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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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願ったり叶ったり

《サイド:米倉美由紀》

ふう。

予想外の展開が続くわね。

翔子に関しても想定外としか言いようがなかったわ。

天城総魔の力を押さえる事が目的で用意した水晶玉と指輪なのに、
それがきっかけになって翔子も新たな道を選択したからよ。

もちろんそのこと自体に不満はないし、
これはこれで良かったのかもしれないとは思うわ。

二人が仲良くしてくれるのならそれはそれで私にとって好都合だと思うからよ。

結果的に天城君を学園に留められるのなら翔子の行動は願ったり叶ったりって感じね。

上手く彼の能力を封印できて良かったと思うわ。

あ、でも、もちろん今まで話した事は真実よ。

嘘は存在しないわ。

実際に私も力を封印した過去があるから、今の力があるわけだしね。

まあ、私の場合は水晶が反応するような潜在能力は何もなかったんだけど、
力を封じなければいけない個人的な事情があったのよ。

その辺りに関してはあまりおおやけにしてないけど、
もしも力を封印してなかったら間違いなくこの国の代表にはなっていなかったと思うわ。

色々とね。

個人的な事情があるのよ。

だから私は力を封印したままでいるの。

そして今も封印を続けたままでいるのはただ単に力を必要としていないからでもあるけど、
外してはいけない理由があるからよ。

ただ、彼との交渉が失敗に終わっていたら封印を解除してでも彼を封殺していたでしょうね。

私個人の都合よりも国家としての判断が優先なのよ。

だけどまあ、そうならなくて良かったっていうのが一番の本音かしら?

今後、天城総魔がどこまで潜在能力に近付けるか分からないけれど。

これでしばらく時間を稼ぐことは出来るようになったからよ。

今以上に強くなってしまう可能性もあるけどね。

だけど『吸収』という厄介な力が失われるだけでも十分な価値があったと思うわ。

封印の解除は簡単だけど、おそらく彼はその選択肢を選ばないという予感もあるからよ。

これでひとまず学園の危機は去ったと言えるはず。

天城総魔の卒業を足止め出来たし。

彼の善悪を判断する時間を稼ぐことが出来たわ。

それだけでも十分な成果だと私は思う。

もちろんこれは危険な選択肢だったかもしれないけどね。

彼が成長することでさらに手に負えなく可能性があるんだから。

危険度が増したとも言えるわね。

そう思う自分も確かにいるけれど。

他に選択肢がなかったことも事実なのよ。

天城総魔が善であれば何も問題はないの。

いえ、悪でなければそれでいいのよ。

重要な『戦力』となるのは間違いないから。

今は力で押さえ込むよりも、もう少しだけ彼を見極める時間が欲しいの。

それが正直な私の気持ちなのよ。

彼を殺すのは簡単かもしれないけれど、それはそれで私の人生を狂わせてしまうから。

わざわざ殺人者として余生を迎える道を自分から選ぶ必要なんてないはずよね?

時間稼ぎの結果が悪魔を育てることになったとしても、
それはその時に『対処』すればいいだけよ。

今はただ祈ることしか出来ないんだから。

だからもう少しだけ彼に話し掛けることにしたわ。

「あとで理事長室に来てもらえるかしら?今後について、少し話があるんだけど」

問いかけてみると。

「ああ、いいだろう」

彼は嫌そうな顔を見せずに小さく頷いてくれたわ。

「そう。じゃあ待ってるわね。時間も時間だし、早めに来てくれると有り難いけれど、ひとまず落ち着いてからでいいわ」

「ああ、分かった」

「ええ。じゃあ、よろしくね」

話し合いを終えたことでゆっくりと周囲を見渡してから被害を免れて動き続けている時計に視線を向けてみる。

時刻はすでに午後8時を過ぎているようね。

会場に足止めされていた生徒達はすでに係員によって強制退去させられているし。

ほとんどの係員も役目を終えて帰宅の準備を進めているところよ。

ふと視線を向けてみれば、
ルーン研究所の職員達も撤収の準備を進めている様子だったわ。

戦闘にはならないって大悟が判断したんでしょうね。

拘束結界の準備が完全に無駄になったものの。

その方が良かったことは誰も目にも明らかな事実だし。

大悟の判断は正しいと言えるわ。

そこまで確認してからもう一度みんなに視線を向けてみる。

完全に緊張感を失っている翔子と沙織の二人はひとまず気にしないとして、
最後に御堂君に視線を向けてみたわ。

「…で、あなたはどうするの?」

質問してみたものの。

最初から彼の答えを聞くつもりはないわ。

どうしてって?

もちろん聞くまでもないからよ。

だから私は言葉を置き去りにしたまま、
迷いを見せる御堂君から視線を逸らして天城君に振り向いたわ。

「それじゃあ、待ってるわね」

挨拶をしてから彼等に背中を向けて歩きだす。

彼との交渉は成立よ。

お互いの利益は十分だし。

私には都合のいい形となったわね。

天城君にとっても価値のある学園生活を過ごせるんじゃないかしら?

少なくとも、当初の予定とは違うけれど翔子という足かせは予想以上の効果を示し始めてると思う。

私としてはこのまま二人が付き合ったとしても何も問題はないのよ。

むしろその方が私としては都合がいいでしょうね。

天城君の人格が善に傾く可能性が高くなると思うからよ。

まあ、翔子が取り込まれると困るんだけど…。

彼女なら犯罪の道に進むことはないと思うわ。

翔子の性格を考えれば天城君を取り込むことは出来ても犯罪に手を貸すことはしないはず。

味方に引き込む為の誘導役として翔子を天城君に近付けたことが、
結果的にそれ以上の効果として期待出来そうだったわ。

それとは別に御堂龍馬との間に友情でも芽生えようものなら、
天城総魔を引き込む事はよりたやすくなるはずよ。

私が考慮していた以上に事態は好転し始めているんじゃないかしら?

そんな気はするのよね。

だから今はただ様子を見守るだけ。

そう結論を出してから、今度は大悟達に歩み寄ることにしたわ。
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