと良い勝負かも?

もしかしたら私が思う以上に緊張してるのかもしれないわ。

「頑張れ~!!」

悠理と呼んでいた女の子の声援に対して、ぎこちない微笑みを返す優奈ちゃん。

今はもう笑顔を見せる余裕もないみたいね。

本当に大丈夫なのかな?

なんだかこっちの方が不安になってくるわ。

試合が終わってから泣かれでもしたら、とてつもなく気まずい感じがするだけよ。

はぁ…。

本気でやめとけばよかったかも?

自然と出るため息が止まらないわ。

それでもね。

ここまで来た以上は後戻りなんて出来ないわ。

諦めにも似た心境で試合に臨むしかないのよ。

ある意味、とてもむなしい試合が始まってしまうことになったわ。
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