挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

143/4820

八つ当たり

《サイド:西園寺つばめ》

天城総魔達が立ち去った後。

一人で立ち尽くしていた私の側に二人の人物が歩み寄ってきたわ。

一人は私の上司の黒柳所長で、
もう一人は学園の理事長でもある米倉代表よ。

「彼らは行ったようだな」

「大変だったわね。ご苦労様」

声をかけられてすぐに二人に視線を向けてみたものの。

精神的に疲労困憊だったから、
心境的にはそっとしておいて欲しかったわ。

まあ、立場的に文句は言えないけどね…。

「ぅぅ…お疲れ様です。」

まだ呆然としてる状態だけど、
それでもなんとか気持ちを切り替えようとしていると。

所長が笑顔を浮かべながら話しかけてきたわ。

「最後まで見ていたが、なかなかの演技だったぞ」

くっ!

失笑としか思えない笑みだったわね。

だからそんな所長の表情を見ていると、どうしても苛立ちを感じてしまうわ。

「本当に怖かったんですからねっ!!!」

全力で怒鳴ってみたけれど、
それが八つ当たりでしかないことは自分でも十分理解してる。

天城総魔と対面した恐怖は今もまだ消えていないし。

両膝がガクガクと震えているからよ。

「ははっ。そいつはご苦労様だったな」

あ~、もう!!

笑い事じゃないですっ!

いまだに笑顔のままの所長を強く睨みつけてみる。

だけど所長は全く気にしない。

それどころか今度は米倉代表が苦笑を浮かべながら話しかけてきたわ。

「まあ、結果はともかく。天城総魔に勘づかれる事は最初から考慮していたから、この状況は仕方のないことよ。ただ…あの対応はまずかったわね」

うぅ…。

「…も、申し訳ありませんでした」

仮にも国家の代表である米倉代表に怒鳴るわけにはいかないわよね。

だから即座に頭を下げたんだけど、
一応それ以上怒られることはなかったわ。

「まあ、済んだ事を言っても仕方がないし、気にしなくていいわ。それよりも実験はどうなの?」

「それが…」

言葉に迷ってしまうわね。

そんな私の態度を見ていた所長が実験結果を察してくれたみたいだったわ。

「失敗だったのか?」

どう…なのかしらね…。

「い、いえ。完全に失敗というわけではないんです。ですが…」

言葉を整理してから実験結果を二人に話してみる。

まずは表向きの実験からだけど。

結界の耐久性に関してはほぼ予想通りの結果が出たから、
多少手直しをすれば完成に近づくはずよ。

だけど本題はそちらではないわね。

本来の目的である拘束結界の結果が重要なんだけど、
こちらの実験は想定していた効果を遥かに下回る結果になってしまっていたわ。

今回の実験の為に準備した結界は簡易的な物だから最初から大した効果は期待出来ないものだったけれど、
それでも想定していた効果を大きく下回っていたのよ。

あえて簡易的な機材を導入した理由は拘束結界をそのまま使用すればさすがに勘づかれるかもしれないと思ってわざと効果の低い試作品を使用していたんだけど、
天城総魔と北条真哉の二人に対して発動させた結果は僅か数秒間しか魔力を止める事が出来なかったわ。

でも…。

影響を与えること事態は成功していたから完全に失敗というわけではないはずよ。

むしろ中途半端に発動したことで、
天城君に気付かれずに済んだという利点があったかもしれないわね。

結果的に拘束結界としての実験は失敗したけれど、
魔力に干渉するという実験には成功していたから、
これから今回の実験結果を元にして試作品を改良すれば『対天城総魔用』の切り札となりえるかもしれないわ。

…というところまで説明したところで、所長と米倉代表は黙り込んでしまったのよ。

「………。」

しばらく沈黙する二人。

すでに天城総魔は学園2位へと勝ち進んでいるから次が最後の試合になるわ。

御堂龍馬との試合が行われるのがいつになるのかは知らないけれど、
それまでに実験が完成するのかははなはだ疑問ね。

頭の痛い問題だと思うわ。

残り時間はあとわずか。

今日中に試合が行われるのか?

それとも明日に引き延ばされるのか?

遅ければ遅いほど私達にとっては有り難いのよね。

…と、なれば。

なんとしてでも時間を稼ぐ事が最優先事項になるのかしら?

その辺りも含めて、再び話し合うことになったわ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