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THE WORLD 作者:SEASONS

プロローグ

2/4820

魔導共和国

さてさて。

どうも初めまして、と言うべきかしら?

色々と気になることはあるかもしれないけれど、
ひとまず自己紹介をしておくわね。

私の名前は米倉美由紀よねくら みゆき

年齢は24歳。

血液型はA型で、2月14日生まれの水瓶座みずがめざよ。

職業はまあ、国家公務員ってやつね。

ファンテリナ魔導共和国まどうきょうわこくの代表を務めているわ。

え?

魔導共和国って何かって?

それは今から説明するわね。

世界には7つの大陸があるんだけど。

その中の一つ。

アステカ大陸と呼ばれる大陸に魔導共和国はあるの。

この大陸はね。

世界地図で見るとほぼ中心に位置するんだけど、
とても大きな大陸なのよ。

そのせいで、
というべきかどうかは言葉に悩むところだけど。

広大なアステカ大陸は主に3つの地域に別れているわ。

密林地帯と呼ばれる北部が8カ国。
湿原地帯と呼ばれる中部が11カ国。
山岳地帯と呼ばれる南部が7カ国。

こんな感じで3つの地域に大別されていて、
大小合わせて26の国が存在しているのよ。

その中の一つに、この物語の中心であり、
私が代表として統治している
《ファンテリナ魔導共和国》と呼ばれる魔術師のための国があるの。

詳細の説明はあとでするけれど、
地図上では大陸南部の山岳地帯においても最東南になるわ。

はっきりいうなら辺境よ。

だから、というわけでもないけれど。

東側と南側はどこまでも広がる雄大な海に面しているし。

西側と北側は他国との国境になる険しい山脈に囲まれているわ。

そのうえ、国としての領土は狭いし。

大陸の端に位置することもあって、
陸の孤島と呼ばれてしまうくらい隔離された地域でもあるわね。

そのせいで他国とのつながりが少ない閉鎖された国とも呼ばれているわ。

さらに言うと。

潮の流れの速い雄大な海と登山をするには厳しすぎる山脈に囲まれているせいで周辺諸国との交易もままないから、
物資の流通にも限りがあるし、
あまり住みやすい土地とは言えないでしょうね。

仮にも国家の代表としてこういう言い方はどうかと思うけど、
正直に言うなら大陸の僻地とでも表現するべきかもしれないわね。

まだまだ発展途上中の弱小国家なのも認めるわ。

だけどね。

その反面として人の手があまり加えられていない辺境だからこそ、
自然が豊かでとても穏やかな国でもあるのよ。

自給自足ができる程度には安定した気候と豊富な資源のおかげで少しずつだけど発展しているの。

まあ、国家としての規模はまだまだ小さいし、
他国との繋がりが薄いせいで成長の遅さが欠点ではあるんだけどね。

それでも、特筆すべき点が一つだけあるのよ。

唯一の自慢って言ってもいいわね。

それは『魔導共和国』の名前が示す通り。

数多くの有力な魔術師が国の中心に立って政治を執り行う『魔術』を主体とする国家であるということよ。

魔術師は世界中にいるとしても、
魔術師の国はここだけなの。

私がいるファンテリナ魔導共和国以外に魔術師が統治する国は存在しないのよ。

だからこその自慢なんだけどね。

心の思うままに奇跡を起こし、
戦闘能力にも優れ、
あらゆる怪我を治療できる才能を持つ魔術師達が自らの才能を最大限に発揮するために国家としての独立を宣言して生まれた国が魔導共和国なの。

…でも、ね。

さっきも言ったけど他に魔術師の国は存在しないの。

非常に残念なことに。

世界全体で見た場合。

魔術の歴史はまだまだ浅くて、
ほとんど浸透していないっていう状態にあるわ。

ん?

どうして、魔術が普及していないのかって?

その理由は様々あるんだけど、
最も大きな理由は『魔力の有無』という問題かしらね。

魔力がなければ魔術が使えないの。

魔力がなければ魔術師になれないのよ。

なのに、魔力を持って生まれてくる子供の数はごく少数でしかないわ。

数百人に一人って感じかしら?

千人まではいかないにしても、
それに近い確率ではあるでしょうね。

魔力を持つ人達の存在は遥か昔から確認されていたとはいえ、
彼らが魔術師として認識されて世間一般に広まってきたのはここ50年程度の話でしかないの。

つまり、魔術はまだ歴史が浅いって言うべきかしら?

