ドッペルゲンガー
ドッペルゲンガー。それは、自分と全く同じ姿をした分身がこの世に現れてしまう現象。
――もう一人の自分を見てしまった人間は、“死ぬ”。……有名な話だ。
俺は数ヶ月前から、その現象の予兆を感じていた。「もう一人の自分が、自分の周りで行動している」と。
俺は、“俺”と“もう一人の俺”がすれ違う場面を見たという友人Gに、それを相談した。すると――
「俺の知り合いに、“呪い”だとか“悪霊払い”に詳しいIって奴がいる。アマチュアなんだが、格安でそういった問題を請け負ってくれる。……ソイツに相談してみるか?」
――と、霊能者の存在を教えてくれてた。俺は藁にもすがりたい気持ちで「頼む」とGに全てを任せ、事が済むまで部屋にこもることにした。
――三日後。Gから連絡があった。なんでも、もう“もう一人の自分”をこの世から消す作業が終わったので、家から出ても大丈夫だと言うのだ。
俺は早速、Gに会いに行った。――家を出ると晴天が俺を迎えてくれて、清々しい気持ちになった。――そしてGに会うと、一度そのIという男にあって礼が言いたい、と俺は言った。Gは「たぶんIは今、疲れて眠ってると思うけど……」と言いながらも、Iが住んでいる場所まで案内してくれることになった。
「Iにお前の顔写真を渡してな。したら、すぐに大学構内で見つけたらしい。“もう一人のお前”をな。……それから、すぐに作業にとりかかってたよ。まぁ、俺は見せてもらえなかったけど……。強力な、“呪い”をかけたらしい。料金は後払いでいいってよ」
Iの家に着くまでに、そんな話を聞いた。
小さな古いアパートに着く。一階、一番手前の部屋。Gがインターホンを鳴らす。……出てこない。
Gが、ドアをバンバン叩く。――すると。
中から眠そうな顔をした、若い男が出てきた。
「今回の依頼主さ」
そう言って、Gは俺を紹介した。
「あぁ、どうも……」
Iはそう言って、俺を見る。
「ッ!」
……Iの顔が、みるみる内に青ざめていった。しまいには小さく震えだし、玄関の扉を、
――バタンッ‼︎
と、勢い良く閉めてしまった。
「こっ、今回は、お代はいらないっ!」
中から、そんな声が聞こえてくる。
「おいっ! I! どういうことだよっ!」
Gが、ドアをバンバン叩く。
すると中から、か細い声が聞こえてきた。
「……間違えた……間違えた……」
「……? 何を間違えたってんだ!」
Gが叫んだ。
「消す方を……間違えた……」
――。
Iの、泣きそうな声が聞こえた。
……Gは、何も言わずに俺を見た。
――。
じゃあ……俺は、誰なんだ?