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茜伯爵の即位式 02
「ずいぶん長い間…本当に待ちかねたぞ、我が花よ」
「お待たせいたしまして申し訳ございません、我が主。我が君が剣となりし為、やって参りました」
 
 儀礼に則ったやりとりだけど、秋津島公の言葉には重みがある。
 秋津島公は、姉ちゃんを十年も待ち続けたのだ。

 普段は華族であろうと…そう、たとえ<四神>であろうと、秋津島公が玉座を立つことはない。
 秋津島公にとって、茜伯爵はそれだけ大事な存在なのだと今の俺たちは知っている。
 茜伯が存在するかしないかは、秋津島公にとってかなり大事なことらしいのだ。
 そして多分、後ろの高御座にいる<皇>にとっても。

「そなたを得て、我が治世はより一層安定しようぞ。そなたの存在そのものが、妾にとっての幸いなれば」
「我が君にとって、更に幸いとなるように励みましょう。何事も公のよろしきように」

 リィィィィン、と鈴のような音が響くと、姉ちゃんと秋津島公の下に魔法陣が現れる。

<契約の陣>は、神官の色である白と司法官の色である黒。
 秋津島公と交わす誓約は、神との契約だ。
 そして契約とは法に従うこと。

 司法官を束ねる玄武候の黒檜扇がぱらり、と開き、神官を束ねる白虎候の白檀扇が逆に閉じると、姉ちゃんたちが輝き出す。

「汝、桐生雅に伯爵位を与える。伯の花は三千遡りし古来より茜なり。これよりは茜伯を名乗り、朱雀の地に封じるものなり。異議なしや?」
「御意」
「これより我が傍に侍り、我が身を守ってたもれ、我が茜。すべての茜伯が秋津島公を守ったように」
「我が身が朽ち果てようとも、御身が信頼を裏切らぬことを誓いましょうぞ。我が剣にかけて」

 ドレスに相応しくない帯剣した姉ちゃんがスラリ、と剣を抜く。
 紅花流では実践的な剣術も教えているから、様になっている。

 でもそれを受け取った秋津島公の次の動きに、俺たちは息を呑んだ。

「--------!!!」

 姉ちゃんが秋津島公に刺されたからだ。

 けれど良くみたら、花冠は顔色一つ変えていないし、<四神>の方々にいたっては微笑ましそうに見ているだけ。
 そうでなかったら、俺達は陽花と夕鶴に抑えた口で自分たちを抑えていただろう。
 ついでに俺たちを抑えてくれた山吹女爵の手を振り払って近寄っていたかも知れない。

 見ていると、姉ちゃんの背中から突き出した剣の色が一瞬だけ藤色に染まって、剣ごと姉ちゃんの身体に消えてしまう。


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