ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
茜伯爵の即位式 01
 肩を出した、美夜と陽花いわく茜色の「お姫様ドレス」は裾が長いもので、踏んづけたらどうしようと迷うくらいの推定3m。
 そして藤色の授を斜めにかけているのは、姉ちゃんが「秋津島公爵のもの」という意味があるらしい。
 勿論、その授にぶら下がっている藤色のメダルの表は藤、裏は茜。

 即位式の基本は、神官の祝福を受ける白をメインに両端は領地の色なのだとか。
 領地を持たない皇都花冠は、全部白ということになる。

 勿論メダルの色は華族で金、花族で銀に表が当代秋津島公の花紋、裏が自分の花紋。
 姉ちゃんは本当に特殊だと、あからさまにわかる仕組みになっている。

 左右の側頭部には翡翠色の茜の小さな花を握りこぶし大のブーケにしたものと真珠を三連にした髪飾りで短い髪をまとめ、首にも真珠をつけている姉ちゃんは、化粧のせいもあるかも知れないけど、とても綺麗だと思った。

 前を向いて、けっして迷いも揺るぎもしない表情で、控え室では慣れないヒールの高さにぐらついていた素振りすら見せずに、ゆっくりゆっくりと秋津島公の前に歩いて行く。
 何百人といる花冠の間を見事なまでに堂々と背筋を伸ばして。

 あまたの花冠に混じって、制服で参加している俺たちは、姉ちゃんの家族として招かれているものだ。
 姉ちゃんのプロフィールはざっと流れているので、皆は制服姿の俺たちがいてもいぶかしむことはない。

 そして、俺の親友の柚月羽鳥の母親である山吹女爵が扇を持って、保護者のように傍にいてくれた。
 一言で言うと、女傑。
 元々は自分で商売をしていたのだが、目覚しい功績を立てたことで叙爵された身だ。
 そういう花冠は、基本的に<四神>の色ではない色を纏うことが多いらしい。
 ちなみに花冠になってもすることは変わらないわ、と未だに社長業と兼任しているらしい…土地を持たない皇都花冠だからできる技だ。

「ごめんなさいね、本当なら君たちはもっと近くにいてもいいんだけど、私はこのポジションだから。かと言って、あまり知らない華族のところも落ち着かないでしょう?」
「いえ、お気遣いなく。女爵がいて下さるだけでも心強いです。俺たち、本当に作法も知らないし…俺たちが失敗すると、姉ちゃんに迷惑かかるから」

 気を使ってくれる羽鳥のお母さんに申し訳なくて、慌てて首を横に振ると、ふふふと笑われる。

「茜伯爵、か。「剣の色は茜色」と言われる公の剣にして、公の唯一の部下と言われる方がまさか息子の友人の姉だとは、世界って狭いわねぇ」

 確かに。ついでに親友の母親が花冠ってのもレアケースだと思う。

「見て、茜伯を迎えるために公爵殿下が玉座からお立ちになるわ」

 これ以上はないほど優雅に玉座から降りた秋津島公が、ドレスの裾をつまんで深く礼をした姉ちゃんに近寄って声をかける。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。