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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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課題

…そして数分後…。

午後10時になる5分ほど前に医務室へたどり着くと、
彼は迷うことなく医務室の中へと足を踏み入れていった。

そして挨拶もせずに医務室を進んでいく。

そんな彼に常駐している医師達が視線を向けていたけれど、
彼は気にする様子もないまま真哉の眠るベッドへと歩み寄っていった。

「どうするつもりなんだい?」

尋ねてみたけれど、
視線だけ僕に向けた彼は真哉の胸の上に手を置いている。

それからようやく話し出してくれたんだ。

「これから行うのはあくまでも確認だ。だからおそらく意味はない」

「意味はない?」

「ああ、俺は吸収の力を失ったからな。当然それに関する力は一切使えないだろう。だとすれば…」

彼は右手に力を込めたようだ。

だけど、何も起こらなかった。

魔術が失敗したというよりも、そもそも何も起きなかったように思えてしまう。

「やはり、無理か…」

この結果を予想していたらしく、彼は静かにため息を吐いていた。

だけどまだ、僕には彼が何をしたいのかが分からない。

そもそも何を確かめたかったのかさえわからないからね。

そんな僕の疑問を感じ取ったのか、
彼は何かの確認を諦めてからようやく説明してくれたんだ。

「すでに知っているとは思うが、俺は吸収の力を基点として幾つかの魔術を完成させている」

「あ、ああ、それなら知ってるよ」

彼の言葉の意味なら僕も知っている。

魔剣ソウルイーターもそうだけど。

僕の知っている範囲だけでも霧の結界や天使の翼などの幾つもの特殊魔術を彼は完成させている。

だけど…。

他にもまだ僕が知らない力があったということなのかな?

首を傾げる僕に彼は説明を続けてくれた。

「俺が完成させた魔術の中には魔力の供給という力もあった」

「魔力の供給?」

「読んで字のごとく、魔力を他人に受け渡す理論だ」

ぁ!?

彼の言葉を聞いて、僕は直感的に理解した。

彼が試したかったこと。

それは『魔力の回復』だ。

僕や沙織、そして翔子に魔力を送り込んだように、
真哉に対してもそれを行おうとしたんだと思う。

だけど彼は失敗した。

力を失った影響で魔力を送り込むという力まで使えなくなったんだと思う。

彼はそれを確認しにきたんだ。

「魔力の供給そのものは吸収とは関係がない。真逆の理論だからな。だが、吸収の能力を基点としていることで理論に狂いが生じているようだ」

彼はそう分析したらしい。

だけど確かにそうとしか考えられないと僕も思う。

本当に無関係なら力が使えるはずなんだ。

だけど力が使えないということは封印した能力に属しているということになる。

つまり。

現状において真哉を目覚めさせる方法がない、ということだ。

彼が力を使えない以上。

真哉が自然と目覚めるのを待つしかない。

それが明日なのか?

明後日なのか?

それとも一週間後なのか?

それは誰にも分からない。

「思った以上に封印の影響が出ているようだな。少し研究し直した方が良いかもしれない」

彼の言葉を聞いたことで、僕は小さな不安を感じてしまった。

それは恐怖と言ってもいいと思う。

何故なら彼の言葉はそのまま僕にも当てはまるからだ。

僕も支配の能力を中心として独自の理論を組み上げてきた。

だけどそれが今。

力を封印したせいで理論に歪みが生じているはず。

それがどの程度まで影響を及ぼすのかは僕自身でも計り知れない。

だからこそ。

彼の落胆はそのまま僕の今の状況を如実にょじつに映し出していることになる。

力を封印したことによる影響。

それを完全に把握して、理論を組み替える必要があるんだ。

「君は理論の組み替えにどの程度の時間がかかると考えているんだ?」

「新たな基点があればそれほど時間はかからないと思う。問題はその基点を見つけられるかどうかだが、それが俺達の抱えている課題と言えるだろうな」

僕達の抱える課題。

それは潜在能力であり。

僕達が目指す新たな力だ。

確かにそれがはっきりすれば理論の構築は難しくないと思う。

だけどそれが理解出来なければ、いつまで経っても理論は完成しないということでもあるんだ。

ただ力を失っただけで、成長できないことになってしまう。

もちろん封印を解除すれば今までどおりにはなれるんだけど、
ここで諦めてしまえば彼との差は更に広がってしまうことになるんだ。

だから、封印を解除することはできない。

今まで気づかなかった現実と直面したことで、
確かな重圧感が僕の心に広がってしまう。

だけどそんな僕に、彼は微笑んでくれたんだ。

「焦ってもすぐに答えは出ないだろう。それは俺も同じだからな」

僕と同じだと言ってから、彼は真哉から手を離した。

「時間はある。お互いにゆっくり考えればいい」

時間はある言い残して、彼は医務室を出て行ってしまった。

だけど。

一人残された僕は真哉の寝顔を眺めながら、小さくため息を吐いてしまう。

「はぁ。落ち込んでも意味がないってことは分かってるんだけどね」

分かってはいるけれど、自然とため息が出てしまうんだ。

そんな自分を情けないと感じてしまう。

だから僕はしっかりと真哉と向き合うことにした。

「大丈夫。僕はまだくじけたりしないよ。」

これから始めるんだ。

「僕はここから強くなるよ」

真哉に対して、そして自分に対して、心に固く誓おうと思う。

決して後ろを振り返らないこと。

そして前を向いて突き進む事を…僕は誓うよ。
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