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THE WORLD 作者:SEASONS

4月6日

221/4820

疑問

《サイド:美袋翔子》

黒柳所長と別れたあとで、
私と総魔はルーン研究所の通路を歩いてる。

周囲には誰もいないわ。

たまに職員とすれ違うことがあるけれど、
それも一瞬だけですぐにまた二人きりに戻っちゃう。

そんな二人きりの状況にちょっぴり緊張しちゃうけど。

黙ってると余計に落ち着かないから、
隣に並ぶ総魔に話し掛けてみることにしたわ。

「ねえ、総魔?」

呼び掛けてみると、総魔は足を止めて振り返ってくれたわ。

「どうした?」

どうって言うか。

「正直な話を言うと、イマイチ話の内容が理解出来なかったんだけど…」

もう一度説明してほしいな~なんて。

ちょっぴり言い出しにくくて後半部分は言いよどんでしまったんだけどね。

それでも総魔は微笑みを浮かべながらまっすぐに私の目を見つめてくれていたわ。

「何が知りたい?」

う~ん。

何が、っていうか。

それ自体が分からないというか…。

「何を聞けばいいのかもわかんない感じかな?」

戸惑うばかりの私に。

「黒柳に聞きたいことは幾つかあったが、本当に知りたいことは一つだけだ」

総魔はちゃんと答えてくれるみたい。

「どの質問も一つの答えにたどり着く為の過程かていだと思えばいい」

「過程?」

首を傾げてみる。

過程って道筋みたいなものよね?

で、答えにたどり着くためっていうことは、
質問そのものが答えを知るための穴埋めだったっていうことかな?

「よくわからないけど、総魔はその答えにたどり着いたの?」

「ああ、一応な」

総魔はさっきと変わらない口調で説明し始めたわ。

「重要なのはルーンの真の定義は何か?ということだ」

「真の定義?」

「今までずっと疑問に感じていたことがあった。それが現在の仮説に基づいているんだが…」

言葉を区切った総魔が突然私の手をとったのよ。

その行動にちょっぴり驚いちゃったけど、
私が何かを言う前に手のひらを広げさせたわ。

「翔子のルーンの特性は何だ?」

「え?私の特性?えっと、光?」

戸惑いながら答える私に、総魔は質問を続けてくる。

「御堂龍馬の特性は?」

「それは支配でしょ?」

「常盤沙織は?」

「全属性よ」

即答していく。

それでも総魔は質問を止めなかったわ。

「北条真哉は?」

「あいつは速度よ」

「次が最後だ。俺の特性は?」

「総魔は吸収でしょ?」

そこまで答えたあとで。

何故か総魔は私から手を離したわ。

「ここまでの質問で何か疑問を感じなかったか?」

「え?なんだろ?」

さっぱり分からないわ。

何が言いたいのかな?

困り果てる私に。

「少し考えればわかることだ」

総魔はちゃんと説明してくれるみたい。

「御堂龍馬、北条真哉、常盤沙織。この3人は明らかに特性と言える力を持っているだろう」

ん?

3人?

よく分からないけど、何か疑問を感じた気がするわ。

それが何なのかは上手く言葉に出来ないけど。

何かがおかしいって思えたのよ。

「だが、俺と翔子の力は特性とは言い難い」

え?

「何で?」

まだ理解が追いつかなかったわ。

「分からないか?御堂達とは違って、俺達の力は属性だと言うことだ」

「あっ!?」

ああああああああっ!!!!!!

やっと分かった!!

総魔の言いたいことが、やっと私にも理解出来たのよ。

「俺達の力は属性であって能力と言える。これは特性と呼ぶには少しずれがあるはずだ」

確かに…。

私の『光』と総魔の『吸収』。

どちらも属性であって、特性と言えるものじゃないかもしれないわ。

「じゃあ、私達の特性って何なの!?」

「それは俺にも分からない。だが、だからこそ仮説が生まれる。特性だけではない属性という能力。それだけでもルーンは作り出せるはずだとな」

総魔の言葉は私でも十分理解出来る話だったわ。

本来のルーンの定義は特性の反映なのよ。

それなのに私達のルーンは属性でしかないの。

その違い。

その違いは決して些細なものじゃないはずよね?

もしかすると私は大きな誤解をしていたのかもしれないわ。

「私達のルーンは偽物ってこと?」

震える私の声。

自分では全く気付かなかった事実。

その事実に気付いて頭の中が混乱してしまいそうだったのよ。

だけど、総魔は私の疑問を否定したわ。

「いや、偽物と言うほどのことでもないだろう」

あれ?

偽物じゃないの?

余計に分からなくなるわね。

「これはあくまでも推測でしかないが、もっとも本質に近いと俺は考えている」

仮説だって、いつものように前置きしてから説明してくれたわ。

「おそらく俺達のルーンはまだ未完成だったということだ」

「未完成?」

「そうだ。俺達はルーンを作り出すことには成功した。だが、それはあくまでも試作段階のものであって本当の意味でのルーンには辿り着けていなかった。そう考えるのが妥当なところだと思っている」

なるほどね~。

試作段階か~。

それなら納得できるわ。

そこまでの説明で一旦話を区切ってから、総魔は一言だけ付け加えたわ。

「まあ、現在の定義が正しい、と解釈すればの話だがな」

今の定義が正しければ?

それって特性の反映ってことよね?

その定義が正しければって総魔は言ったわ。

じゃあ、その定義が間違っていたら?

どんどん話が複雑になっていく気がするわね。

そんなふうに悩む私を見て、総魔はまたポンポンと私の頭を撫でてくれたのよ。

「難しく考える必要はない。大事なことはただひとつ。自分自身の力を見極めること。ただそれだけだ」

「自分自身の力?」

「原始の瞳が示すように、俺達はまだ自分自身の本当の力に気付かずにいる。それが何なのか?まずはそれを知ることが最優先だ。ルーンの定義や本当の意味に関しては今はまだ考える必要がない」

「そうは言っても、総魔は考えてるんでしょ?」

「常に考え続けることで気付くこともあるからな。だが、余計なことばかり考えていると今の自分を見失ってしまうだけだ。今の自分が何をすべきか?それさえ考えていれば十分だろう」

「う~ん。それが難しいんだけどね~」

「それは翔子次第だな」

「あう~」

小さくうめき声をあげる私を見て微笑む総魔。

結局のところどうすればいいのか分からないけれど、
私は私なりに頑張れば良いってことよね?

そう考えて、改めて総魔を見つめてみる。

相変わらず何を考えているのか分からないけれど、
総魔は総魔で色々と考えてるんだと思う。

今だけじゃなくて、きっとその先のことまで…ね。

私には分からないことまで考えてるんだと思うわ。

さっきの会話にしてもそう。

私は何も気付かなかったわ。

だけど総魔は気付かせてくれたのよ。

私はまだ成長できるって、そう教えてくれたの。

だから頑張ってみようと思う。

私自身、どれだけのことが出来るのかを知りたいから。

だからもう一度頑張ってみようと思ったの。

「強くなりたいな~」

小さく呟いた私の声を聞いて、総魔は優しく微笑みかけてくれたわ。

「その気持ちが在る限りは決して不可能ではないはずだ」

再び歩き始める総魔。

そんな総魔の背中を見つめる私。

『決して不可能ではない』

その言葉を胸に刻んで、私も歩き始めてみる。

私自身の本当の力を求めて…。
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