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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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原始の瞳

「さて、と。それじゃあ、お互いの挨拶はここまでにして本題に入りましょうか」

間接的と言うか遠回しな話し方だと天城総魔に揺さぶりをかけることは難しいと判断して、
直球で話を進める事にしたわ。

「ひとまず学園1位おめでとう。それで、これからのことなんだけど、貴方としてはどうするつもりなのかしら?」

私にとっては最も重要な質問なのよ。

彼の回答次第で私の方針が決まると言ってもいいでしょうね。

そんな私の質問に対して、彼は少し黙考してから答えてくれたわ。

「今はまだ何も決めてない。ただ、これ以上ここに留まっても成長が望めないとすれば、卒業試験も考慮する必要があるとは考えている」

うん。

やっぱりね。

彼の言葉はもっともな意見だと思うわ。

学園で学ぶべきことがないとすれば卒業するのは当然だからよ。

だけどね。

正直に言えば、私としては天城総魔を卒業させたくないの。

彼の実力を考慮すればどんな試験を用意してもあっさりと合格すると思うけど。

だからこそ卒業試験を受けさせるわけにはいかないのよ。

卒業するということは、この学園がその実力を認めるということに他ならないからよ。

それはつまり。

この学園が天城総魔という人物を認めることに等しい出来事になるわ。

正体不明ながらも圧倒的な実力を持つ天城総魔に学園の卒業の証を持たせて野放しにするなんて。

そんなことが出来るはずないでしょ?

卒業を認めるということは学園が責任を負うということなのよ。

いまだに善悪の基準すら判断しきれない天城総魔をこのまま卒業させるわけには行かないわ。

だから卒業させずに手元に留める方法を考えなければいけないのよ。

だけど、どうすればいいのかしら?

色々と悩みそうになるけれど。

一応すでに考えていたことはあるのよ。

問題はそれを上手く実行できるかどうかね。

ここからが本番よ。

上手くいくように願いを込めて、彼との交渉を開始してみることにしたわ。

「まあまあ、卒業を考える気持ちも分かるけど。その前に一つ聞いてもいいかしら?」

「ああ」

「貴方は何故、力を求めるの?」

根本的な質問だけど、重要な質問なのよ。

私の問い掛けを聞いていた翔子や沙織、御堂君の視線も彼に集まってる。

そんな私達の視線を受けながら、彼は静かに答えたわ。

「やりたいことがある。その為には力が必要だ。ただそれだけのことだ。」

「そのやりたいことを聞いてるんだけど?」

「そこまで答える義務はないはずだ」

まあ、ね。

確かにそうなんだけど。

それだと話が終わっちゃうわよね?

とは言え、強制はできないし…。

はっきりと義務はないって言われてしまったことで話を打ち切られてしまったわ。

はあ…。

困ったわね。

まだまだ色々と聞きたいことがあるのに、
これ以上の追求は無理かもしれないって思ってしまう瞬間だったわ。

こうなるとただただ面倒でしかないわね。

交渉以前に、話し合いにならないのよ?

より深まる彼の謎。

このままだと話は進展しないけれど、だからと言って諦めるわけにもいかないのよね…。

交渉が成立しないとしても、卒業までの時間稼ぎくらいはしたいと思うからよ。

「だったら理由は聞かないわ。だけどもう一つだけ教えてもらえないかしら?その理由によって『誰かに迷惑をかけること』は有り得るかしら?」

誰か、とはつまり学園のことよ。

私達に危害が及ばないのなら、天城総魔と交渉する価値はあるはずよ。

そう判断して天城総魔の言葉を待ったんだけど。

「可能性としてはあるだろう。もちろんそうならないように考慮するつもりではいるが否定はできない」

彼はあっさりと認めてしまったわ。

うあ~。

こうなると聞きたくないけど、聞かないとダメなんでしょうね。

「一応聞くけど、犯罪じゃないわよね?」

「…いや。犯罪と言えるだろうな」

っ!?

彼の発言によって私達は言葉を詰まらせてしまったわ。

学園で得た力を犯罪に使用するとはっきりと認めたんだから、
これでは交渉さえも有り得ないわ。

早急に『対処』しなければいけなくなってしまったのよ。

緊張をにじませる御堂君達が見守る中で、私は静かに覚悟を決めることにしたわ。

「学園から犯罪者を出すわけにはいかないのよ」

戦いが避けられないと判断して動き出す。

そして密かに大悟達に合図を送って戦闘の準備を行わせる。

そんな私の行動に気付いてるのかどうかわからないけれど。

彼は変わらない口調で言葉を続けていく。

「犯罪者か…。否定はできないな。だが、俺にはどうしても復讐したい相手がいる。その目的を達成するために力を求めているのは事実だ。」

え?

