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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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最終決戦

《サイド:天城総魔》

ついに現れたか。

「初めまして、と言うのは変な感じだけど、改めまして、僕が御堂龍馬みどうりょうまです」

自らの名前を名乗りあげた青年を見て、俺は小さく微笑んだ。

おそらくそうだろうと思っていたとは言え、
実際にこうして出会えたことで目の前に立つ青年こそが最後の生徒だったと確信できたからだ。

「やはり、そうだったか」

目の前にいるのはルーン研究所で実験を行っていた青年だ。

実験室を破壊できるほどの力を持つ生徒でありながらも今まで会場で出会う事がなかった人物でもある。

そもそも一度も名前を聞かなかったことが不自然だからな。

誰もが俺に御堂の名前を秘匿していた。

だからこそ。

実験室にいた青年こそが学園最強の生徒ではないかと密かに予想していた。

俺が実験を見ていたのはほんの数分だけだったが、驚くべき能力を見せてくれたからな。

御堂こそが頂点に君臨する生徒だと考えていた。

そしてその予想は的中した。

やはり彼こそが学園1位の生徒だったからだ。

「俺は天城総魔だ」

「よろしくね」

「ああ」

挨拶をしながら右手を差し出してきた御堂の手を握り返す。

そして軽く握手を交わすと、御堂は笑顔を浮かべながら話を続けてきた。

「お互いに相手のことは知ってるつもりだけど、こうして話をするのは初めてだね」

「ああ、そうだな」

「君の噂は色々と聞いてるよ。僅か数日でここまで来れたことは尊敬に価すると思う」

尊敬、か。

嫌味で言っているわけではないだろう。

悪意は感じられないからな。

本心で褒めてくれているのだと思う。

だが、御堂の謙虚な発言を聞いたことで、首を小さく横に振ることにした。

「いや、運がよかっただけだ」

もちろん運だけではないが、そういう一面もあったと思うからだ。

実際問題として、吸収という能力がなかった場合にここまで来れたかどうかはわからないからな。

自らの能力に気づいてその才能を伸ばすことができたのは幸運といってもいいだろう。

「尊敬されるようなことは何もない」

それが本心だったのだが、御堂はそう思わなかったようだ。

「なるほど、噂通りの性格なようだね」

どうだろうな?

どういう噂かは知らないが、
翔子や沙織から聞いた話でこちらを判断しているのだろう。

「どんな噂かは知らないが、自分自身で判断したほうがいい」

「もちろんそのつもりだよ。ちゃんと自分の目で判断するつもりでいるよ」

噂を丸呑みにするほど短絡的ではないと言いたいのだろう。

こちらに対して探るような視線を向けつつ。

御堂はたわいのない会話を始めた。

「とりあえず、翔子はまだ来ていないようだね」

「ああ、そうだな」

会話の流れで俺達の視線が会場の入口へと向くが、いまだに翔子の姿はどこにも見えない。

すでに約束の時間は過ぎているのだが、それでも翔子は姿を見せなかった。

とはいえ。

このまま来ないという訳ではないだろう。

何らかの事情で遅れているのかもしれない。

あるいは、わざと時間をずらしているのかもしれないな。

黒柳達の行動を警戒しているのか?

もしくは黒幕の動きを探っているのか?

そういった事情だろう。

もともと翔子は偵察を得意としている人物だからな。

戦闘よりも情報収集能力を重視している翔子なら、
会場周辺で暗躍していてもなんら不思議ではないと思う。

そんなふうに判断していると、
視線を戻した御堂と再び向かい合う形になった。

「それより、きみの準備はどうかな?」

「問題ない」

「そう?まあ、僕も特に何もないけれどね」

こちらの状況を探るためだろうか?

