挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

175/4820

未知のまま

《サイド:美袋翔子》

試合開始まであと1時間になったわね。

私は今、医務室にいるわけだけど。

時刻はすでに午後6時を過ぎているわ。

「残り60分を切っちゃったわね」

小さな声で呟いてみる。

別に誰かに返事をしてもらいたいわけじゃないけどね。

なんとなく言葉にしたい気分だったのよ。

「もうすぐね…」

時計から視線を逸らして、眠っている真哉を見つめてみる。

う~ん。

真哉はまだ目覚めないようね。

目を覚ます気配がないまま眠りについているわ。

まあ、総魔との試合で全ての魔力を失っちゃったわけだし。

自然回復を待つしかない状態だから今日や明日で目を覚ますことはないかもしれないけどね。

「こればっかりはね~」

他の生徒達と真哉では決定的に違うのよ。

魔力の総量が桁違いなの。

私と比べたらそれほど大差はないかもしれないし。

沙織と比べたら劣るとは思うけどね。

だけどそれでも並みの生徒とは桁が違うわ。

一度失った魔力が完全に戻るまでにかかる時間は他の誰よりも長いでしょうね。

だから真哉は目覚めない。

これから始まる試合を真哉だけは見れないのよ。

「それでいいの?」

真哉が知らない間に結果が出ちゃうのよ?

当分目覚めることはないと思う真哉の寝顔を眺めながら独りで呟いてみる。

「もうすぐ終わるわよ?」

この5日間、あっという間に過ぎていった気がするわ。

「色々あったね」

眠る真哉に語りかけてみる。

たった5日間の出来事だったけれど。

その間に総魔と出会って、観察して、話し合って、戦ったのよ。

私も、沙織も、真哉も、そして龍馬もそう。

これから戦うことになるわけだしね。

長いようで短かった総魔の戦いがあと1時間程度で終わってしまう。

思い返せばあっという間の出来事だったわ。

まだ終わったわけじゃないけど。

それでも、ね。

それでも思うの。

間違いなく総魔が勝つってね。

信じているの。

…ううん。

少し違うかな?

言い換えるなら、総魔が敗北する姿を想像出来ないって言うべきかもしれないわね。

もちろん龍馬の実力は十分過ぎるほど理解してるつもりよ。

学園2位の真哉でさえ霞むくらいの実力の持ち主なんだから。

だから龍馬が弱いなんて思わないわ。

だけどね。

それほどの実力を持つ龍馬を知っているからこそ思うの。

それでも『総魔には届かない』ってね。

私からすれば圧倒的って言えるくらいすごい実力を持つ龍馬だけど、
龍馬が対するのは圧倒的どころかその実力の全貌すら見えない総魔なのよ?

龍馬の実力は理解してるけれど、総魔の実力は未知のままだから。

それだけでも大きな違いがあると思うわ。

それにね。

何よりも総魔が魔法を使いこなせることが重要だと思う。

沙織との試合でも実証されたけれど、総魔は魔法が使えるのよ。

私も沙織も龍馬でさえも、まだ魔法は使いこなせないわ。

はっきり言うなら不得意って言っても良いと思う。

出来なくはないけれど、出来るとは言えないって感じね。

魔術と魔法は根本的に違うものだからよ。

私も沙織も真哉も龍馬も、みんなルーンは扱えるわ。

そしてルーンの力は魔法そのものと言えると思う。

込めた魔力によって威力が変動する力は魔法と言えるからよ。

魔術とは一定の魔力を消費して一定の効果を生み出す力だから、
これは誰が使用しても同じ結果になるけれど魔法は違うの。

込めた魔力の量や、術者の能力によって大きく変化するのが魔法なの。

だから術者次第によって効果が上昇する事もあれば、効果が低下する事もありえるのが魔法なのよ。

それでもルーンを『媒体』として魔術を発動した場合に限り。

私や沙織も魔術を魔法として発現する事が出来るの。

得意とする能力を持つルーンの力は当然、術者にとっても扱いやすい能力だしね。

得意な魔術であればルーンを媒体とする事で魔術を魔法として使用出来るのよ。

もちろん魔術のままで発動させる事も出来るけどね。

それは術者の意志に応じてどちらにでも対応出来ることよ。

私で言えば金色の弓パルティアによって放つことの出来る光の矢は魔術でもあるし、魔法でもあるわ。

発動の手順はどちらも同じで『魔術』として使用してるからよ。

だけど、その結果が変わるのが魔法なの。

意識的に切り替えることでどちらとしても発動出来るけどね。

沙織の場合で言うと、あらゆる魔術が適応されるんだけど。

ルーンを通して発動した場合のみ魔法と言えるでしょうね。

ルーンの力を借りなければ、沙織といえども魔法を使えないのよ。

それは真哉や龍馬にしても同じなの。

だけど、総魔は違うわ。

ルーンを媒体としなくても、自分の意志で魔法を使用出来ているの。

総魔だけは媒体に頼らないっていうことよ。

それは試合以外でも実証してるしね。

私と沙織の怪我を治療した魔術。

あれもただの魔術ではなくて魔法として発動した力のはずよ。

本来なら蘇生魔術なんて存在しないしね。

まあ、さすがに死者を蘇らせることはできないとしても、
副作用を抑えて怪我の治療を行えるあの力は確実に魔法と言えるわ。

魔術と魔法の違いは効果が変動するかどうかだから、
必ず同じ結果になる魔術とは違って魔法は術者の能力に依存してしまうのよ。

だから私達には魔法が使いこなせないの。

なのに総魔だけは自在に魔法を使いこなせてる。

その決定的な差。

それだけを見ても技術面において総魔はすでに龍馬を凌いでいると言えると思うわ。

だからこそ思うのよ。

総魔は必ず勝つ…ってね。

そして同時に、目の前で眠り続けている真哉を見て思うの。

私にしても…

沙織にしても…

真哉にしても…

総魔に攻撃する事は出来たわ。

だけど、ただそれだけなのよね。

総魔に攻撃することはできても、
総魔を追い込むことは出来ていなかったんじゃないかな?って思ってしまうのよ。

総魔は本当に全力を見せていたのかな?

隠していた力は全て見せたと思うわ。

でも、ね。

だからと言ってそれが全力であるとは限らないわよね?

ギリギリにまで追い込まれた時に総魔はどんな戦いを見せるのかな?

そこまで引き出せた人はまだ誰もいないんじゃないかな?

そう思うから、考えたくなるの。

次で最後になる龍馬との試合で、総魔は全力を見せてくれるのかな?

龍馬の力がそこまで及ばなければ試合の結果は総魔の圧勝になってしまうわ。

でももしも龍馬の実力が総魔に迫るものだとしたら?

その時こそ、総魔の真の実力が示されるかもしれないわ。

「ねえ、真哉。あなたならどう思う?」

問い掛けてみたけれど。

質問に対して返ってくる言葉は、いつまで経ってもなかったわ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