だからまだ一般的には普及していないのよ。

それに、ね。

魔力はそれ自体が他者を殺せる力を持っているわ。

魔術としての形を持たせなくても、
魔力自体が人を殺せるほどの効力を持っているの。

だから魔術師という名前がまだ浸透していなかった頃に魔力を持つ人達は悪魔の子や邪術師と呼ばれて、
多くの人々から忌み嫌われる存在として扱われてきたという過去があるの。

そのせいで世界各国は悪魔払いを生業とする祈祷師(きとうし)風水師(ふうすいし)のような陰陽師(おんみょうじ)を抱える国が圧倒的に増えてしまったのよ。

そういう経緯があって、
魔術や魔法と呼ばれる異能力は未知なる力として恐れられてきたというわけ。

その流れが現在でも受け継がれてしまっているのよ。

魔術という力は悪魔の呪いであるという印象が根強く残ってしまっているし、
今でも多くの人々に受け入れてもらえないという状態が続いているの。

そういう歴史的な流れこそが魔術が全くと言っていいほど普及しない最大の理由でしょうね。

だから、ね。

そういった経緯があるせいでね。

事実がどうかに関係なく。

呪われた存在であると思われた魔術師達は迫害を受けてしまうことになるし。

誰にも受け入れてもらえないまま住む場所を追われてしまっているの。

ただ魔力を持っているというだけで、悪魔としてみなされてしまうのよ。

そして人として受け入れてもらえなくなるの。

その結果。

迫害を受けて行き場のなくなってしまった魔術師達が各国から辺境へと逃げるように寄り集まって出来たのが魔導共和国の原型となる魔術師の村だったのよ。

当初は小さな集落から始まった魔術師の村らしいけれど。

人口の増加に比例して村から町へと少しずつ規模を大きくして数十年にも及ぶ長い年月をかけて徐々に勢力を拡大したことで魔導共和国と呼ばれる魔術師のための国が誕生したそうよ。

それがこの国の始まりらしいわ。

まあ…らしい、って言うのは私もまだ生まれてなかったからそんな昔のことをはっきりとは知らないからよ。

でもね。

何もない辺境を一から開拓するのは大変だったと思うわ。

その苦労だけは心から賞賛したいと思う。

…って、まあ、そんな感想はどうでもいいわよね。

ひとまず約50年の月日をかけて大きくした辺境の国なんだけど。

現在では数え切れないほど多くの魔術師が在住しているわ。

その数は推定200万人って言われているそうよ。

実際の総数は不明だけどね。

各町の戸籍情報からその程度の人数が集まっていると考えられているみたい。

もちろん魔術師としての実力には個人差があるから
全ての魔術師が優秀と言えるわけじゃないわ。

魔力を持って生まれてもね。

ちょっとした炎や軽微な風しか生み出せない魔術師も数多く存在しているからよ。

それでも数だけでいえば一国の軍隊と争える戦力なのは間違いないでしょうね。

一応、数よりも質で絞るなら2、30万ってところかしら?

ざっと1割程度ね。

その程度だけど実際に他国の軍隊と衝突して、
撃退に成功したという戦歴もあるそうよ。

私はまだ経験してないけど、
お父さんがまだ若かった時代にはそういうこともあったらしいわ。

大体、30年くらい昔の話ね。

小競り合い程度なら数年前にもあったようだけど、
当時の私はまだ学生だったから詳しい話は知らないわ。

まあ、それはそれとして、この国の説明よね。

徐々にだけど多くの魔術師達が国内の各町に定住し始めたことによって、
長い年月をかけて蓄積してきた魔術の知識や技術を後世に伝えることで魔術そのものも少しずつだけど発展してきたらしいわ。

おかげで今ではどの町にしてもかなりの防衛力を誇れる力を蓄えている状況なの。

実際に戦闘を経験している町は少ないけれど、
数万の軍隊を相手にしても、
ものの数時間で殲滅できる戦力でしょうね。

それほど強力な戦力を抱えていることで、
周辺諸国からの侵略や圧力を防ぐことが可能になっているわ。

力には力を、って感じではあるけどね。

そのせいで隣接する周辺国家とはあまり友好的ではなかったりもするわ。

どちらが悪いとは言えないけど、ね。

一応、現時点では大きな争いはないし、
戦争に発展する事もなくなっているはずよ。

…でもね。

それはあくまでも現時点での話に過ぎにないわ。

これから先どうなるかなんて誰にも分からないからよ。

独立を宣言して魔導共和国と名乗ってはいるものの。

まだまだ『国』とは名ばかりでしかないわ。

周辺諸国からは国家として認めてもらえてないしね。

そもそもの前提として、
行き場のない魔術師達が少しずつ寄り集まって生活していただけの小さな村だったのよ?

