挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

115/4820

たどり着く答え

《サイド:常盤沙織》

………。

どうやら、ここからが本番のようですね。

翔子を圧倒的な力でねじ伏せた力を目の前で感じながら、
私はもう一度、彼に向けて杖をかざしました。

まだ負けられません。

ここで、一撃で敗北するわけにはいかないからです。

私にはまだ彼の大魔術であるアルテマを突破しなければならない理由があるのです。

その目的を叶える為に。

残存する魔力を全力で杖に注ぎ込むことにしました。

どんな攻撃が来たとしても必ず耐えてみせます。

完全なる相殺の一点にのみ狙いを絞って意識を集中させていきました。

ここさえ耐え凌げれば、私の目的は叶えられることになるからです。

最初から彼に勝てるとは思っていません。

翔子が敗北した時点で勝負の行方は確定しています。

だからこそ勝敗よりも重要な任務として私に課せられた役目は調査です。

彼に関して一つでも多くの情報を手に入れて、
今後の試合を有利に進めることが私の最大の目的なのです。

だから必ず耐えきってみせます。

あとのことは考えずに。

全力で魔力を杖に注ぎ込んで迎撃用の魔術を展開していきます。

その間に彼も魔術の圧縮を進めている様子ですが、
私としては妨害するつもりは一切ありません。

彼の全力の一撃を受けることに意味があるからです。

だから彼の邪魔はしませんし、
彼の思う最高の一撃を準備させてから全力で耐え凌ぐつもりでいます。

「さあ、見せてください。あなたの実力を」

「ああ、いいだろう」

私の挑発を真っ向から受け止めた彼はこれまで以上の魔力を集約して翼に魔術を蓄積させていきました。

はっきりと視認できるわけではありませんが、
感じられる魔力の流れから翔子の時の倍に及ぶ威圧感を感じます。

おそらく時間をかければかけるほど威力が上昇するのでしょう。

その準備段階を黙って見守ることで魔術の発動を待ち構えました。

………。

わずかに訪れた沈黙の時間。

彼はアルテマの準備を行い。

私は相殺の準備を進めます。

魔力を無駄にしないために様子を覗う私でしたが、
ついに彼が問い掛けてきました。

「覚悟は出来たか?」

っ!?

ついに、始まるようです。

彼の言葉によってそれだけは理解できました。

上手く耐え凌げるでしょうか?

彼の魔術の準備が整ったようですが、
私の準備は万全とは言えません。

彼がどんな魔術を組み合わせたのかを見極める事が出来なければ完全な相殺はできないからです。

彼の放つアルテマの分析が追いつくかどうか?

私にとってはそこが最大の焦点となります。

だから判断を誤ればその時点で敗北が確定してしまいます。

ですが、上手く読み切れれば…。

解析が追いつけさえすれば相殺は可能なはずです。

もしも間に合わなければ翔子の二の舞になるだけですが、
魔術の構成を読み切れれば耐え凌げる自信はあります。

「覚悟なら最初からできているわ。」

「そうか、だとしたら問題はないな」

死力を尽くす一瞬がついに始まるようです。

「行くぞ」

彼が最強の力を解放させました。

「アルテマ!!」

くっ!

一瞬で放たれれる数々の魔術。

それら全てを瞬時に判断することはできませんが、
直感的に感じた数は30を超えているように思えました。

翔子に放たれた数と比べればほぼ倍になるでしょうか?

当然まともに受ければその破壊力も倍になります。

翔子の時でさえ瀕死の重傷だったのですから、
今ここでアルテマの直撃を受けることは即死を意味するでしょう。

それほどの危険性を持つ魔術が高速化の理論によって目では追えない速さで放たれているのです。

迷っている暇は一切ありませんでした。

「は、速いっ!?」

死を直感したおかげでしょうか?

無意識に反応した体が杖の先端にある五紡星をアルテマに突き刺していました。

そして同時に。

杖に蓄えていた魔力を魔術に変えて、
アルテマに対する迎撃魔術を展開していました。

「くぅっ。まだ、負けないわ…!!」

本来であれば発動と同時に破壊の嵐に変わるはずの魔術が動きを止めています。

どうやら迎撃の時間を稼ぐことには成功したようです。

ここで押し負ければこれまでの努力が無駄に終わりますが。

もしも耐え切れさえすればアルテマの恐怖は薄れて、
絶対的な魔術から驚異的な魔術へと格下げすることができるはずです。

『発動=全滅』という結果さえ覆せるのなら、
彼に一矢報いたと言えるのではないでしょうか?