「復讐?」

自分でも間抜けなほど目が点になったと思うわ。

命懸けで戦うつもりだったのに、少し気が抜けてしまったからよ。

少し視線をずらせば翔子達も驚いている様子だったわね。

「何があったの?」

尋ねてみるものの。

「………。」

彼は何も答えなかったわ。

それ以上話すつもりはないということでしょうね。

だけど、彼の過去に何があったのかしら?

それを知る事は出来ないけれど、
単なる犯罪という判断は出来ないのかもしれないわ。

だから気持ちを切り替えて話を戻すことにしてみる。

「仕方がないわね。話し合う気がないのなら深くは追求しないわ。ただ、一つだけ私のお願いを聞いてもらえないかしら?もちろんタダでとは言わないわ」

「なんだ?」

「あくまでも可能性としての話だから確実ではないんだけどね」

一旦会話を区切ってから、私は服のポケットに仕舞っていた水晶玉を取り出してみる。

「この水晶は原始の瞳っていうの。この水晶玉にはね、持ち主の本当の力を映し出す能力があるのよ」

説明をしながら彼に水晶玉を差し出したわ。

「もしもこの水晶玉が何らかの反応を示せば、あなたにはまだ潜在能力が眠っていることが判明するわ。だけど逆に何の反応も示さなければ、あなたはそれ以上強くなれないかもしれないけどね」

「魔術師としての限界がわかるということか?」

「まあ、そんな感じよ。その手に触れるだけではっきりするわ」

私の話を聞いて手を伸ばしてくれた彼に水晶玉を手渡す。

その1秒後。

彼の手の中で転がる水晶玉が輝かしい純白の光を放ち始めたのよ。

ちょっ!?

嘘でしょっ!?

これってどういうことなの!?

私自身でさえも想定外の出来事だったわ。

目を覆いたくなるくらい強烈な光だったからよ。

今まで色々と見てきたけど、ここまで強い光は初めてなのよ。

消えることのない純白の輝き。

この現象によって彼に潜在能力が在ることは判明したわ。

だけど、ね。

「………。」

水晶玉に集まっていた全員の視線が私に戻るけれど、私は何も答えられないのよ。

この光り方は私も予想してなかった反応だったからよ。

色の存在しない純白の光なんて…。

天城総魔に潜在能力が存在してることは明らかだけど。

それが何なのかが判断出来なかったわ。

完全なる白なんていまだかつて存在しなかったからよ。

だから説明に悩んでしまった間に、
戸惑いを見せる私から視線を逸らした翔子が彼の持つ水晶玉に手を伸ばしたわ。

「借りるわね♪」

天城総魔から水晶玉を受け取った翔子が、水晶玉をじっと見つめる。

その直後に水晶玉が再び輝き出したのよ。

だけど翔子の光は天城総魔ほど強くはなかったわね。

でも。

白じゃなくて、はっきりと赤い色を帯びているのがわかったわ。

「赤色?」

攻撃色ね。

今でさえ攻撃特化の翔子だけど、
今以上の攻撃力を秘めているということよ。

だけど私が説明する前に、
翔子は隣にいる沙織に水晶を手渡していたわ。

けれど…。

沙織の手の中にある水晶玉は何の反応も示さなかったわね。

「どういうことなの?」

首を傾げる翔子に彼が話しかける。

「その水晶が潜在能力に反応するなら、沙織に秘められた力はないということだ」

「………」

自分の限界を目にしたことで落ち込んだ様子の沙織は、
無言のまま水晶玉を御堂君に手渡していたわ。

そして。

すぐに翔子よりも強い光が放たれたのよ。

その色は紫がかっているように見えるわね。

確か紫は変化を表す色だったかしら?

それがどういう変化なのかは私にもわからないけれど。

御堂君の場合は支配特性とは異なる別の能力があるということでしょうね。

それらを説明するのはあとでいいとしても。

私の手から託された水晶玉は天城総魔、美袋翔子、御堂龍馬の3人に反応を示したわ。

翔子はともかく御堂龍馬まで反応を示したのは私にとっても驚きだったけどね。

学園最強だったはずの御堂君でさえも真の実力の片鱗だったということになるわ。

その事実によって私の緊張はさらに高まってしまったわね。

現状でなら天城総魔だろうと御堂君だろうと戦って勝つ自信はあるのよ。

もちろん間違いなく命がけだけどね。

大悟達の手を借りれば何とかなると思うわ。

だけど、今以上に強くなったとしたら?

どう考えても手に負えないわね。

国内最強を自負する私でさえも戦慄する結果を示した水晶玉。

一体、彼等はどこまで強くなるのかしら?

そんな疑問を感じながらも、ひとまず私は交渉を進めることにしたわ。
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