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自衛官の政治的活動

 巷では今、沖縄防衛局長が講話の中で政治的な活動をしたのではないかと話題になっている。そこで「語られることのない世界」に掲載していた「自衛官の政治的活動」を抜き出して微修正した上で再掲載する。

「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」

 自衛官なら誰もが入隊時に読み上げる宣誓文だ。

 では、この「政治的活動に関与せず」という宣誓によって、実際の自衛官の政治的活動はどのように制限されているのだろうか?

 投票以外の政治的活動は一切認められない、という解釈が長く使われてきた。ただ、その後、各方面からの指摘を受け、個人として政治家の後援会に加入したり、年会費を納めるところまでは問題がないと解釈がやや緩められた。

 自衛隊では自衛官に許される数少ない政治的活動である投票を重視している。したがって、投票には国政、地方選問わず絶対に行くように隊員を指導している。これは、単に指導するだけではなく、勤務や演習などで当日に投票にいけない隊員は、実際に誰と誰なのかまで把握し、その隊員たちに対して期日前投票を済ませておくように直接該当者全員に指導する。しかも、これで終わりではない。投票日の翌日には、ちゃんと投票したのかどうか全員に確認するのだ。自衛官の投票率が一般で言われている投票率よりはるかに高くなるのは言うまでもないだろう。もちろん、「誰に」なんて話は最初から最後までタブーだ。それに触れることは間違いなく、政治的活動に該当すると解釈されているからだ。ちなみにここだけの内緒の話だが、私は現役時代に比例区に共産党と書いたこともある。

 私は、第一線部隊において政治的活動に関する教育資料を作った経験ある。第一線部隊で隊員に教育するときは、100名ほどの隊員に対して一度に教育しなければならない。それも、18才から50過ぎまでと被教育者のレベルもばらばらだ。このため、教育内容は一切の疑義が生じないように簡潔明瞭であることが絶対条件である。

 選挙が近づくと、上級部隊から政治的活動に関する具体的な事例を示したA4版の1cm近い分厚い資料が配布される。しかし、これを1ページ目から順番に全部だらだらと読んだのでは、隊員みんな右から左になってしまう。(あなたが隊員でもそうでしょ?)したがって、第一線の部隊において隊員に教育するときは、まず「投票以外は一切認められない」と教えるのだ。これなら、簡潔明瞭だ。それに上級部隊が配布した資料から日常生活で実際に隊員が遭遇しそうなものを3つか4つぐらい抜粋して簡単なQ&Aをやるのだ。ここで、実際に私が作ったQ&Aを紹介しよう。



Q:通勤途中で候補者が選挙カーの中から手を振ってきた。あなたはどうする?

A:無視しろ!(もし、手を振り返したら、部外者から制服を着た自衛官が特定の候補者を支持している行動をしたと受け取られる可能性があるからだ。間違っても「がんばれー!」と声を掛けてはいけない。)


Q:休日に駅の近くで署名活動をしている団体がいた。あなたはどうする?

A:無視しろ!(どんな内容であろうとも絶対に署名はするな。たとえ、拉致問題ように心情的に応援したいと感じてもだ。なぜなら、どこからどこまでが政治的活動なのか、その範疇がきわめて曖昧だからだ。)


Q:近所の人たちとの飲み会の席に、突然町長選の候補者が現れて喋り始めた。あなたはどうする?

A:「用事があるので失礼します。」と言って退席しろ!


Q:休日に街に出掛けたら、偶然何かの集会を見かけた。あなたはどうする?

A:絶対に近寄るな!回り道をしてでも避けろ!


 このように、第一線部隊の隊員には非常に厳しく、かつ簡潔明瞭に教育している。

「投票に行け!」

 これを隊員に徹底することは、憲法が保障する選挙権を確実に行使するよう隊員に促しているだけである。したがって、政治的活動には該当しない。しかし、「誰に」の部分に触れることは絶対に許されない。

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