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THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

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試合前に

《サイド:天城総魔》

「試合前に、少しだけ話をしても良いですか?」

沙織から話しかけてきた。

何の話か知らないが、
この状況で話しかけてくる以上は何らかの目的があるのだろう。

これから試合を行うという状況で仲良くなる必要はないと思うが、
話くらいは聞いてもいいと思う。

わざわざ断るほどの理由はないからな。

問い掛けてきた沙織に無言で頷いてみると、
沙織は深々と一礼してから話し始めた。

「まだ自己紹介をしていなかったと思いますので。改めまして、生徒番号3番の常盤沙織といいます」

礼儀正しく挨拶を行う沙織の振る舞いには気品すら感じられる。

それが性格なのかどうかわからないが、
翔子とは違って落ち着いた雰囲気を感じさせるな。

「あなたの事はすでにある程度知っているつもりです。もちろん翔子との試合を拝見させていただいた事もありますが、試合とは別に噂話程度には話を聞いていましたので…」

噂話か。

おそらく翔子から話を聞いていたということだろうな。

だからと言って特に不満を言うつもりはない。

どこで誰が何を話していようとそれくらいは自由だと思うからな。

好きにすればいいと思うだけだ。

「言いたいことはそれだけか?」

「…あ、いえ。」

違うらしい。

まあ、これから試合を行うという状況だからな。

単なる自己紹介がしたいわけではないだろう。

おそらくこのあとに本題が続くはずだ。

「あなたはそんな話に興味はないでしょうね。ただ、どうしても試合前に一つだけあなたに伝えておきたい事がありました」

伝えたいこと?

何を言いたいのかは知らないが、
沙織は何故か翔子に視線を向けてから話を続けた。

「あの子は…翔子は私達から離反しました」

離反?

どういう意味だ?

意味が分からずに翔子に視線を向けてみると、
黙って話を聞いていた翔子も動揺しているように見えた。

どうやら沙織の話の内容に関して、
翔子は何も聞いていなかったようだな。

翔子の隣にいる北条はただ黙って沙織を見つめている。

何かを言いたそうにしているが、
余計な口出しはしないとでも考えているのだろうか?

北条はただじっと沙織を見つめていた。

そして肝心の沙織は淋しそうな目で翔子を見つめている。

視線だけで何かを訴えているようにも思えるが、
その内容はわからない。

しばらく翔子を見つめてから、沙織の視線は俺に戻った。

「これ以上あなたに迷惑をかけたくない…と。そう言って、あの子は私達から離反しました」

ああ、なるほどな。

迷惑をかけたくない、か。

翔子らしい考えだと思う。

黙って沙織の言葉を聞いている翔子も何か言いたそうな表情を見せているが、
おそらく何を言えばいいのかが分からないのだろう。

戸惑うような表情でじっと沙織の後ろ姿を見つめている。

そんな翔子に視線を向ける事なく、
沙織は話を続けていく。

「もちろんあなたを怨むようなつもりはありません。今回のことはあの子自身が選んだ事です。だから、それはいいんです。ただ、あなたにはちゃんと知っていてもらいたかったんです。あの子は、あなたの為に私達とは違う道を選んだということを…。そのことをあなたには知ってもらいたかったのです」

俺のために、か。

懸命に想いを伝えようとする沙織の言葉には悲しみがこもっているように感じられる。

翔子が何を思って行動しているのか俺はまだ知らないが、
沙織がただ一つ伝えたかったことは十分理解できたからだ。

それはつまり。

翔子は俺の味方だというたったそれだけの話だ。

ただそれだけのことを沙織はどうしても俺に伝えたかったらしい。

「…そうか…。」

沙織から話を聞いたことで、
もう一度翔子に視線を向けてみる。

何を言えばいいか分からないのか、
今も戸惑いを見せているままだな。

翔子が何を考えているのか俺は知らない。

特に気にするつもりもないからな。

正直に言えば話を聞いた今でも翔子のことを考える気はない。

個人的な意見を言ってしまうなら、
すでに倒した相手に興味はないからだ。

翔子が敵であっても味方であっても俺の対応は変わらない。

邪魔をするなら排除し、
協力してくれるなら話を聞くという程度だ。

…だが。

俺の為に仲間との決別の道を選んだという翔子の気持ちを疎ましく思うつもりもない。

迷惑だとか邪魔だとか、
そんなふうに思うほど翔子を嫌っているわけではないからな。

少なくとも信用できる人物だとは思っている。

これまでの行動から考えて、
信じるに値する人物だとは思っていたからだ。

…だから今は…。

翔子に向けて一言だけ伝えておくことにした。

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