そんな小さな村落を周辺の国の人々が皮肉を込めて魔術師の国と呼んだ事が始まりにすぎないの。

そういった経緯があるから、
最初から国家として活動していたわけではないそうよ。

徐々に魔術師が増えて周囲から『魔術師の国』と呼ばれるようになり始めた頃。

少しずつ発展していく町の存在が周辺諸国から危険視されて糾弾される可能性が出始めたことで各国との外交関係が必要不可欠な状況になったらしいわ。

だけど国と交渉するにあたって村や町では話にならないわよね?

対等な関係による交渉を求めるためには同じ舞台に立たなければならないわ。

そのための第一歩として。

まずは国家としての対話を決断した魔術師達が会議に集まって、
『共和国』として独立を宣言することを決めたみたい。

数週間に及ぶ協議によって共和国に相応しい国名として『独立』という意味を持つ古語であるファンテリナと名付けて、
新興国『ファンテリナ魔導共和国』として大陸の辺境で名乗りをあげたそうよ。

それから40年。

様々な外交問題はあったらしいけど共和国は現在も存在しているわ。

もちろん魔術師の国という根本的な問題によって国境である山脈を越えようとすれば領土侵犯と判断されて拘束されてしまうし、
海を越えて貿易をしようとすれば海賊行為とみなされて攻撃を受けてしまうけどね。

そんな扱いのせいで国家としての存在さえも認めてもらえない状況が続いていたみたいだけど、
みんな必死に国内の未開地域を少しずつ開拓して生活範囲を広げて農業や漁業によって最低限の生活を維持する日々を続けていたそうよ。

だからまあ。

他国に対して不満を感じる部分はあるけれど、
それでも仕方がないと言うしかないのが実情かしら?

国家として独立を宣言したとしても、
本質的には各国からの寄せ集めにすぎないの。

政治に関しての知識や才能を持つ優秀な人材なんているはずもないわ。

だから開国当初は国を治めるべき国王と呼ぶべき人物さえもまだ決まっていなかったそうよ。

国名を決めて独立を宣言したまでは良いものの。

国王不在という状況が続いていたようね。

国を名乗っても肝心の国王がいないのよ?

これじゃあ対話は実現しないわよね?

だけど国王が必要だと分かってはいても、
国王として活躍できるほど優秀な人材がいなかったみたい。

指導者として国をまとめられる実力者がいなかったらしいわ。

もちろん候補者は何人もいたはずよ。

意欲的に活動しようとする人達も数多くいたでしょうね。

だけど他国との関係が良くなる気配がないまま毎日のように流れてくる難民の保護にも追われてしまい。

町ごとの治安維持が最重要の案件となってしまったせいで、
国家としての運営にまで手が回せなかったらしいわ。

まあ、言い訳にも聞こえるけれど知識も経験もない状況で国造りをしようと思ったら、
並大抵の努力では難しいでしょうね。

はっきり言って失敗することのほうが多いはずよ。

だけどそれを責めることはできないわよね?

みんな初心者なんだから。

最初から上手くいくはずがないし、
失敗を重ねて経験を積んで少しずつ成長するしかないと思うわ。

だから、まあ。

国家としての体制を整える余裕がなかったこともあって、
独立当初から最初の数年間は全くと言っていいほど国としての統治を行えていなかったそうよ。

もちろんそんな状況でも周辺国家からの圧力は決して減らないわ。

むしろ徐々に積み重なっていく国家としての問題を解決する必要性が着々と増えていくだけでしょうね。

それなのに。

誰かが国の指導者として行動しなければならない状況になってしまっているのに国王として国を導ける才能を持つ実力者が誰もいないのよ?

