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悪魔で、魔王です。
 *

「な〜にしてるのかな、かな?」

 にっこり。ソイツは“笑った”。
 前髪で目元はよく見えないが、口は、最っっ高につり上がってるのがわかる。

 嗚呼、と
 私は、水無月 茜は思った。

 さっき誰かに似ていると思ったあの顔は、コイツに似ていたんだ。

 あの、
 “悦楽にひたった”顔。

 魔王―――


「……ねぇ?」

 蛇のようにねっちりとした声。
 そして、ペロリと、“彼”は唇を舐めた。

 言外に非難の色を込めたその声音に少しゾッとする。

 この得体の知れなさは想像以上かも……。
 その印象を一変させたナガルに、あの3人は戸惑いを……、いやあれは恐怖――?
 を、感じているようにも見えた。
「……お前には関係ないだろ」

 ぽつりと、絞り出すようにケバAが声を発した。
 それによって若干(本当にほんの少しだが)場の緊張が切れる。

 ……普通に息が出来るくらいに、だが。

「関係?あるでしょう。ボクは彼女のトモダチですし」

 ニヤリ、また笑う。
 嫌な笑顔だ、と私ですら思った。
 まるで人を挑発しているような、それでいて侮れない“怖さ”を秘めている……要するに“気味の悪い”笑みなのだ。

「水無月さん」

「………えっ、はいっ!?」

 ここで名前を呼ばれるとは思ってなかったからびっくりした。

「君は……昨日言ったことちゃんと覚えてるのかな?」

 ビクッ!!??
 あ……、あれ?怒ってる?

「えー、あーその…ちょっと考え事があって教室に残ってたらちょっと……」

 嘘ではない弁明だが、ナガルの笑顔が怖すぎてどうしてもしりすぼみな返事になってしまう。

 うう…ごめんなさい。
 謝るから…、だからもうちょっと黒オーラの放出を抑えて!

「まあ、いいけど」

 いいのかよっ!
 ツッコミそうになったが口には出さない。だって、怖いんだもん。
 そんな風に内心はビクビクだったけど、ナガルはあまり頓着してない様子だ。
 ちょこっと顎に手をあてて、考えるそぶりを見せたナガルだったが、すぐにまたこっちに向き直って口を開いてきた。
 それも凄い早口で…。

「それにしても無用心だよね。いくら僕があれだけわざとドジをやったところで水無月さんが狙われてるのには変わりがないのに。嫌がらせは受け慣れてるんじゃないの?それなのにグダクダと教室に残ってノコノコとトラブルに巻き込まれるなんてマゾですか?どこぞの禁書の上条さんですか?その幻想をぶち殺しましょうか?」

 最後のほうは意味がよくわからなかったけど、無表情+息継ぎなしで捲し立てられれば誰だって怖いのは当たり前だよね?

「ご……ごめんなさい」

 柄にもなく泣きそうになって、少しうつむく。その頭にポン、と手が乗った。

「そういうこと、気をつけるように」


 あ……優しい顔だ。何なのだ、やっぱり。コイツの本質は何処にあるのだろう?

「お前ら…何なの?」
「無視してんじゃねえよ!」
「アタシら空気、みたいな?」

 3人衆が水を差すように悪態をついてきた。せっかくナガルが頭を撫でてくれてたのに………あれ?

「な、なんで私の頭を撫でてるのよ!」

「え?ここってそういう流れじゃない?」

「だからって……」

「嫌だった?」


 う……目に見えてシューン、とされるとちょっと良心が痛むかも…。

「嫌、ではないけど……」

 ああもう、顔が赤くなるのが止められない。
 それをニヤニヤしながら見てくるナガルにスッゴく腹が立つんだけど。

「だー!!こんなことしてる状況じゃないのに!」

 そうなのだ。この状況、どう考えてもまだこっちが不利なのに。
 それなのにどうして“彼”は……笑っていられるの?

「確かにそうだね。じゃ、『決着』つけてあげようか?」

「…………え?」

 彼のその笑顔は一層深くなって。
 ナガルは舞台役者のような芝居がかった振る舞いで“黒衣”をひるがえす。
 その黒い布は明るい教室の窓を覆うようにバサッと広がり、漆黒の魔王の訪れをその場の人間達に鮮烈に印象づけた。

「あ……」

 なんて、なんて気障きざったらしいのだろう。
 それでいて……なんでこんなに似合うの?




「……こっちの世界だと決めが成功したな……」

 なんかボソボソ言っているのは別として。というかこっちの世界ってなに?

「いやいや、携帯投稿版モバゲーだと無能っぷりをさらしてしまってるから深く考えなくてもいいんだよ~」

「???、なんなのよもう……」


 疲れたツッコミをした後に私は思う。コイツ、バカなんじゃないか?
 ……しかしまぁ、そのバカのおかげで焼けつくような緊張感(ストレス)から解放されたのだけど。

 もしかして……、いや…流石にないよね…?

 チラッと顔を見ると、今度はちゃんとした顔に戻っていた。


 ……わかんないや。コレは。
 結構人の心情は推し測れられる人間だと自分では思ってたけどもう駄目だ。
 コイツはわからん。もうサジをなげよう。

「じゃ、気を取り直してもう一度いっちゃいましょうか」

 そんな私の内心のバカ認定も知らず、ナガルは再び仕切り直す。

「君らってさ、海が好き?山が好き?」

 よく分からない質問によって。

「………は?」
「何言ってんのコイツ」
「……急に何?」

 ふてぶてしい態度は超一級の3人衆。私なら3人揃っている状態のアイツらに近づくのも無理だけど……。
 ナガルに物怖じ、というものはあるのだろうか。


「いいからいいから。答えてよ」

 そううながすと、

「……海」「山」「海だろ」

 あれ?ふてぶてしいけど、ちゃんと答えてくれた。何故?あんなに素直なの?これも魔王の魔力?
 それに満足したかのようにナガルはさらに弾んだ声で告げた。

「ふぅん……まぁ、あそこにはどっちもあるし。決定だね!」

 彼女らの、終結フィナーレの宣告を。


「福島」

 は?
「は?」「あ?」「はぁ?」

 ふく…しま?

「鈍いね。キミラの留置場てんこうさきだよ。Do you understand?」
黒執事アニメ二期おめでとうございます的なタイトルです。それ以外に特に他意はありません。


来週からテストなのに何してるんだろうと切に思う今日この頃。


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