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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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再戦の誓い

《サイド:御堂龍馬》

………。

視線が上手く定まらない。

体のどこにも痛みはないけど、精神的な疲れは溜まってるのかもしれないね…。

疲労のせいか、頭がどんよりと重たく感じてしまうんだ。

頭痛とは違うけれど、すっきりとしない気分だと思う。

だけどそれも時間の流れと共に失われていくように思える。

まるでそれが当然のことのように。

ただ朝を迎えて眠りから目覚めるかのように。

意識が覚醒して思考が動き出したんだ。

ふと横を見れば沙織がいた。

心配そうな表情だったよ。

今は倒れた僕に気を遣って優しく手を差し延べてくれている。

そして沙織のすぐ後ろには翔子がいた。

だけど…。

喜んで良いのか、悲しむべきなのかが分からないみたいだね。

翔子は複雑な表情を浮かべてた。

だからそんな二人に対して、僕は精一杯の笑顔を浮かべて感謝することにしたんだ。

それくらいしか僕に出来る事が思い浮かばなかったからね。

二人にはちゃんと感謝しておこうと思ったんだ。

それから僕はもう一人の人物に視線を向けることにした。

つい数分前まで試合をしていた彼に話しかけることにしたんだ。

「助けてくれたんだね」

「その方が互いに都合が良いと思ったからな」

まるでそれが当たり前のことのように彼はそう言ってくれた。

僕のためじゃなくて、
彼自身の都合で手を貸しただけだってね。

感謝を求めるつもりはないという態度で答えてくれたんだ。

そんな彼の表情からは何も読み取れないけれど。

もちろんそれが本心だとは思わないよ。

僕を助けることで得られることなんて何もないはずだからね。

だから彼の言葉には別の想いがあるような気がしたんだ。

仲良くなろうとかそういう意思は何も感じられないけど。

だからと言って力を振りかざして無闇に敵対するような雰囲気も全く感じさせなかったからね。

むしろ争うつもりがないからこそ、
困っている人に手を差し伸べることが自然と出来てしまうようなそんな雰囲気が感じられるんだ。

だからかな?

僕は自分でも驚くくらい自然と笑顔を浮かべることができていたように思う。

予想はしていたけれど、彼が優しい人だって確信できたからね。

口数は少ないけど。

だからと言って敵対心を感じるような人物ではないと思う。

ちゃんと話し合えば、気持ちを通わせる事だって出来るはず。

そんなふうに感じたんだ。

沙織や翔子は彼のことをどう思っているんだろうか?

今はまだ二人の表情からは読み取れないけれど。

あとで聞いてみようかなとは思う。

そして僕はもう一度、彼に話し掛けることにした。

「僕の完敗だ。素直に認めるよ。君は強かった。僕が思っていた以上にね」

敗北を認めることには正直、悔しさもある。

だけどここで言い訳をしようとは思わなかった。

そんなくだらない虚勢で彼と敵対したくなかったからだ。

もちろん彼のことが怖いわけじゃないよ。

そうじゃなくて。

下手な言い訳をして自分自身の弱さから逃げるようなことはしたくなかったんだ。

だから事実はちゃんと受け入れようと思う。

僕は彼に負けた。

その事実は受け入れようと思うんだ。

「きみの勝利だ」

彼の勝利を称えて、僕の敗北を宣言する。

ここまで素直に敗北を認める気持ちになれたのは、
それだけ天城総魔という人物を気に入っていたのかもしれないね。

自分でも分からなくなるくらい不思議な感情だと思う。

試合に負けたっことははっきり言って悔しいからね。

だけどそれでも彼を祝福したいという気持ちもあったんだ。

そんな僕の心の葛藤に気付いているのかどうかはわからないけれど。

彼は微かに微笑みを浮かべてくれた。

「確かに決着はついた。だが、実力だけで計るなら俺達にそれほど大きな差はないだろう。俺も一度は敗北を実感したからな。最終的な結果として今回は俺が勝ったが、次も必ず勝てるとは言い切れない。それが本音だ」

本音、か…。

やっぱり彼の言葉には優しさが込められているように感じてしまう。

僕に対して気を遣ってくれているとは思わないけれど。

それでも試合に勝ったからといって勝ち誇るような言い方はしなかったからだ。

きっとそういう部分が彼の人間性を表わしているんだと思う。

これで良かったのかもしれないね。

僕は試合に負けて2位へと降格した。

だけど、これで良かったんじゃないかなって思える自分がいるんだ。

僕自身。

彼がどこまで高みに上り詰めることが出来るのかを見てみたいと思ったからね。

「いつの日か必ず再戦するよ。だけど今は、きみの勝利を祝福しようと思う」

それが偽りのない素直な気持ちだ。

そして今の僕の正直な感想でもある。

だからこれでいいと思うんだ。

静かに立ち上がって、試合前と同じように右手を差し出してみる。

「1位獲得、おめでとう」

彼の勝利を褒め称えると。

「………。」

彼は無言のまま手を差し出して、固く握手を交わしてくれた。

ただそれだけの行動なのに、少し仲良くなれた気がしてしまう。

「きみに栄光の祝福を。そして、僕は再戦を誓うよ」

「ああ、いつでも挑戦を受けて立とう」

彼が僕の挑戦を受け入れてくれた。

これで僕は新たな目標を手に入れたことになる。

彼を倒してもう一度学園の頂点に立つこと。

その目標を達成するために。

今まで以上に頑張ってみようと思うんだ。

「次は負けないよ」

「どうだろうな」

「ははっ」

僕達はお互いに微笑み合ってから、ゆっくりと手を放した。

次は負けない!

その想いを心に誓い。

再戦の日が来る事を願うことにしたんだ。
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