挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

194/4820

苦労してるのは

「待たせたわね」

話しかける私の表情を見て、大悟も笑顔を浮かべてた。

「その様子だと交渉は上手くいったようだな」

「ええ、今の所はね。ここから先どこまで話を持って行けるかが私の腕の見せ所かしら?」

「自信はあるんだろ?」

「多少はね。ただ、あまり無理をせずに最小限に留めるつもりだけどね」

無理はしないと言った私を見て、
大悟は少しだけ驚いたような表情を見せていたわね。

「随分と弱気な発言だな。いつものお前なら相手に言い分を言わせることなく、一方的に意見を押し付けるのにな」

勝手なことを言ってから笑い出してる。

そんな大悟の笑顔を見て、私は小さくため息を吐いたわ。

「天城総魔が相手ではあまり無茶は出来ないわ。必要以上に彼を刺激せずに様子を見るのが現状では得策よ。あとは成り行きを見て、少しずつ方向性を変えていくことがもっとも有効な方法でしょうね」

「まあ、それが妥当だろうな。」

私の言葉を聞いた大悟が真顔で大きく頷いてる。

「俺でもそれ以外の方法は思い付かないからな」

でしょうね。

…と言うか、他に方法があるのなら是非ともご教授願いたいものだわ。

「今は様子を見るしかないだろう」

私の意見に賛同してから、大悟は本格的に撤収の準備を始めたわ。

「西園寺君。今日の出番はなしだ。撤収を開始しろ」

「分かりました。撤収します」

指示を受けた西園寺さんがすぐに動き出す。

即座に反応して職員達に指示を出す姿は惚れ惚れするわね。

おちゃらけた大悟とは違って、
要領よく物事を進めることの出来る彼女は間違いなく有能な人材だと思うわ。

魔術師としての実力も確かだけど、真面目な性格が好感を持てるからよ。

真面目過ぎて融通の効かない部分もあるみたいだけど。

それも愛嬌の一つじゃないかしら?

だから、かしらね。

ものの数分で撤収を完了させた彼女を見ていると、少しだけ大悟が羨ましく思えたのよ。

私にもこんな有能な秘書が居ればいいのに…ってね。

そんなふうに思いながらも同時に考えてみる。

たいして大悟と変わらない性格の私。

自分でいうのも何だけど、かなり大雑把な性格だと思うわ。

西園寺さんのような真面目な人間に私の秘書なんてさせたら、
毎日がストレスとの戦いになるかもしれないでしょうね。

まあ、まともに秘書なんてやってられないかも?

現に歴代の秘書達は1週間と持たずに辞めていったし…。

う~ん。

私が悪いの?

それとも耐え切れない秘書が悪いの?

私には判断できないけれど。

振り回される側にしてみれば辛いのかもしれないわね…。

そう考えると悪いのは私かな?

まあ、どうでもいいわね。

思考を打ち切って西園寺さんから視線を逸らすことにしたわ。

そして大悟に振り返ってみる。

「彼女、よく大悟の下で頑張っていられるわね?」

西園寺さんに対して同情するような気持ちで呟いてみたんだけど。

大悟は不満そうに大きく頷いてから答えてしまう。

「ああ。確かに不思議なやつだ。仮にも上司である俺に対して、容赦なくぶん殴ってくるからな」

………。

殴る?

大悟を?

と言うか、上司を?

今の発言を聞いて考えを改めることになったわ。

まあ、殴りたくなる気持ちは分からなくもないんだけどね…。

だけどそれを実際に行動に移してしまえる西園寺さんはなかなかの度胸の持ち主だと思うわ。

是非とも自分の秘書に引き抜きたくなるほどよ。

でも、ね。

容赦なく殴られるのはちょっと辛いわね…。

考え直してすぐに諦めることにしたわ。

大悟と西園寺さんは見ている分には丁度いい組み合わせなのかもしれないしね。

そう思えたから、もう一度彼女に視線を向けてみる。

「彼女の苦労を察するわね…。」

私としては素直にそう思ったんだけど、
大悟は私の言葉に不満を感じたようね。

あからさまな疑問を表情に示していたわ。

「ちょっと待て!どう考えても苦労してるのは俺の方だろう?」

うわぁ~。

本気で言ってるのかしら?

一度、大悟と話し合うべきかもしれないわね。

でも…。

面倒くさいからしないわ。

こういうのは放っておくのが一番だからよ。

「まあどうでもいいんだけど、とりあえず私は帰るわ。事後処理は任せるから、適当にやっといてね」

大悟に仕事を任せて歩き出す。

「おい!ちょっと待て、それはずるいぞ!」

何か叫んでるみたいだけど、気にしない。

わざと聞こえないふりをしておいたわ。

「よろしくね~」

全ての処理を押し付けてから逃げるように会場を離れたわ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