絶対に対抗できない魔術なんて存在しません。

そんなふうに強く思い込むことで自分を奮い立たせようとしました。

ですが。

幾重にも重ねられた彼の魔術は文字通り凶悪です。

コンマ一秒ごとに次々と最上級魔術が炸裂していくからです。

並みの魔術師であれば1秒と持たずに吹き飛んでしまうでしょう。

翔子でさえ抵抗できなかったのですから。

アルテマを耐え凌ぐのはとても難しいと思います。

だけど私は普通ではありません。

対魔術戦において私の能力は他者を圧倒的に凌駕しています。

それこそ純粋な魔術勝負であれば、
学園1位のあの人でさえ手も足も出せないのです。

武器を持った戦闘という舞台では3位という地位に甘んじている私ですが、
魔術師としての実力だけを見れば学園の頂点に君臨するのは私です。

だからこその大賢者であり、
唯一無二の称号を持っているのです。

「どんな魔術にも必ず欠点があるはずなのよっ」

これまで一度も魔術に対抗できなかったことはありません。

ありとあらゆる魔術を分析し、
ありとあらゆる魔術に対抗してきました。

その自負が私の思惑の根本にあります。

赤、青、白、黒、黄色。

五紡星とぶつかり合う数々の魔術の光を瞬時に見極めて、
必死に相殺しようと迎撃魔術を展開していきます。

その攻防を観ている人達にとっては、
それこそ星がきらめいているかのような輝かしい光を目にしているのかもしれません。

解放された力と相殺する力。

それらがパチパチと小さな音を立てながら、
互いの存在を打ち消しあっているからです。

アルテマの発動からわずか4秒。

その短時間で10の魔術を相殺しました。

それでも止まらないアルテマを完全に消し去るために私のルーンが輝きを増していきます。

「まだ、負けないわっ!」

そのあとの攻防も僅か数秒だったと思います。

私の感覚としては永遠にも等しいと思えるほどおそろしく長い時間だったのですが、
実際に行われていた攻防はホンの十秒程度の出来事のはずです。

それでも一瞬で吹き飛ばされた翔子と比べれば、
たとえ数秒でも持ちこたえられた私は十分な結果を出せのではないでしょうか?

激突する私達の魔術は静かに互いの存在を打ち消し合っていくのですが、
それでも永遠に続くわけではありません。

いつか必ず終わりが訪れます。

それは私にとって悪い意味であっても訪れてしまうのです。

う、うぅ…っ。

「そん、な…っ。」

ここまできて耐え切れないなんて…。

強く光り輝いていたはずの杖から徐々に光が失われていくのがはっきりと分かりました。

その理由は考えるまでもありません。

魔力の喪失を意味しているからです。

「…ここまできて、押し負けるなんて…っ」

アルテマの力に対抗しきれないようです。

私の体は少しずつ押されてしまっています。

このままではアルテマの破壊力を相殺しきれずに直撃を受けてしまうでしょう。

う…ぁぁ…。

もう、防げません…っ。

悔しいですが、抵抗を諦めるしかないようでした。

魔力が足りないのです。

迎撃魔術はもう使えません。

ここで…。

ここで私の敗北が確定してしまうようです。

自分自身でも魔力の限界がはっきりと実感できてしまいました。

…だからでしょうか?

試合を観戦している誰もが私の敗北を感じているようです。

私自身も敗北を実感してしまうほどなので当然かもしれませんが…。

ここで、誰もが予想していなかった事態が起きました。

私の迎撃が弱まって魔力が底をついてしまう直前に。

突如としてアルテマが消失したのです。

「…ぇ?消えた?」

一瞬、何が起きたのか理解でませんでした。

アルテマを相殺しきれなかったことで、
魔術に飲み込まれると思っていたからです。

だからすぐには理解できませんでした。

「…どうして?」

私の杖からはもう輝きは感じられません。

かろうじて存在を維持する程度の魔力は残っているようですが、
次に何らかの魔術を使用すればルーンは存在を消滅させてしまうでしょう。

それほどの状態に追い込まれているのです。

ですが、私の体は無傷でした。

翔子を死に直面させた時を大きく上回る魔術を受けたのに、
無事に生き残ることができたのです。

これは、つまり…?

たどり着く答えは一つではないでしょうか。

「耐え切れたの?」

二人の魔術はほぼ互角の攻防だったようですね。

そして最終的な結果は私の粘り勝ちでした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