状況は悪化していく一方でしょうね。

だからそんな状況を打開するために、
まずは各町の代表者が率先して動き出したらしいわ。

国内外におけるあらゆる政治問題を解決するために、
各町や村から代表者を集めて月に一度の会議を開くようになったそうよ。

各町の代表者達が話し合いを行う事で意見の交換を行って、
国家として正常な運営を行うことにしたって聞いているわ。

ただ、基本的な流れとして町ごとに自治や発展を任せている事もあって、
会議を行うと言っても世間話や情報交換程度で終わる事がほとんどだったみたい。

それでも独立当初はその程度の情報交換でも何とかなっていたみたいなんだけどね。

だけど年々増えていく人口に比例して国家としての勢力が拡大していくと、
徐々に周辺各国に対応するための代表者の必要性が重要視されるようになってきたそうよ。

独立を宣言してから約10年後ね。

国内の町と村の数が20を超えたことで人口が爆発的に増加してしまい。

他国からの圧力が急速に強まってきたらしいわ。

その圧力を抑えるために誰かが外交を担当しなければいけないわけなんだけど。

この頃になるとようやく優秀な実績を持ちつつ指導力にも優れる者が出てきて、
共和国の代表として選出されるようになったらしいわね。

その時に選ばれた人物が初代魔導共和国代表となる
鞍馬宗久くらま むねひさという名前の男性よ。

軍人としては突出した才能を持っていて、
戦闘能力や指揮官としての才能は誰よりも優れ、
共和国が誇る優秀な指導者としてその名を馳せたようね。

あっ、先に言っておくけど。

当時、私はまだ生まれてないからね?

だから具体的な説明は出来ないわよ。

あくまでも聞いた話しか出来ないわ。

細かい説明は省力するとして。

国家として不安定な状態にあった共和国の政治体制を磐石なものとして、
軍律を定めて国境の防衛能力を高めて国内の発展に尽力を注いだらしいわ。

だけど15年間ほど代表として活動した後に
軍の指導を目的として表舞台から身を退く道を選んだそうよ。

言うなれば引退ね。

代表として活躍するよりも、
軍人として活動したかったみたい。

まあ、その辺りの理由に関してはそうせざるを得ない事情があったと思ってくれればいいわ。

ちょっと色々と問題があってね。

政治よりも軍の強化が最優先となる案件があったのよ。

そのころ私はまだ生まれたばかりで赤ん坊だったから、
最終的にどうなったのかは知っていても当時どうだったのかなんて知らないわ。

ただ、その問題は今でもまだ続いているからいずれ説明する時が来るでしょうね。

今はまあ、止めておくわ。

話し出すと長くなるしね。

とりあえず鞍馬宗久が引退したことで、
後継者として2代目に選ばれたのが新堂兼成しんどうかねなりという名前の老人よ。

彼は判断力と決断力に優れる人物で、
鞍馬宗久の参謀としても長年活躍していたという実績もあったようね。

ただ、私が物心つく頃にはすでに亡くなっていたからどういう人なのかは全く知らないわ。

一応、聞いた話だと魔術師としての実力は鞍馬元代表と比べて劣るものの。

政治面においては他の追随を許さないほど優秀な人物だったそうよ。

彼の功績によって国内の各町はさらなる発展を遂げて、
自給自足率が100%を超えるという政治手腕を発揮してみせたらしいわ。

これは本当にすごいことなのよ。

だって元々が未開の辺境だったのよ?

