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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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初対面?

《サイド:米倉美由紀》

はあ…。

ついに最後の試合が終了してしまったわね。

御堂君が敗北したことで天城総魔が勝利してしまったのよ。

その結末を私も最後まで見届けていたわけだけど…。

だからこそ、と言うべきかしら?

正直に言って、心の底から恐怖を感じてしまったわ。

御堂君が敗北する可能性があることは考慮していたけど、
ここまで成長してるなんて予想していなかったからよ。

まさかこれほどの力を持ってるなんて、想像できるわけないじゃない。

学園に入学してからまだ5日なのよ?

一週間にも満たない僅かな期間で学園最強の御堂君を超えるなんて普通なら考えられないわ。

それだけでもすでに異常なのに。

今の彼の実力は私でも勝てるかどうか怪しい段階なのよ?

もうどこから手を付けていいのか分からないくらい崩壊してしまった会場を見れば嫌でもわかってしまうわよね?

彼はすでに私でさえ出来ないことを平然とやってしまっているのよ。

徹底的に強度を重視した検定会場を一撃で全壊させられる魔術師なんて、
共和国のどこを探したって見つかりはしないわ。

誰にも出来ないからこそ絶対に安全っていう自信を持っていたのよ。

それなのに会場はボロボロ。

ついでに自信も崩壊ね。

今後の復旧の手続きを考えるだけでも頭が痛い話だけど。

今ここで考えるべきことはそんな些細な話じゃないわ。

天城総魔が学園1位になったこと。

それ事態がすでに最悪の展開なのよ。

学園の治安維持のかなめだった御堂君が倒れてしまったことで、
すでに学園の均衡は崩れたと言ってもいいわね。

だからと言って今すぐに何かが起こるという話ではないけれど。

このまま放置しておけば必ず混乱が起きてしまうでしょうね。

学園に不満を持つ人なんて数え切れないほどいるからよ。

今まではそういった不満を力で抑圧してきたわ。

御堂君を含む特風の力で強制的に治安を維持してきたの。

なのに、今はその力が失われようとしているのよ。

絶対的だったはずの力が敗れたことで、学園の支配力が薄れてしまったからよ。

このまま何もしなければ反乱や暴動が起こる可能性も高まってしまうわね。

出来ることならそうならないことを願いたいところだけど。

いくらこの国が魔術師のための保護区だとしても、
やっぱり悪人は少なからずいるから不安は拭えないわ。

全ての国民が善人なんてありえないのよ。

だからそういう面倒な人物達が暴動を起こしてしまえば国内の混乱が各地に広がってしまうでしょうし。

他国からも危険視されることになってしまうでしょうね。

治安の低下が戦争の引き金になってしまうのよ。

そうならないために規律を厳しくして治安維持に努めているわけだけど。

今回の試合によって強制力が失われてしまったわ。

なめられてしまった治安維持部隊なんて、単なるお飾りでしかないわよね?

だから天城総魔が『特風』に参加してくれれば話が早いんだけど。

そうそう上手くいくとも思えないのよね…。

仮に参加を受け入れてくれたとしても、
素性の知れない天城総魔に特権を与えるというのも危険な感じがするし。

だからと言って問答無用で『抹殺』というのもそれはそれで後々面倒なことになるし。

全てを丸く納めるために出来る方法は限られているのよ。

まずは『交渉』かしら?

どういう方向へ話を進めるべきかは今でもまだ分からないけれど。

一度は天城総魔と話し合う必要があると思う。

それも、チャンスは今だけよ。

御堂君との試合で弱り切った今の天城総魔なら、
最悪戦闘になったとしても被害は最小限に押さえられるはずだからよ。

問題は吸収の能力があることかしら?

中途半端な攻撃だと逆に力を与えてしまう結果になってしまうから、
最初から最後まで全力で立ち向かわなければいけないという課題があることね。

上手くいくかしら?

実際にどうなるかはやってみなければわからないけれど、
ここから先はちょっとした油断が共和国の滅亡につながるでしょうね。

そうならないためには交渉を成立させるしかないっていう状況なのよ。

最終的には抹殺を成功させることもひとつの選択肢だけど、
どちらにしても一筋縄ではいかないと思うわ。

ひとまず一度、大きく深呼吸をしてみる。

そして彼らに向かってゆっくりと歩き出す。

一歩、また一歩と踏み出す度に高まっていく心臓の鼓動は自分でも押さえきれないほど緊張してる証かしら?

こんなふうに緊張するのは久しぶりかもしれないわね。

少なくとも、一生徒に対してここまで緊張を感じたことは今まで一度もないわ。

なのに今は緊張が抑えきれないの。

自然と体が震えてしまうのよ。

だけどこれじゃダメね。

こんな状態で上手く話し合いができるとは思わないわ。

だから目立たないようにこっそりと拳を握り締めてみる。

爪が食い込むほど強く握り込むことで感じられる手の痛みが私の心を冷静にしてくれるからよ。

まあ、何もしないよりはマシという程度だけどね。

それでも今はこの程度の痛みで済んでいるけど、
もしも戦闘になれば到底この程度では済まないはずよ。

どう考えても痛いどころの騒ぎじゃ収まらないわ。

まずはそうならないように話し合うつもりでいるんだけど…。

静かに歩みを進める私の姿に翔子が真っ先に気付いたようね。

「…ぁ。」

視線がぶつかり合ったことで翔子が小さな声をあげたわ。

その声で一瞬だけ翔子に視線が集まったけれど。

すぐに翔子の視線を追って御堂君と沙織が私に振り向く。

そして、問題の天城総魔も私に視線を向けたわ。

………。

天城総魔と視線が合った。

ただそれだけのことなのに。

言いようのない寒気を感じてしまったわ。

怖いって言ってしまえばそれまでだけど。

私が感じた恐怖はただそれだけじゃないのよ。

まるで異質な存在に思えたの。

いえ…。

異常の塊とでも言うべきかしら?

