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THE WORLD 作者:SEASONS

4月7日

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選び放題

《サイド:美袋翔子》

総魔と二人で食堂で朝食を終えたあと。

とりあえず第12検定試験会場に移動してから受付に向かってみたんだけど。

「…ん?あれって、龍馬よね?」

受付にはすでに龍馬がいたわ。

「おはよう!龍馬」

「え?あ、ああ。翔子か。おはよう。それに、きみも一緒なんだね」

龍馬は総魔にも挨拶をしてたけど、
総魔は頷いただけで特に言葉は返さなかったわ。

…って、あれ?

そういえば私も今日はちゃんと挨拶してなかったような気がするかも?

寮の入口で、ぼけ~っとしてたから挨拶し損ねてたのよね。

はぁぁぁ…。

毎日のささやかな楽しみだったのに、すっかり忘れてたわ。

あぅぅぅ~。

ちょっぴり後悔を感じるけれど。

いまさらここで挨拶っていうのも無理があるわよね?

総魔は笑ってくれるかもしれないけど。

龍馬は不思議に思うでしょうし。

だからまあ。

過ぎたことは忘れて龍馬に話し掛けることにしたわ。

「龍馬もここからって感じ?」

「ああ。ちゃんと最初からやり直すつもりだよ」

さすが龍馬ね。

私とは違うわ。

「龍馬はちゃんと自分で考えて行動してるのね~」

「あれ?翔子は違うのかい?」

「あ~、うん…。私はさっくり上を目指せば良いかな~?なんて考えてたから」

ここに来ようなんて考えは全くなかったのよ。

だから笑ってごまかそうとしてみたんだけど。

そんな私を見た龍馬は楽しそうに笑ってた。

「ははっ。それでもいいんじゃないかな?どういうやり方でもいいと思うよ。結果さえ出せればそれでいんだからね」

まあ、ね~。

それはそうなんだけど。

「ちゃんと出せるのかな~?」

自信がないのよね。

「出来ると思う?」

「うーん。どうだろうね?それは翔子の…いや、僕達の努力次第だよ」

それは分かってるんだけどね。

分かってはいるけど不安は消えないのよ。

まあ、それはきっと龍馬も同じだと思うけどね。

「そういえば沙織はいないの?」

てっきり龍馬と一緒にいるかと思ってたんだけど。

周囲には見当たらないわ。

「今日は一緒じゃないの?」

「いや、違うよ。沙織なら今日も研究所に向かったんじゃないかな?僕達と違って沙織はここに用はないからね」

ああ、そっか。

それもそうよね。

用がないのに会場に来ても仕方がないわよね。

「それでも応援くらいは来てくれるかな?って思ってたんだけどね~」

期待はしてたけど。

そこまでは無理みたいね。

「仕方がないよ。こうして僕達が自由に行動できる代わりに、沙織の負担は大きくなってるはずだからね。のんびりと応援なんてしていられないさ」

あ~、うん。

まあ、そうよね…。

これ以上、沙織に迷惑はかけられないわ。

だから出来る限り早く成績を上げて、
特風の仕事ができるようにならないとね。

「それじゃあ、始めよっか?」

気合を入れて受付に進んでみる。

隣の受付では龍馬も手続きを始めてるけれど…。

何故か総魔は動かなかったわ。

「あれ?総魔は?」

受付で手続きをする様子のない総魔に訊ねてみると。

「俺は少し様子を見る」

総魔は受付から離れてしまったのよ。

う~ん。

今はまだ試合をしないみたいね。

「別にいいけど。参加しないなら、応援よろしくね♪」

「ああ」

あっさりと受付から離れちゃったけれど。

応援は引き受けてくれたのよ!

以前とは立場が逆になった気がするけどそんなことはどうでもいいわよね。

総魔が応援してくれる♪

それだけで俄然がぜんやる気が出るわ。

「それじゃあ、先に行ってるよ」

気合い十分の私の横で、手続きを終えた龍馬が受付を離れてく。

「頑張ってね~」

「ああ、お互いにね」

私達に背中を向けた龍馬はしっかりとした足取りで試合場に向かって行ったわ。

その後ろ姿を見送ってから、
私は私で生徒名簿に視線を向けてみる。

ん~。

私の場合。

ほぼ最下位といえる番号だから。

名簿には龍馬と総魔の二人以外の生徒の名前がずらっと記されていたわ。

これはこれで選び放題よね?

ちょっと前までだと3人しか選べなかったのよ。

龍馬と真哉と沙織だけで。

あとは全員、格下だったわ。

それなのに今は私が格下扱いなのよね~。

下から3番目ってどうなの?って思ったりはするわ。

でもまあ。

自分で望んだことだから不満はないけどね。

とりあえず現状で言うと。

開かれたばかりの会場でもざっと100人以上の生徒が集まってるみたいね。

その中から対戦相手を選ぼうと考えて、適当に視線を泳がせてみる。

どうせなら女の子がいいかな?

総魔の前で男子をボコボコにするのはちょっと…ね。

好感度が下がりそうな気がするわ。

…と言うか。

女の子が相手なら手加減もしやすいしね。

あんまり残酷な試合にはならないと思うのよ。

で、まあ。

そんなことも考えながら、それ程番号の高くない生徒を選んでみる。

私の番号は21396番なんだけど。

対戦相手に選んだ女の子は21218番の深海優奈(ふかみゆうな)さんよ。

名簿の中で、女の子としては私より一つ上ね。

私達の間には男子が5人ほどいるけど、今回は除外よ。

だけどまあ、200も離れていないから。

普通に考えればお互いの実力差はあまりないはずよ。

普通なら、ね。

だけどどう考えても私の方が魔力も経験も圧倒的に大きいわけだから、
まともに戦えば勝つのは決まっているわ。

もちろん勝ち負けよりも潜在能力を探す方が優先なんだけど。

それでも今は具体的にどうすればいいのか分からないままなのよね~。

と言うか。

そもそもこの会場にいるのは基本的には新入生ばかりなのよ?

まともに魔術に関する知識も経験もないような生徒ばかりだから、
よくよく考えればちゃんとした試合になるはずがないわ。

「どうすればいいと思う?」

総魔に尋ねてみる。

すると、総魔は意外な言葉を口にしたわ。

「おそらく翔子が考えている通りだ。ここで得られる経験に価値があるとは思えない。だから今は数をこなすつもりで気楽に行けばいい」

あ~。

やっぱりそうなのね。

総魔にも価値がないって言われたことで、一気に肩の力が抜けたわ。

総魔も同じことを考えてるって思えただけで、一気に緊張感が消え去ったのよ。

「おっけ~!それじゃあ、気楽に行ってみるわね」

笑顔を浮かべて前に進んでみる。

そんな私の後ろに総魔がついて来てくれてる。

ただそれだけのことですごく幸せな気がしたわ。
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