開拓するだけでも一苦労なのに、
年間を通して食料を安定させるなんて神業としか思えないわ。

なのに、彼が代表として活躍した期間は短かったみたい。

わずか5年ほどの活躍の後に、
年齢による引退を表明してしまったそうよ。

才能があっても年齢には勝てないっていうのはもったいないわよね。

まあ、人生ってそういうものなのかもしれないけれど。

ひとまず次の代表が選出されて、
3代目の代表として米倉宗一郎よねくらそういちろうという名前の人物が共和国の代表を引き継いだの。

まあ、分かりやすく言うなら私のお父さんなんだけどね。

父さんの魔術師としての実力は歴代最強と称されるほどだったわ。

娘の私が言うのもどうかと思うけど、
史上最強と言っても過言ではないでしょうね。

戦闘に関する実力は他を圧倒的に凌駕しているし、
天才っていう言葉は父さんのためにある言葉だと思ってる。

その上、政治手腕も有能で、
若い頃に大陸中を旅したという経験から外交手腕は誰もが感嘆するほどだったのよ。

娘である私から見ても自慢できる父さんだと思ってるし、本当にすごい人なの。

険悪と言えるくらい対立関係にあった周辺諸国と停戦協定を結ぶことにも成功していたし。

非公式ながらも各国に魔術師ギルドを設置して、
大陸中の魔術師達を保護して国内に集めることで共和国の活動地域を少しずつ拡大することにも成功していたのよ。

そういう下地があるからこそ今も共和国は存続しているの。

父さんがいなかったら、
たぶん今頃、共和国は戦火に見舞われてたかもしれないわね。

本気でそう思ってる。

だから出来ることなら父さんに代表を続けていて欲しかったんだけど、
それができなくなってしまったのよ。

突如として襲いかかった不治の病によって体調を崩してしまったことで、
多くの人々に惜しまれながらも引退を表明してしまったの。

もちろん、国中の医師が治療方法を研究したけれど。

だけど治療方法が確立されることはなかったわ。

そもそもの原因とも言える病名さえ特定できなかったからよ。

その結果。

約10年の活動を終えた父さんは、4代目へと後を託したの。

…って、まあ、私なんだけどね。

様々な諸事情によって共和国の代表は入れ替わりを繰り返してきたんだけど、
現在では私が4代目の代表として奮闘しているところなのよ。

一応、代表になる以前は国内最大の規模を誇る港町ジェノスの知事として活動していたんだけど。

3代目として活躍したお父さんの娘であることと。

魔術師としては引退したお父さんに次ぐ実力者だったことで私が共和国の代表に選ばれたのよ。

歴代の代表者の中では最年少の就任ね。

まだ24歳という若さだけど、
周囲には駆け引きに優れた有能な人物として認めてもらっているわ。

まあ、良くも悪くも策士(詐欺師)って言われるけどね。

持って生まれた(?)話術という才能によって、
就任からまだ2年目でもあるにもかかわらず、
私の残した功績は非常に大きいと周囲から高く評価してもらっているわ。

ざっと説明するなら。

1・優秀な人材を的確に配備して未開地域の開拓を短期間で完了させたこと。

2・鉱石の発掘や海山物の採取を安定させたこと。

3・僅かながらも周辺諸国との貿易を行えるように知略の限りを尽くしたこと。

この辺りが主な理由なんだけどね。

特に、停戦協定を結んでいるとは言え、
敵対関係にある他国と貿易が出来るようになったという事実は非常に重要なのよ。

それにより、国内で手に入らない物資が手に入るようになったから。

この功績は歴代最高の評価を受けているわ。

ただまあ、私としては両国の利益が出るように話し合いを進めただけなんだけどね。

最終的には何故か共和国側のほうが有益な形で
交渉がまとまったことが私の才能(詐欺?)という評価みたい。

まあ、そんな感じで私が共和国の代表として活動しているわけなんだけど。

ここで重要なのは国王ではなくて代表という部分かしら?

国王じゃなくて代表と名乗っている理由はね。

共和国のほとんどの国民が他国からの難民だからよ。

この国で生まれて、
この国を故郷として過ごす人達は現在では数多くいるけれど、
もともとは無人未開の辺境だったのよ。

最初からこの地に人が住んでいたわけじゃないわ。

だからこの国には王族も貴族も存在しないの。

階級という差別も存在しないのよ。

だって当然よね?