ここまで重苦しい雰囲気を持つ人とは今まで会ったことがないわ。

普通じゃないのよ。

どう表現するべきか迷うけれど。

まるで『闇』が動いているかのような、そんな圧迫感が感じられるのよ。

そのせいで私の心臓の鼓動が更に早くなってしまったわ。

同時に高まっていく緊張感のせいで胃に穴が開きそうな気もするわね。

だけどそれでもね。

私はこの場から逃げ出せないのよ。

自分の立場があるから逃げ出せないの。

国を代表する者として無様な姿は見せられないから、
精一杯の冷静さを装いながら歩みを進めてみることにしたわ。

徐々に近付いていく彼との距離はあと僅か数メートルほどかしら?

彼の視線を感じながら歩みを進めていく。

そして、静かに足を止める。

彼との距離は2メートルもないわね。

さてさて、どう話しかけるべきかしら?

一応、私としては初対面だと思うわ。

北条君との試合も見てたから私は彼を知ってるけれど、
彼は私を知らないはずだからよ。

なのに…。

何か不思議な感覚を感じてしまうわね。

これは何?

よくわからない。

だけど、何かを忘れているようなそんな気がしたのよ。

…う~ん…。

初めて…よね?

どうしてか分からないけれど、何故か自信が持てなかったわ。

大抵の人とは一度会って話をすれば覚えていられる自信があるんだけど。

彼の顔は全く見覚えがないの。

それなのに、どういうことかしら?

何故か懐かしい感じがするのよね…。

どこかで会ったことがあるような、そんな気がしてしまうのよ。

でも、ね~。

彼のことなんて私は何も覚えてないわ。

色々と報告を受けてるから一通りの出来事は知ってるけどね。

だけどそれ以外の出来事に関しては何も知らないのよ。

それなのに。

どこかで見たことがあるような気がしてしまうの。

気のせい?

それともどこかで出会っているの?

わからない。

仮に知り合いだったとしても、どこで会ったのかが思い出せないからよ。

単純に考えれば入学式で見かけたっていうことかしら?

それが一番高い可能性だとは思うわ。

だとしたら見覚えがあって当然なんだけど。

だからといって懐かしさを感じる理由にはならない気がするのよね…。

う~ん。

他に考えられる可能性はないはずよ…。

だから今は入学式で見かけていたんだと思うことにしたわ。

数多くいた新入生の顔なんて一々覚えてないし。

直接話をしてみないことには印象には残らないしね。

だからこうして向かい合うのは初めてで当然なのよ。

「初めまして、と言うべきかしら?」

率直に問い掛けてみる。

天城総魔にしても私に覚えがないみたいで、
すぐに私の名前が出てくる様子はなかったわ。

「そうだな。今までに会った覚えはないな」

彼も私のことを知らないみたい。

やっぱり初対面だったようね。

どうして懐かしいって思えたのか分からないけれど、思いすごしだったということよ。

だけど、これはこれでどうなの?って思ってしまうわね。

私が入学式で挨拶してたことは覚えてないのかしら?

一応、理事長として挨拶をしてたわけだし。

ちょっとくらい覚えてくれていてもいいと思うんだけど…。

彼は全く覚えてくれてないようね。

でもまあ今は、そんな些細な疑問を深く追求する必要はないわ。

覚えていないならいないで構わないのよ。

改めて自己紹介をすれば済む話だしね。

「私はこの学園の理事長をしている米倉美由紀よ。一応入学式にも参加していたんだけど、覚えてないかしら?」

「ああ、式はほとんど寝ていたからな。悪いが覚えてない」

「あら、そうなの」

私が自己紹介をしても顔色を変える様子がないわね。

堂々と寝ていたと言える辺り、なかなかの度胸の持ち主だとは思うわ。

「まあ、式に関してはどうでもいいけど、今の試合は私も観戦させてもらったわ。たった数日でここまで上り詰めるなんてね。正直驚いているわ。とても凄いことなのよ」

彼に賛辞さんじを送りつつ。

天城総魔という人物を観察してみる。

けれど、彼の表情からは何も読み取れないわね。

感情を示さない淡々とした口調だし。

口数も少ないから何を考えてるのか分からないのよ。

それなのに。

彼の瞳には強い意志の力を感じてしまうわ。

目力ってやつかしら?

威圧感が尋常じゃないのよ。

こういう人物は最も相手にしにくい系統だと思うわ。

周りの意見で自分の考えを変えそうには思えないから、ものすごくやりにくい相手なのよ。

こうなると得意の話術で丸め込むっていうのは難しそうね。

もっと分かりやすい取引を持ちかけて、
互いの利益を交渉するべきでしょうね。

そう結論を出した私は、話を本題へと進めることにしたわ。
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