俺の全身を眺めてくる御堂だが、
感じ取れる魔力の総量はかつて研究所で感じていた時よりも数倍に膨らんでいるはずだ。

今の俺の魔力は御堂と同等か僅差でかろうじて負けているかという程度だろう。

さすがに魔力が最大値にまで回復しなかったことが原因だが、
北条と戦った時に比べれば余裕がある状況だとは思う。

「以前よりもかなり魔力が上昇したようだね」

御堂も同じように判断したようだな。

魔力の総量だけでは実力は判断出来ないものの。

それでも考慮する必要はあるからだ。

こちらからして見れば、俺の方が微かに下回っているからな。

慎重に試合を進める必要があると考えているのだが、
僅か数日で追いつかれたことで御堂としても思うことがあるようだ。

「さすがは吸収の能力者、というところかな?」

御堂もまだ俺の魔力の上限を知らないために勘違いしているようだが、
現在の魔力が俺自身の総量というわけではない。

沙織との戦いによって尽きた本来の魔力はまだ完全には戻らず、
北条との戦いによって消費した魔力も失われたままだからだ。

今は減少したままの自分自身の魔力に
北条から奪い取った僅かな魔力を上乗せした量が残っているに過ぎない。

だからこそ沙織に劣る魔力の持ち主である御堂にも総量で負けているのだが、
本来の魔力がもどればそれだけで御堂を上回ることは出来るはずだ。

とはいえ魔力さえあれば試合に勝てるというものではないからな。

あくまでも目安でしかない。

「噂に惑わされないようにすることだ」

「それは警告かい?」

「忠告だ」

「なるほどね、ありがたく聞き入れておくよ」

互いに本心を見せない駆け引き。

そんなふうに二人で駆け引きを行う最中に、不意に沙織が声をあげた。

「あれ?翔子?」

呟く沙織の声を聞いて入口へと視線を向けて見ると、翔子は受付付近にいた。

だが、そこまでだ。

受付からこちらに来る様子はない。

「どうしてこないのかしら?」

翔子の行動に疑問を感じた沙織が手を振って呼び掛けようとするのを御堂が遮る。

「いいんだよ、沙織。翔子には翔子のやるべき事があるんだ。今は自由にさせてあげよう」

「やるべき事って?」

沙織は試合後に倒れていたから知らないだろう。

北条の時にはその必要さえなかったからな。

翔子の行動の意味を沙織は知らないようだ。

だとすれば教えるべきだろうか?

その必要はないかもしれないが、
疑問を感じている沙織に答えておくことにした。

「翔子の目的は受付の妨害だ。」

俺達はまだ今日一度も格下からの挑戦を受けていないが、
ここには数多くの生徒達がまだ残っているからな。

「試合の決着後に格下からの試合の申し込みが起きないように、受付で監視するつもりなのだろう」

負けた側は戦闘不能で試合が組める状態ではないとしても、
勝った側は意識を失っていない限りは試合を受ける義務がある。

そうなればどちらが勝ったとしても1位を死守するのは難しいだろう。

「俺達を守るために受付を封鎖しているということだ」

「………。」

翔子の目的を知ったことで、沙織は翔子へと視線を向けた。

そして。

何かを考え始めた。

「…翔子。」

本当なら間近で試合を観戦したいはずだが翔子にはそれが出来ない。

おそらく沙織が代わると言っても翔子は受け入れないだろう。

そんな翔子の気持ちを察したのか。

沙織は御堂に視線を向けた。

「ねえ、龍馬」

ただ呼びかけただけの行動で、御堂も沙織の気持ちを察したようだ。

「ああ、行ってあげて」

沙織の思いを察した御堂が微笑むと、
沙織は小さくお辞儀をしてから翔子に向かって駆け出していった。

「仲がいいことだな。」

「大事な親友だからね」

「なるほどな」

御堂も理解しているようだ。

翔子が我慢しているのに自分だけが留まる事は出来ないのだろう。

覚悟を決めた沙織も会場を出て行った。

そして沙織と翔子の二人は受付の封鎖という強行手段の為に、
試合場から遠く離れた会場の入口から試合を観戦する事になった。

その結果として。

試合場に残されたのは御堂と俺だけだ。

作業を完了させた研究所の職員達も今は完全に姿を消している。

受付周辺にはいるようだが、
黒柳も含めた全ての職員達が入口付近にまで後退しているようだ。

他には誰もいない。

この広大な検定会場において、
現在会場内にいるのは俺と御堂の二人だけになっていた。

すでに入口は解放されている為に帰る事が自由になった検定会場なのだが、
それでも誰一人として帰ろうとはしないようだ。

ここまで待たされた以上。

最後まで見届けるという気持ちなのだろう。

多くの観戦者達の視線を浴びながら、二人で試合場に足を踏み入れることにする。

今回も審判はいないようだ。

それどころか試合場周辺には誰もいない状況だからな。

試合の開始は二人の気持ち次第になるだろう。

試合開始の合図は互いの呼吸だ。

それぞれに立ち位置を決めて向かい合う。

その瞬間に緊迫した雰囲気が会場内を埋め尽くしていく。

寒気さえ感じるほどの圧迫感が周囲に広がっていき。

静かな試合場にさらなる静寂が訪れる。

遠く離れた場所から試合を眺める観戦者達。

それぞれが試合開始を待ちわびる中で試合場が防御結界に包まれた。

ここまでくればもうあとは戦うだけだ。

御堂も同じことを考えているのだろう。

互いに口を閉ざし。

緊張すら感じる二人の手にルーンが現れる。

「さて、これから試合を始めるわけだけど、きみのこれまでの報告は受けているから魔剣の力も知っているよ。だけどそれだと公平とは言えないからね。僕の力も紹介しておくよ。この剣の名はエンペラーソード。全てを支配する聖剣だ」

こちらは魔剣ソウルイーターだが、
対する御堂の聖剣はエンペラーソードというらしい。

魔剣と聖剣か。

対極とも言える力だが。

だからこそ最終決戦にふさわしい戦いなのかもしれない。

「全てを支配する剣か、面白い。それが事実ならその剣で俺の魔剣も封じて見せろ」

「ああ、そのつもりだよ」

互いに信じる武器を手に、相手を制する戦いに身を投じる。

「行くぞ」

「ああ、受けて立つよ」

武器を構えて、それぞれに最初の一歩を踏み出す。

「その力、見せてもらおう!!」

二つの剣による戦いが、ついに始まった。
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