元々が難民なんだから。

上下関係なんて存在しないわ。

だから階級制度を否定している共和国では王制を認めていないの。

歴代の代表にしても、もちろん私にしても、
あくまでも共和国の『外交代表』という一種の役職でしかないと定められているのよ。

だからこそ、年齢よりも実力が優先されているわけだけどね。

ただまあ、24歳という若さのせいで、
共和国の代表と言っても他国のお偉いさん達に信じてもらえないことは多かったわね。

各国との対話において、
若さを理由に見下されることがすごく多かったわ。

だけどね。

それでも私は結果を出し続けたのよ。

お父さんを凌ぐ天性の話術(聞きあきるほど詐欺師ってよく言われるわ)で共和国の名を広めて各国と交易が行えるように話をつけてきたの。

その政治手腕こそが私の実力であり、
現在もまだ代表として活動し続けられている最大の要因でしょうね。

…でも、まあ。

個人的にはあまり代表としての自覚を持っていないかもしれないわね。

前任の代表だったお父さんが病を理由に引退して通院生活を送っているという事情があることと。

次の代表になって欲しいと各町の有力者達に頼まれたことで。

特に断るほどの理由がなかったから何となく跡を継いだっていう感じだからよ。

もちろん何となく引き受けたとは言っても
有力な魔術師達からの大多数の支持を集めた私の実力は決して父さんにも負けていないはずよ。

今では引退したとはいえ、
父さんの魔術師としての能力は共和国の元代表というだけあって国内一位の実力者だったわ。

そんなお父さんの血を引く私も他の追随を許すことのない優秀な魔術師だって自負してる。

いまだかつて父娘で実力争いをした事は一度もないけれど。

周囲の見解ではすでに私の方が上であるという意見が大多数を占めているくらいなのよ。

その結果として私を除く各町の知事全員一致の判断によって共和国代表に選ばれることになったの。

あ、でも、ここで一応誤解のないように言っておくけれど。

私自身は別の人物を推薦していたわよ。

自分で立候補するほど自意識過剰じゃないし、
進んで面倒な役職を受けようとは思わないわ。

それでも多数決の結果によって選ばれたことと特に断る理由もなかったことで、
気楽な気持ちで引き受けたのは覚えてる。

ある意味ではいい加減よね?

自分でもそう思うわ。

それでもね。

ちゃんと結果は出してきたの。

共和国代表を就任してからすでに丸1年が経過しているし、
他の人に代われなんて言われたことは今のところ一度もないしね。

代表としての役目を受けた瞬間から寝る暇もないほどの事務処理を含めた膨大な量の仕事や他国との利益関係をめぐる駆け引き等を引き継ぐ事になってしまったことに少なからず後悔している部分はあったけど。

ちゃんと今も代表を続けているわ。

ただただ面倒くさいと思うことは多々あったけどね。

だけど同時にその憂鬱を吹き飛ばすほどの価値も代表という立場にはあったと思うわ。

実力と名声を認められて周囲から崇められる事に優越感を感じていたのよ。

あ、でもね?

一応言っておくけど、
ちやほやされて喜んでるっていう意味じゃないわよ?

純粋に誰かに頼ってもらえることが楽しかったの。

それだけ自分が必要とされてるって実感できるわけだしね。

それに国を代表する者としてのそれ相応の利権や待遇があるから、
一地方の知事として活動していた頃に比べれば格段に裕福な生活を過ごすことができたわ。

まあ、本格的な他国の王家に比べれば微々たる幸福でしょうけどね。

本来の王族であればもっと裕福で豪華な生活を過ごせるはずよ。

そういう部分も外交官として色々と見てきたしね。

欲を言い出したらキリがないわ。

だけど、辺境の弱小国家にそんな贅沢は求められないわよね。

何もしなくてもそれなり以上の生活できるという程度の収入が精一杯かしら?

ちょっとした富豪程度の利潤が手に入る程度だけど、
それでも辺境の国家としては十分すぎる待遇だと思うわ。

もっともっと国の規模を発展させて税収を増やすことができれば
私の懐に入る資金も格段に増えるんでしょうけど、
それはまあ先の長い話よね。

今は現状で満足するしかないのよ。

だけどそういう利点もあることで特に不満を口にする事はないまま就任から現在に至るまで共和国の代表として活動しているんだけど、
そんな私が受け持つ国内での主な活動の一つに学園の理事長としての仕事があるの。

…と、言っても、これは共和国の代表としての仕事ではないわ。

本業というか、港町ジェノスの知事としての職務なのよ。

特に外交問題がない限り代表としてやるべきことはあまりないから、
ジェノスの知事という立場はそのままなの。

知事兼代表と言うべきかしら?

共和国の代表に就任しても知事という役職を失うわけじゃなくて兼任する形なのよ。

だから私の本業は知事のままなの。

一応、知事を就任してからすでに2年の月日が流れているから全ての要領を心得ている私としては今日も決まった時間に挨拶程度に学園に顔を出して様子を見るだけでいいはずだったわ。

だけど今日は…そこで終わらないみたい。

『入学式から始まる新たな物語』

共和国全土を巻き込んで周辺各国にまで影響を与えることになる物語の始まりは、
この瞬間から紡がれてしまうからよ。
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