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THE WORLD 作者:SEASONS

4月5日

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戦力半減

《サイド:米倉美由紀》

そろそろね。

試合場から隠れた見えない位置に潜んで様子を見る。

天城総魔の観察という目的を持ってここにいるんだけど、
それ以上に拘束結界の結果が気になってこっそり様子を見に来ているのよ。

で、まあ、あれが天城総魔なのね。

入学式でも見たような気はするけど、はっきりとは覚えてないわ。

ただ、眠ってばかりで態度が悪いと感じていた生徒の一人が彼だったようには思うけどね。

あの時はまだそこまで気にしてなかったから、はっきりいって覚えてないのよ。

天城総魔という人物を甘く見ていたのは事実だったでしょうね。

だから今日この時まではっきりと顔を見ることさえしなかったのよ。

それがすでに怠慢だったわけだけど…。

仕事を他人に丸投げしている間に追い込まれる結果になってしまったのよ。

これを怠慢と言わずになんていうのかしら?

込み上げて来る悔しさを噛み締めるかのような表情を浮かべながらも、
心は焦りを隠せないでいたわ。

この件に関しては、本当についてないと思うからよ。

昨日の夜の段階ではね。

こんな大掛かりな準備をするつもりはなかったのよ。

当初の予定では試合中にこっそり実験を行う程度の予定だったの。

試合はまだあと『2回』もあるんだから。

北条君との試合中に実験を終えて、
その後の御堂君との試合に間に合うように準備を進めていくつもりだったのよ。

そんな予定を立てていたのに。

今朝になって再び想定外な出来事が起きてしまったわ。

そうならないように願っていたのに…。

期待は大きく覆されてしまったのよ。

今日になって沙織まで離反してしまったの。

その理由に関しては何も話してくれなかったけれど。

翔子と同様に天城総魔に関する一切の諜報活動を放棄するという言葉を残して沙織は姿を消したわ。

翔子に続いて沙織まで私の手を離れてしまったのよ。

その事実が私を焦らせる原因になっているの。

ここまで来れば話はもう緊急事態どころではないわね。

まさしく非常事態と言ってもいいくらいなのよ。

絶対にあってはならない状況になってしまったのよ。

これで戦力は半減したわね…。

頭数は半分だけど、実力的には天城総魔が優勢だと思うわ。

翔子はともかく、大賢者である沙織が抜けたのが痛いのよ。

私の直轄の極秘部隊である4人の主戦力が半壊したのは大きな痛手だわ。

天城総魔の能力を考慮すれば数の力で押さえ込むという方法は愚策ぐさく

量よりも質で対抗しなければいけないのに…。

すでに二人が抜けてしまった現状は最悪の結果に向かって突き進んでいるようにしか思えないわね。

ここで北条君まで倒れれば『特風』は壊滅一歩手前よ。

翔子も沙織も北条君も。

表向きは単なる風紀委員だけど、

実際には単なる委員を遥かに超える権限を与えられているわ。

学園内では彼らの組織を畏怖を込めて『特風』と呼んでいるんだけど。

その業務内容は内部監査を専門とする実行部隊なのよ。

正式名称は『特別とくべつ風紀委員ふうきいいん』と呼ばれているわ。

そんな学園の規律を守るべき役職につく4人の生徒のうちの二人が私の手を離れたのよ。

それに…ね。

あい昧な態度をとる北条君の存在も懸念けねん材料になっているのよ。

もしも彼まで離れるような事があったら。

もうどんな作戦も意味を成さないと思うわ。

彼等を封じ込める強制的な力なんて皆無に等しいからよ。

それこそ私にとって最後の希望と言ってもいい拘束結界が完成しない限り。

対抗することさえ難しいでしょうね。

もうあとがないのよ。

そう思うからこそ。

実験を完成させる為に。

強引だとは分かっているけど、なりふりかまわずに強行手段に出たのよ。

だから今回の実験が大規模になってしまったのは沙織が私の手を離れたからという理由のせいよ。

これ以上、天城総魔の勢力が拡大するのは困るの。

今は僅か3人でしかないけれど、
今後も増えないという保証はどこにもないわよね?

北条君や御堂君でさえも絶対に裏切らないとは言い切れないからよ。

それに。

学園内の他の生徒が天城総魔の影響を受けないとも言い切れないわ。

力に心酔する生徒は必ず出てくるでしょうし、
翔子や沙織の協力者が天城総魔の勢力に流れる可能性もあるわ。

だから数が少ない今のうちにおさえこまなければいけないのよ。

そのために一刻も早く拘束結界を完成させる事が最重要事項となってしまったの。

だからもう、なりふりかまってはいられない。

天城総魔に勘づかれる可能性を考慮しながらも強行策に出るしかなかったのよ。

とは言え。

ここで実験が失敗すれば全てが無意味よね。

成功すれば天城総魔に対する力として考慮出来るけれど、
その前に気付かれて対策を取られるような事になれば再び頭を悩ませる事になると思うわ。

だけどね。

それがわかっていながらも、
限られた時間で実験を押し進める為にはもうこうするしか他に方法がなかったのよ。

こうなったらイチかバチかね。

全てが、なんて贅沢は言わないわ。

部分的にでも上手くいくように願うだけよ。

そんな神頼み的状況で実験を見守っているところなの。

頼むわよ、みんな…。

北条君には試合を託し。

未完成の実験の行く末を西園寺さんに委ねる。

今はまだ何もできない私は、ただ黙って眺めることしかできなかったわ。
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